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食品加工会社のジレンマ(減価償却と廃棄焼却)

 ここ数年で、自動車を始め電化製品などの消費財が『受注生産』という形に徐々に変化してきていることは、一般消費者なら誰もが気が付いていると思う。
 受注生産方式が一般化される一昔前までは、大量生産方式が採用され、商品を注文前(需要が発生する前)に大量に生産し、メーカーは多くの在庫商品を抱えているというのが当たり前の状態だった。しかし、昨今のパソコンを見ればよく分かるように、商品の日進月歩が激しく、余分な在庫などを抱えていると減価償却できずに赤字になってしまうという時代になってしまった。

 パソコンのように半年に1回モデルチェンジを行っていれば、売れ残った商品の在庫がアッという間に山積みとなってしまう。しかもその時点で如何に高性能なパソコンであろうとも、数年経てば例外なく陳腐化してしまい、二足三文の価値しか持たなくなってしまう。そんな時代であれば、いかに時代に疎い経営者であっても、在庫などを抱えている場合ではないことに気が付くだろう。そして実際にそうなっている。

 基本的に、全ての電化製品等は受注生産に切り換えることは可能だろう。携帯電話しかり、音楽プレーヤーしかり、DVDレコーダーしかりだ。しかし、世の中には、いくら在庫するのを嫌がっても受注生産化できないものがある。それは商品としての価値が極めて短期間(有限)であるもの、つまり、食料品である。 無論、例外的な食料品は存在するが、ここでは一般論として述べる。

 食料品は基本的に長期間の在庫はできない。賞味期限内に売ることができなければ、かつての大量生産時代のように、商品を廃棄しなければならなくなる。食料品はパソコンと違って、中古品として販売することもできず、部品を分解して再生産するという芸当もできない。当然のことながら、売れ残った商品の数だけマイナスとなる。売れた商品の利益でマイナス分を補うことができればいいが、薄利多売の商品であれば、大きな赤字になる可能性がある。ここに、最近の賞味期限改竄事件の裏事情を垣間見ることができるかもしれない。

 世間(マスコミ)では、「賞味期限の徹底」を訴えてはいるが、“賞味期限の厳守”とは=“商品の廃棄焼却”を意味する。「賞味期限の切れた商品は速やかに廃棄してください。」というのは、消費者側から見れば当然のことであるのだが、生産者側から見れば、場合によっては死活問題に関わってくる。もっとも、賞味期限の改竄が発覚した時点で別の意味での死活問題を抱えてしまったことになるのだが。

 賞味期限を厳守することが企業の第一目的になってしまえば、問題となった食品加工会社が選択できる道は2つしかない。
 1つは、在庫を極力抱えないように、需要を上回る生産を避けること。(=大幅なリストラ)
 もう1つは、商品の賞味期限を延ばす方向に経営の舵取りをすること。(=新商品の開発)

 そのどちらを選択するにしても、企業として大幅な改革が必要になる。はっきり言ってしまうと、利益追及をひとまず置いておいて、法令遵守に努める方向に傾いてしまうことになる。しかし、これらの食品加工会社にそんな悠長なことを行っている余裕があるのかは疑問の域を出ない。そしてもう1つ見落としてはならないことは、どちらに転ぼうと“商品の値段が上がるかもしれない”ということだ。あるいは、商品自体が市場から消えることになる可能性もある。(=経営不可能=倒産)

 マスコミは「賞味期限の徹底」を訴える前にまず、これらの食品加工会社が賞味期限の改竄を行っていた動機を考える必要があるかもしれない。その理由が、単にお金儲け主義、悪く言えば、欲から出たものであるのか、それとも、そうしなければ、経営が成り立たなくなっていたがゆえに仕方なく行っていたのか。
 前者であるなら、「賞味期限の徹底」を訴えることは正しい選択だろう。しかし、後者であった場合は「賞味期限の徹底」を訴えても、ナンセンスかもしれない。後者である場合はむしろ、経営自体を根本的に変革する必要がある。つまり、「賞味期限の徹底」ではなく「企業改革の徹底」を行わないことには、解決できない問題とも言える。
 時代が進歩したにも関わらず、大量生産時代の方式を採らざるを得ない食品加工会社のジレンマ、そのジレンマを追究しないことにはこの問題の解決策を見い出すことはできないだろう。

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