« 参議院選挙は『肉を切らせて骨を断つ作戦』? | トップページ | 資本主義と本棚の関係 »

“飲んだら乗るな”と“寝ていないなら乗るな”

 飲酒運転における罰則は、飲酒運転事故が発生する度にどんどん上がり続け、今や、飲酒運転が100万円、酒気帯び運転ですら50万円という懲罰的(?)な罰金が科されることになっている。
 このため、以前のようにリスクを犯してまで飲酒運転をしようなどという人が激減し、“飲んだら乗るな”というスローガンは半ば強制的に達成された感がある。
 アルコールに酔った身体で車の運転をすることは、喩えて言えば、理性が麻痺した人間に凶器を手渡すようなものでもあるので、これは確かに良いことではある。

 ただ、酒気帯び運転という定義には、かなりいい加減な部分があることは否めない。元々、肉体的にアルコールに強い人と弱い人がいるのは、周知のことではあるが、その個人差には数十倍、あるいは数百倍の違いがある。
 例えば、会社の納会でビールをコップ1杯飲んだとしよう。
 車で通勤している人の場合、このビールを飲むという行為を戒めるべきであることは言うまでもないことだが、ビールを飲むという判断には、善いことか悪いことかという判断以外に、実はもう1つの判断が生じている。それは、ビールをコップ1杯飲んだ場合、自分の肉体にどれだけの影響(=どれだけ酔うか)があるかという判断だ。
 ビールをコップ1杯飲んだ位では全く問題ないという人(以下、A)と、コップ1杯でも酔ってしまうという人(以下、B)では、判断に違いが生じる。ここでの判断は、先の善か悪かという絶対的な判断ではなく、極めて相対的な判断であると言うことができる。つまり、判断する人間によって、その善悪が大きく違ってくるということだ。

 この2人が、このまま車で会社を出たとしよう。Aは全く正気で、普段と全く変わらない。ただ、《警察が取り締まっていないだろうか》という心配だけが心を支配している(つまり、普段よりも慎重な運転になっているとも言える)。
 一方、Bは、千鳥足のような状態でアクセルを踏んでおり、警察が取り締まっていることよりも、《無事に帰宅できるかどうか》ということに心が支配されている。この場合、AとBには、大きな違いが生じている。飲んだアルコールの量は同じでも、危険度においては天と地ほどの開きがある。
 しかし、運悪く警察の飲酒検問に引っ掛かってしまえば、結果は同じとなる。あるいは、事故を起こした場合にも、同じ罰が適用される。その事故の原因が“飲酒したこと”であるかないかは関係がない。“飲酒した”という事実だけが適用され、運転していた人間の肉体的、精神的な影響は無視される。

 しかし、まあこれは仕方がないかもしれない。酒気帯び運転に個人的な差があることは確かだが、だからと言って、いちいち警察がそんなことを調べるのは無理があるだろうし、交通事故を起こした後に、その人がアルコールに強いか弱いかなどを聞き込み調査するという話も聞いたことがない。
 かくして“飲んだら乗るな”は絶対的な法律として適用され、何人もこれに従うしかなくなる。実質的に酔っぱらっているかどうかよりも、飲酒したという行為自体が優先される。それが法治国家の良いところでもあり、また(若干)悪いところでもある。

 一応お断りしておくと、私は別にアルコールに強い人は、酒気帯び運転してもよいと言っているのではない。酔っぱらった状態での飲酒運転には相対的な違いがないとしても、酒気帯び運転には、大きな違いがあるということだけを述べている。酒気帯び運転で事故が発生したのだとしても、それは必ずしも飲酒したことが原因だとは言えない。しかし、結果的には飲酒したことが事故の原因になってしまうという、ある意味で理不尽な事実(タブー?)を述べている。もっと突っ込んで言うと、ここで述べたAとBの場合は、酒気帯び運転というものは無いということ。アルコールの量で考えると、Aの場合もBの場合も、酒気帯びという領域は存在しない。Aは酒気帯びとされるアルコール量では酔わないし、Bは酒気帯びとされるアルコール量だけで酔っぱらってしまう。つまり、Bの場合はこの時点で既に『飲酒運転』という判断が妥当。

 余談だが、酒気帯び運転よりも、危険なものがある。それは、睡眠不足による居眠り運転だ。しかし、これに対しては法律的には全く禁止されていない。私も経験があるが、徹夜明けの運転ほど危険なものはない。それは理性云々の問題ではなく、睡眠という肉体的本能との闘いであるので、より危険であると言える。
 “飲んだら乗るな”が常態化されるのであれば、“寝ていないなら乗るな”も適用されても不思議ではないと思えるが、さすがの警察も(今のところ)そこまでする予定はなさそうだ。居眠り運転事故が多発しないことを祈ろう。

|

« 参議院選挙は『肉を切らせて骨を断つ作戦』? | トップページ | 資本主義と本棚の関係 »

「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/199859/17549859

この記事へのトラックバック一覧です: “飲んだら乗るな”と“寝ていないなら乗るな”:

« 参議院選挙は『肉を切らせて骨を断つ作戦』? | トップページ | 資本主義と本棚の関係 »