« “飲んだら乗るな”と“寝ていないなら乗るな” | トップページ | 少子化は社会変革期のメッセージ »

資本主義と本棚の関係

 本棚には様々なスタイルの物があるが、大抵の場合、数百冊が許容量の限界となっている。もしあなたが読書家であるなら、本棚が1つしかない場合、本棚に収納される本は常にあなたのお気に入りの本で埋められるはずだ。つまり優先順位というものが存在し、自らが判断した高価値本の上位数百冊が常にその本棚を占めることになる。その本棚の本は常に競争を強いられ、日々、優れたものに変化していき、劣った(面白くなかった)ものは、本棚から落伍していくことを余儀なくされる。本棚という限られたスペースにも優勝劣敗の法則が息づいているという喩えだが、これはまさに、資本主義のメカニズムそのものとも言える。

 先述の喩えは、本棚が徐々に進化していくということを意味している。落伍した本には申し訳ないが、本棚に居残るためには常に優秀であることが必要とされることを物語っている。
 この本を人間に置き換えてみると、1つだけ違うところがある。本は一度、落伍すれば二度と本棚に戻ることはできないが、人間には本棚に戻れる(=敗者復活が許される)チャンスがあるということだ。つまり、人間は生まれつき優秀でなくても、常に進化し続けることが可能であるということだ。それが本と人間の決定的な違いであり、人間社会に資本主義が根付くことができた理由でもある。

 ところが、本と人間は同じものだとする思想が、世界中を席巻したことがある。人間自体が恰も本のように進化しない固定された物であるとする思想が蔓延した。それが、よく知られた共産主義という思想であったということができる。全ての本は常に本棚に納まっていなければならないとする思想と言えば解りやすいかもしれない。世の平等主義者達は驚くかもしれないが、実はこの思想こそが差別思想なのである。なぜなら、人間が進歩できない存在と自ら規定してしまっているからだ。

 本棚には収納量に限界があるのだから、その本棚に無理矢理、本をギューギュー詰めに押し込んでしまうと、その本棚自体が壊れてしまう。
 本来、1列分しか入らない本棚に2列分を並べると、後ろの列に並んだ本は見えなくなってしまう。比喩的に言えば、才能があるにも関わらず、前に並んだ本のために、その才能が隠れてしまう。才能の有無に関係なく、全てを同じ扱いにしてしまうと、才能を持った者はやる気をなくしてしまう。そして才能を磨くという人間本来の善なる欲望自体が失われてしまう。ここに共産主義が崩壊した1つの原因がある。それは結局のところ、人間の進化(成長)自体を否定し、逆に人間の堕落を推し進めてしまうという、まさに悪魔的な思想であったと言えるかもしれない。

 「日本は共産主義国家ではなく、資本主義国家なのだから安心だ」と安堵する人がいるかもしれないが、実は現代の日本は純粋な資本主義国家ではない。どちらかと言えば共産主義国家に近いとも言える。「格差は悪だ!」「格差の是正を!」と絶叫している人間の多さがそれを物語っている。そして先程、「人間には本棚に戻れるチャンスがある」と書いたが、この「敗者復活が許される」という考えが世間一般に浸透していないという意味においても、日本は純粋な資本主義国家ではないと言うことができる。皮肉なことだが「格差は悪だ!」という考えが前面に出てくること自体が、日本が純粋な資本主義国家でないことを証明してしまっているのである。

 人間は生まれながらにおいては平等だが、その人間個人の努力によって差が生じることは仕方がない。100メートル走でスタートラインを皆同じにする(=平等)のは、ゴールする瞬間を同じにするためにあるのではない。ゴールする瞬間が違ってくるからこそ、スタートラインを同じにしているはずだ。つまり、平等を重んじるのであれば、ゴールする瞬間の違い(=格差)は許容しなければいけないはずだ。ところが、現代の日本(の小学校など)は、ゴールする瞬間も同じにしなければならないという思想が蔓延っている。こんな教育は人間教育というより、むしろロボット教育と呼んだ方がピッタリとくる。
 現代日本が危惧すべきは、格差の問題ではなく、この誤った思想であると言える。平等という言葉を極端に美化し、その実、悪平等社会を構築することに躍起になっているように見える。まるで人間を堕落させることを目的とした悪魔の如くに…。

|

« “飲んだら乗るな”と“寝ていないなら乗るな” | トップページ | 少子化は社会変革期のメッセージ »

「経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/199859/17566748

この記事へのトラックバック一覧です: 資本主義と本棚の関係:

« “飲んだら乗るな”と“寝ていないなら乗るな” | トップページ | 少子化は社会変革期のメッセージ »