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“たらい回し事件”の本質とは何か?

 最近、妊婦や救急患者の“たらい回し事件”というものが頻発しており、中には救急車で10件以上の病院をたらい回しにされるという人もいるらしい。もちろん、これは笑い話ではない。実際にたらい回しにされた挙げ句、亡くなった人まで出ているのだから、事態はより深刻だ。患者や家族の身になって考えると、これはまさに恐怖以外の何ものでもないと思える。

 こういった事件が増えてきたことで、病院の医療体制自体を非難する声もあるが、何が問題なのかを少し考えてみよう。
 まず、救急患者をすぐに受け入れることができない理由とは何だろうか?
常識的に考えれば、次のような理由が考えられる。

 1、病室が満杯状態
 2、医者や看護師が不足していて対処できない
 3、医者が余分な仕事に時間を費やしている。または治療の必要のないような
   患者を多く抱え過ぎている

 その病院が人気のある美容院よろしく物凄く評判が良くて、そのせいでいつも満員だというのならともかく、救急車で10数件回った病院すべてが同時期に満員というのはあまりに不自然だ。では病院が嘘をついているのかというと、そうではないだろう。おそらく考えられるべき答えは、「需要が供給を大きく超えてしまっている」ということだろう。つまり、病院も医者も看護師も足りていないのではないか?ということだ。この場合、上記の1と2は現象面における理由となるが、3も全く無関係というわけではないだろう。

 高齢化社会にあっては、当然の如く、病人の数は増える。これには疑いの余地はない。ではなぜ、医者の数が比例して増えないのだろうか? その中でも特に産婦人科医が増えないのはなぜだろうか? 少子化であるがゆえに産婦人科医が減少しているからだろうか? しかし、少子化が理由で産婦人科医が減少しているのであれば、高齢化が理由となって内科医や外科医は増加して然るべきはずだ。しかし、そうはなっていない。つまり、市場原理の法則が機能していないということになる。需要の無い所も需要の有る所も同じように人手が足りていない(供給が追い付いていない)。これはなぜだろうか?

 産婦人科医というのは、時間的にも不規則な勤務となるそうだ。そして死産などの事故が発生してしまうと訴訟事件に発展してしまうというリスクも背負っている。そう考えると、産婦人科医が減少してしまう理由は少子化以外にもあるのかもしれないが、ここでは少し別の角度から問題を掘り下げてみよう。
 産婦人科医が“医療業界の中では比較的、労働条件が悪い”ということが成り立つのであれば、収入はどうなっているのだろうか? 成り手がいないのであれば、収入が高いと思われがちだが、実際はそうではないらしい。
 心理的な面だけでなく、経済的な面でも市場原理が機能していない。なぜか? 答えは到って簡単、それは様々な規制のためである。

 日本では、医者に成れる人数も、医療における収入も医療にかかる費用も厚生労働省の管理下に置かれている。病人が増えようが減ろうが、役人が勝手に医者の人数を規定してしまっているのだから、市場原理など機能するはずもなく、必然的に需要と供給のバランスが崩れてしまうことになる。
 このことについては、経済学者の蔵 研也氏も著書『国家は、いらない』で詳しく述べておられる。
 もう1つ、ついでに述べると、高齢化社会では医者の需要は増加するが、その先にある人口減少社会が訪れれば、医者の需要は減少することになる。その場合は当然、医者が余ってしまうことになるので、医者になる人数は減少して然るべきはずだが、そうはならない。役人の勝手な規制のために、またまた市場原理が機能せず、医者余りが社会問題となってしまう。医者余りはある意味で、医者が足りないことよりも大きな問題となるかもしれない。

 “たらい回し事件”が社会問題となり、成り手のいない産婦人科医を増やしたいのであれば、産婦人科医の収入が上がるようにするべき(=医療費を上げる)だろう。一生に数回の出産費が上がることに不平不満を言う人はそうそういないだろう。そもそも病院をたらい回しにされるぐらいなら、少々、医療費が高くても仕方がないと思うはずだ。しかし、そういった自由な判断(医療費の差別化)が、様々な規制のためにできなくなってしまっているところに問題の根源がある。
 これは医療だけでなく全てについて言えることだが、役人達のいらぬお節介のために、様々な弊害が発生しているということだ。
 “たらい回し事件”が発生する根本的な原因は、病院の体制にあるのではなく、日本の医療制度そのものにあると言える。そしてその制度の根っこに存在しているものこそ、社会主義という悪平等思想だ。つまり、“たらい回し事件”とは、純粋な医療問題ではなく、不純(?)な政治問題なのである。



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