「胃がんの原因の95%はピロリ菌」の勘違い

■「95%」という言葉を鵜呑みにしてはいけない

 いつの頃からか、「胃がんの原因の95%はピロリ菌」(99%という意見もある)という言葉が独り歩きを始め、現在では、その言葉を本気で信じている人が存在するようになった。
 正しくは「胃がん発症者の95%はピロリ菌保持者」なのだが、この言葉がいつの間にか「胃がんの原因の95%はピロリ菌」となってしまったようだ。
 しかし、どちらにしても「95%」などという数字を安易に使用するのは考えものだと思う。この「95%」という言葉は非常に紛らわしく、悪意は無いとしても真実を隠しているという意味では、トリッキーな言葉とも言える。そのトリックは、よく考えれば誰にでも解けるはずなのだが、専門家や有名人の言うことはいつも正しいと信じて疑わない人は、その間違いに気が付かないのかもしれない。そういう意味では、非常に罪深い言葉だとも言える。

 今回は、この「95%」という数字の意味をシンプルに考えてみようと思う。

 まず始めに認識しておかなければいけないことは、現代の日本人の35%はピロリ菌に感染しており、50歳以上の高齢者に至っては50%近くがピロリ菌持ちだとされていることだ。しかし、多くの人はピロリ菌の除去もせずに健康に過ごしている。
 ここまで高い確率だと「感染」と言うよりも、人間と共存している「常在菌」に近いと言えるのかもしれないが、ここではそのことには敢えて触れない。

■「胃がん発症者の50%はピロリ菌保持者」と聞けば?

 胃がんを発症する人もまた、大部分は50歳以上だと思われるので、もし、胃がんを発症した人の胃を全員検査すれば、必然的に50%はピロリ菌がいることになる。

 もし、「胃がん発症者の50%はピロリ菌保持者」と聞けば、あなたはどう思うだろうか?

 多くの人は「高い確率だな…」と思うだろう。

 しかし、元々、ピロリ菌持ちが50%もいるのだから、デフォルト値は50%であり、これは検査するまでもなく決定している数字である。

 デフォルト値が50%なので、95%という数字は確かに低くない数字であり、ピロリ菌と胃がんの因果関係が有ることは否定できない。しかし、「胃がんの原因の95%はピロリ菌」というのは端から胃がんの原因はピロリ菌のみという前提で組み立てられており誤解を招く恐れがある。

 2015年度の胃がんの罹患数は98万人(死亡数は37万人)となっている。年齢別の詳細は分からないので、凡その判断しかできないが、高齢者が多いことを考慮すれば、50万人以上は元々、ピロリ菌を持っている。重要なのは、その50万人のうちにピロリ菌が原因で胃がんになった人が何%いるのか?ということだが、これが全く無視されている(と言うより判らない)。参考までに書いておくと、「ピロリ菌が原因の胃がんは20%未満」と言っている専門家もいる。

 罹患数98万人の95%がピロリ菌保持者なのであれば、98万人×0.95=93.1万人となるので、93万人はピロリ菌持ちだったことになる。しかし、そのうちの50万人以上は元々ピロリ菌持ちだということを考慮すれば、「胃がんの原因の95%はピロリ菌」というのは乱暴な意見と言わざるを得ない。

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