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BOOK『内側から見た富士通「成果主義」の崩壊』

 2004年に出版された光文社ペーパーバックス『内側から見た富士通「成果主義」の崩壊』を今更ながら購入し、読んでみた。
 タイトルから考えて、少し前までは、単なる成果主義の批判本かと思っていたのだが、実はそうではなかったようだ。タイトルに騙された(?)とはまさにこのことをいうのだろうが、良い意味で期待を裏切られてしまった。
 この本には、「成果主義」の崩壊というサブタイトルが付けられてはいるが、正確に言うなら、『中途半端な成果主義の崩壊』か『日本型成果主義の崩壊』と付けた方がピッタリとくる。より具体的に言えば、『年功序列制度の弊害による成果主義の崩壊』という長題が相応しいかもしれない。つまり、この本は成果主義について述べたものではなく、年功序列社会に対する強烈な批判本だったわけである。
 成果主義という手段を取り入れることによって、歪んだ年功序列制度が浮き彫りになってしまったという格好のケーススタディー(事例研究法)となっている。

 日本の最先端を歩いていた巨大企業の秘められた実態と業績低迷の謎。その真相を赤裸々に述べた本書は、単なる一企業の暴露本という趣きを超えて、実は日本社会の構図そのものを露呈する書物に仕上がっている。著者の実体験を踏まえた上での、あからさまな考察は実に興味深いものだった。

 最も面白く目を引いたのは、著者も在籍していたという人事部の存在だが、富士通という会社を日本に置き換えてみると、現代の日本社会の実情が垣間見えるような気がした。
 さて、富士通の人事部というものは、日本株式会社の中では、どこに該当するのか? 言うまでもなく、日本全体の人事を統括している組織だ。中でも「本社人事部」というのが酷かったらしいが、これも「霞ヶ関人事部」と置き替えると面白い。本の中には、「人事天国」、「人事独裁体制」、「ゲシュタポ人事部」、「生え抜きのエリート集団」など、どこかで聞いたような皮肉めいた言葉が並ぶ。

 著者はこのように言う。「現場を知らない人間の集団が、叩き込まれた制度や規則だけを基に、常に人を上から見下ろして物事を決定するため、現場とのギャップに気付かない。彼らの仕事の相手は、顧客でもなく市場でもなく、社内の従業員達なのである」と。これもまさに、日本社会の腐敗した構図そのものをズバリ言い表わしているような気がする。

 負けているのに負けを認めないというエリート集団独特のプライドから発生する無責任体制、それが富士通という巨大企業を蝕んでいった1つの原因であるのなら、現代の日本社会を蝕んでいるものの正体も朧げながらに見えてくる。

 つい先日のニュースでも、大きな不祥事を起こした社会保険庁の職員(一部)の職務評価がA評価だったということで騒がれていた。確かに社会保険庁にも優秀な職員もいるとは思うが、あれだけ大きな問題を起こした組織であるのなら、通常は連帯責任の適用が当然であり、職務評価は全員C(A〜Cの3段階評価として)とするのが妥当なところだろう。
 もし許される例外があるとすれば、今回の納付者不明問題を告発した職員か、不明問題解決の陣頭指揮に当たり、大きな成果を上げた職員ぐらいのものだろう。もっとも、そんな職員がもし存在していたなら、逆にC評価となってしまうかもしれないが…。(評価するのは国民ではなく、上司であるため)
社会保険庁職員の仕事相手も結局のところ、顧客でもなく市場でもなかったのかもしれない。国民という顧客からの信用が失墜したことも気が付かず、もはや自らが必要とされていないという市場の声にも耳を傾けようともしない。そしてほとんど反省の色も見えない。あるのは、かつての富士通と同様、年功序列という縦割り社会(=ムラ社会)の中での己の地位や評価のみ。

 一時、大企業の官僚化という問題が取り沙汰されたことがあるが、富士通が成果主義を取り入れることによって映し出されたものとは、実は、大企業の官僚化問題であったとも言える。これは富士通だけの問題ではないだけに、更に由々しき問題かもしれない。



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