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格差問題の本質は階級社会

 ここ数年、新聞、テレビなどで「格差」という言葉をよく目にするようになった。
 政治の世界でも、格差というものが取り沙汰され、大きな問題になっている。
 この格差というものは何を表しているのかと言えば、まず国民の収入の格差が大きくなっているということらしい。
 日本は世界の中でも最も格差のない国とも言われてきたが、このところ、パートや派遣社員、フリーターなどの職種が増加していることで、“格差のない国”という常識が崩れかかっている。今までの常識から考えれば、確かにこれは問題かもしれないが、本当に憂慮しなければならない問題は別のところにあると思われる。

 給料の差というものは昔から存在する。会社の経営者と従業員では収入に数倍の差があるのはザラだし、能力のある優秀な人物なら高給な場合は多々ある。
 しかしその程度の差なら大した問題とは思えない。海外では企業の経営者と従業員では数百倍以上の収入格差があるわけだし、従業員の中でも日本以上に収入格差があることはよく知られていることだ。
 海外から観れば、現在でもまだ収入格差の少ない日本が、その海外よりも大きな問題を抱えていることがあるとすれば、それは収入の格差ではなく、収入の格差の固定、つまり、現状の格差を挽回できるチャンスが極めて少ないという機会の不平等問題だと言える。
 同じ仕事をしている人間が、その立場が違うという理由だけで収入格差が開いてしまうという不公平な社会(=固定された階級社会)にこそ問題があると思われる。

 例えば、非常に能力のある人にしかできない仕事をしている人が高給で、平凡な仕事をしている人が高給ではないというなら、格差が開いてもそれは仕方がない。しかし、同じ仕事をしているのに評価が絶対的に異なるというのは問題だ。
 具体的に言えば、正社員よりも優秀でよく働く派遣社員がいたとしても、その派遣社員が正社員よりも高給になることは有り得ないとする固定された階級格差が問題なのである。

 1時間に100の仕事をする人と、50の仕事しかできない人がいたとしよう。100の仕事をした人は50の仕事をした人よりも2倍の収入を得ていたとしても、それは格差とは言えない。それは能力の差としての評価であって、格差ではない。ところが、現在の日本では、いくら能力があっても、それを正当に評価されない人達がいる。評価されない人がいることも問題には違いないが、それ以上に“評価されない人はいつまでもそのまんま”という閉鎖された階級社会に問題があるのだ。(公務員とサラリーマンの関係も実はこれに近いと言えるかもしれない。)

 政府が「格差を是正しなければならない」と言うのなら、真っ先に行うべきことは、収入の格差を小さくすることではなくて、階級の格差を無くすことだ。それをまず考えなければ何の解決にもならない。
 例えば、IT長者と一般サラリーマンでは大きな収入格差があるかもしれない。しかし、そんなものを是正しても意味がない。その一般サラリーマンがIT長者になれる可能性が開けているのなら、それでいいのだ。問題は、能力のある者が学歴や職歴などの関係で、本来の立場に登れなくなってしまっている悪平等社会(縁故社会)にあるのだ。 

 平等というものには“機会の平等”と“結果の平等”というものがあるが、今の政府が行おうとしている格差是正は後者の“結果の平等”になってしまっている。これは大きな誤解で、本当に行わなければならないのは、前者の“機会の平等”だ。
 “機会の平等”と“結果の平等”が両方成立することは有り得ない。
 “機会の平等”を認めるということは、=結果の不平等を認めることになる。つまり格差を認めるということを意味する。それは、努力した人間がそれにふさわしい対価を得ることは当然とする考え方だ。
 逆に格差を認めない社会とは、機会の平等を認めない社会だと言うこともできる。それが現代の日本社会が陥っているジレンマ状態だ。“結果の平等”を認めようとしないだけでなく“機会の平等”も認めていないという支離滅裂な社会体制が問題なのだ。よって、格差が大きな問題なのではない、階級の固定、すなわち、機会の不平等こそが是正すべき大きな問題なのだ。

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