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二兎を追う役人達は一兎も得ず

 マンション建築における耐震偽装問題が取り沙汰されてから早2年が経過した。当時、マンション建築資材の行き過ぎたコスト削減が問題視され、民間の建築業界に対して様々な行政指導が行われた。そのため、様々な建築基準法も改良を余儀無くされ、ただでさえ規制で雁字搦めになったところに、追い討ちをかけるかのように新たな規制が追加された。
 当初、それらの規制の目的は「国民の生活の安全を守るため」というお決まりの名文句が唱えられたが、規制をあまりにも強化し過ぎたために、今度はマンション等を建築しようにもなかなか取りかかることができないという新たな問題が発生し、建築業界には巨大な不況の風が吹くことになってしまった。
 規制を強化したことによって、騙されて耐震偽装マンションを購入する一般人は確かに減少したかもしれない。しかし、建築業界には会社が倒産して、耐震偽造マンションにすらも住めなくなった人がいるかもしれない。
 一部(?)の建築会社の不正のために、全国のまともな建築会社全てが迷惑を被ったとも言えるが、これでは一体なんのための規制なのか分からない。一罰百戒で建築業界全てが不況になってしまっては本末転倒もいいところだ。

 様々な規制を強化することによって、結果的に行政(役人)の仕事だけが増加し、民間の仕事は減少してしまう。金融コンサルタントの木村 剛氏も、これら行政の無意味な規制強化を「コンプライアンス不況」と呼んでいる。
 本来、民間の仕事が増加してこそ、役人の仕事も増加するというのが、まともな社会の姿であると言えるが、現代の日本には、この法則が当て嵌まらなくなっている。これが如何に異常なことであるのかを考えるために、日本を1つの株式会社に喩えてみよう。

 日本株式会社の中に、営業部、総務部、生産部という3つの部門があると考えると、建築業界は当然、生産部に入る。他の様々な民間企業も大抵は生産部に属する。
 では、規制を強化する役人はどこに属するのかと言うと、無論、総務部だ。
 通常、どのような企業であれ、売上と利益を上げることができるのは、営業部と生産部であって、総務部ではない。総務部はどこの企業であっても必要な部門ではあるが、その部署自体が売上を上げるわけでも利益を作り出すわけでもない。総務部というものはどこの会社であっても、必要最小限にとどめているものだ。特に現代のような大競争時代にあっては、否が応にも総務部は縮小を余儀無くされる。このことはバブル崩壊から現在に至る過程で民間企業の人々が実際に体験してきたことでもある。

 もしあなたの会社で、総務部が巨大に膨張し、営業部と生産部に対して、様々な規制を設ければどうなるだろうか? 例えば、仕事上のミスが発生する度に、「報告書を10枚提出してください。それができるまで仕事をしてはいけません。」などという細かい社則を設けてしまうと、営業部と生産部の人間は肝心の仕事に手が付かなくなってしまう。仕事が手に付かなくなれば、当然、売上も利益も減少する。本来であれば、売上、利益が減少して真っ先に困る(=リストラの対象となる)のは総務部であるはずだが、日本株式会社ではどういうわけか総務部だけは一向に困らずに、営業部と生産部だけにしわ寄せが来る。この矛盾した理不尽な姿こそが現在の日本の姿と言える。

 確かに企業も人間も何の規則も設けなければ、最近の食品偽装会社のように悪さばかりが目立つことになるかもしれない。性悪説を前提に考えると、一定の企業倫理基準は設ける必要性はあるだろうし、コンプライアンスの徹底は必要なことでもあるように思える。しかし、あまりにも束縛を強化し過ぎると返って自由が奪われ、人々はやる気を失ってしまう。その結果、経済自体が畏縮してしまう。

 『景気回復・不況脱却』が政府の至上命題であるにも関わらず、この国ではもう一方の天秤に『格差是正・不正脱却』という命題が乗っかっている。政府はどちらかというと、後者を重視しているように見受けられる。
 この国の役人達は「二兎を追う者は一兎も得ず」という諺の通り、やること為すこと全てが裏目に出てしまう。役人達も善かれと思ってやっているのかもしれないが、国民にとっては有り難迷惑になる場合がほとんどだとも言える。
 日本の役人達に必要なことは、規制を強化することではなく、実社会を学習することかもしれない。いくら勉強ができても、暗記力があっても、そんなものは実社会ではほとんど役に立たない無用の長物だということを知るべきかもしれない。

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