« 映画『バブルへGO!!』とバブル崩壊の論理 | トップページ | 『内部告発』というシンクロニシティ »

株式等譲渡益課税10%維持のススメ

 上場企業が他の企業と違うところ(メリット)は、経営資金を銀行からではなく市場から直接調達できるところにある。中小企業を中心とした未上場企業であれば、銀行から資金を調達しなければならないが、上場企業の場合、銀行を介さずに直接、投資家から資金を調達することができる。これを直接金融と言う。

 企業が設備投資または先行投資を行なうためには、莫大な資金が必要になる時がある。その時に、資金を調達できなければ、せっかくのビジネスチャンスを失うことにもなりかねない。そういう意味では、株式投資というものは、実は国益に適ったものであるということができる。例えば、任天堂などの企業が新製品を開発するのに莫大な資金が必要になった場合、投資家が任天堂の株式を購入することによって、任天堂は投資する資金が調達することができるようになる。そして任天堂がその投資によって事業に成功すれば、今度は莫大な利益を生み出すことになり、投資家はその見返りとして大きなリターンを得ることになる。
 こういう善なる好循環をもたらすことは一国の経済にとって非常に重要なことだと言える。そして重要であるがゆえに、市場は透明でなければならない。投資家が安心して企業に投資できる環境を整えることこそが、国家を運営する役人達の本来の仕事であるとも言える。

 以上のことを踏まえた上で、証券税制改正案のことを考えてみよう。

 現在は、平成15年からの5年間の特例措置によって、株式等譲渡益課税は10%となっているが、これを5年後である平成20年に、もう一度20%に戻すべきかどうかという問題が取り沙汰されている。(詳細は以下の通り)

 平成15年〜平成19年 10%(所得税 7% 住民税3%)
 平成20年以降     20%(所得税15% 住民税5%)

 株式等譲渡益課税を10%から20%に引き上げることは正しいか?
 これは意見の分かれるところだろう。なんせ日本は諸外国と違って、株式投資を行っている人が極めて少ない(全国民の10%程度しかいない)。「株式投資は私には関係がありません」という人が大多数を占めているので、単純に20%に上げた方がいいと思っている人が多いかもしれない。
 しかし、私はこの意見には反対だ。無論、株式投資を行っているという金銭的な理由からではなく、日本経済の未来に対する危惧からである。

 先にも述べたが、現代は、銀行から資金を調達するような間接金融の時代ではない。
 銀行自体にそれほどの体力がない(=利子が付かない)のだから、仕方がない。
 バブル崩壊によって、銀行は巨大な不良債権を抱えてしまい、信用も失墜した。
 そんな信用のできない銀行に巨額の資金を預ける人間は、(実際はどうかはともかく)減少していかざるを得ない。もとより、ペイオフ解禁で特定の銀行に1000万円以上の預金をする人がいなくなっているのだから、それは当然の帰結だ。
となると、企業は銀行からではなく、直接、国民から資金を提供してもらう環境を整えることこそが、企業経営を行っていく上で最も重要なことになる。
企業が利益を上げて税金を納めてこそ、国の税収はアップし国民の生活水準は上がる。その目的達成のためには、国も企業に協力しなければならない。
 “企業から税金を搾取すればいい”というテイクオンリーな発想以前にまず、“企業が税金を納めることができる環境を整える”というギブアンドテイクな発想が重要だ。
 税率を20%に上げて、儲けている連中から税金を絞り取ればよいとするようなステレオタイプな発想では、21世紀は渡っていけない。
 このことは、「株式投資は私には関係がありません」と言っている人にも当てはまる。株式投資は1個人の財布の中身には関係がないと思っていても、一国の経済に大きく関係してくる。つまり、巡り巡って、その1個人の財布の中身に影響を及ぼすことになるのだ。
 こういう株式投資に批判的な人々は“投資”を単なる“投機”と勘違いしているとも言える。なるほど、確かに株式投資にはマネーゲーム的な側面はある。そして銀行の預貯金と違って、大きなリスクも介在する。しかし、それは物事の一面を見ているだけに過ぎない。

 企業は多くの資金が集まれば集まる程、その責任の範疇において、大きな設備投資が行えるようになる。実はここに経済を発展させる要因がある。一言で言えば、お金が動くということだ。現在の日本経済は、世界一のお金持ち国家であるにも関わらず、景況感が感じられないのは、お金が動いていないことに起因している。流動資産である現金が、不動産のように固まってしまっている。その多くは、利子も付かない銀行の金庫やタンスの中に半ば眠った形で保存されている。そのお金が動くこと、つまり投資に向かうことが重要なのだ。(喩えて言えば、それは滞っていた血液が心臓に向かって動き出すことを意味する)

 日本経済の先行きを考えると、株式等譲渡益課税は、現在の10%のままに維持することが望ましい。政府には、得をして損をするのではなく、損をして得を取るというマクロ的かつ長期的な視点、つまり投機ではなく投資の視点が必要だ。ゆめゆめ、嫉妬にかられたような対処をしないことを願う。

|

« 映画『バブルへGO!!』とバブル崩壊の論理 | トップページ | 『内部告発』というシンクロニシティ »

「経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/199859/16815327

この記事へのトラックバック一覧です: 株式等譲渡益課税10%維持のススメ:

» いろいろな悩みも [毎日数分で誰でもできるデイトレード【資産運用】]
「資産運用」のサイトを作成しましたのでトラックバックさせて頂きました。もし不要な場合はお手数ですが削除して下さい。 [続きを読む]

受信: 2007年10月21日 (日) 11時19分

» Wii『オプーナ』 [任天堂で遊びましょ!!WIIとDSで!]
『ドラゴンクエスト』シリーズを手がけてきた『アルテピアッツァ』と『コーエー』の 最強タッグがお届けするWii初の本格RPGです。ネットで一番安いところを紹介しています!今すぐこちらへアクセスを!! [続きを読む]

受信: 2007年10月21日 (日) 11時52分

« 映画『バブルへGO!!』とバブル崩壊の論理 | トップページ | 『内部告発』というシンクロニシティ »