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「デフレ脱却」というお題目

 テレビや週刊誌、果ては一般庶民の間で今もなお毎日のように唱えられているお題目がある。それは「デフレ脱却」というお題目だ。
 ニュースキャスターや経済評論家は、なんの疑いもなく「デフレ脱却に向けて」とか「デフレ脱却はいつか?」とか宣っているが、これにはある疑問を抱かざるを得ない。その疑問とは「デフレ脱却すれば景気が良くなるのか?」という疑問だ。

 宗教の世界にもお題目というものがあると思うが、大事なのはお題目を唱えることではなく、お題目の中身(意味)を考えることだ。デフレ脱却もそれと同じように、言葉ではなく、中身を考える必要があると思われる。

 では「デフレ脱却」とは何を意味しているのか?

 デフレとは経済用語でデフレーションのことであり、インフレ(ーション)の逆の現象を意味する。

 デフレとは、“物の価値が下がり続ける”ことを意味し、
 インフレとは、“物の価値が上がり続ける”ことを意味する。

 上記のことを踏まえると、「デフレ脱却」というのは(ストレートに受け取れば)“物の価値が下げ止まれば良い”というような解釈になってしまう。
 しかし、これは本当か?

 確かに日本経済は、バブル期まで物(土地)の価値が上がり続けるというインフレ経済だった。そしてバブルが崩壊した後、土地の価値は下がり続けた。この現象をもって多くの人々は「デフレ」と称した。まるでバブルが崩壊したことがデフレになった直接の原因であるかのように。土地の値段が右肩上がりから右肩下がりに転じたことをもって「デフレ」だと認識してしまった。そして物の値段が再び上がり出せば、「デフレ脱却」だと声高に叫ぶようになった。

 バブルの崩壊は、異常に上がり過ぎた地価が膨張して破裂したという現象であって、その現象がデフレの始まりだと解釈するのは無理がある。なぜならデフレは日本だけで起こっている現象ではないからだ。今や世界的なデフレであることを否定する人間はいないだろう。ではなぜ、世界中でデフレが発生したのか?
 答えはベルリンの壁の崩壊であり、世界経済がグルーバル化したためだ。それまでの東側諸国や共産圏の国々の安価な労働力が鉄のカーテンから解放されて、津波のように西側諸国に押し寄せた。限りなく物価の低い国の商品が、物価の高い国に流れてくるとどうなるか? 答えは簡単だ。物価の高い国の商品は安くならざるを得ないということだ。
 それがデフレの正体であって、これを食い止めるのは日本国内の諸政策とはほとんど無関係だということが解る。そして「デフレ脱却」というお題目を唱えることも無意味だということにも気付かされる。つまり日本では、ベルリンの壁の崩壊とバブルの崩壊が同じ時期に起こったために、大きな誤解をしてしまったのだ。『デフレ=不況』という誤解を。

 世界的なデフレ脱却などは、世界的な戦争でも起こらない限り、当分の間、起こり得ない。その当分の間とは、世界の労働力(労働賃金)が平準化されるまでということになる。
 肝心なことは、「デフレ脱却」と唱えることではなくて、デフレの意味を考えることだ。意味なく「デフレ脱却」などと何万回唱えたところで景気は回復しない。意味を考えてどうすれば良いのかを考えてこそ、不況からの脱却の可能性が出てくるのだ。

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