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バスガイドさんから見た『改正道路交通法』

 改正道路交通法なるものが、6月1日から新たに施行されることになる。この施行により、高速道路走行中は車の後部座席同乗者のシートベルト着用も義務づけられることになる。(ちなみに違反した場合は、運転手が1点減点される)
 
 今までは前部座席(運転席と助手席)のみのシートベルト着用が義務づけられていたが、今後は後部座席に座った人間もシートベルトを着用しなければならなくなる。
 交通事故を起こした場合のことを考えると、後部座席に座っている人もシートベルトを着用するに越したことはないので、この法案を否定するつもりはないが、この新たな法案の施行によって、またしても有難迷惑を被っている人達がいる。それが、バスの案内役を職業にしているバスガイドさんだ。
 「後部座席の人にまでシートベルトの着用を義務づけるのであれば、立ったまま案内役を務めているバスガイドもシートベルトを着用できる体勢にしなければならない」という融通の利かない意見が出ているためだ。
 
 『運転中、全員のシートベルトの着用を義務づける』ということは、
=『運転中は、誰も立つことができない』ことを意味するので、バスガイドが立ったままでは法律上、矛盾が生じるという理屈らしい。

 しかし、バスガイドがシートベルトを着用して座ったまんまで、バスガイド役を務めることができるのかは大きな疑問だ。お客と同じ方向(つまり前方)を見て案内するバスガイドというのも考えもので、そんな人間味のない案内が常態化してしまえば、バスガイドに成りたいと志望する女性自体が激減、いや、誰もいなくなる可能性すら否定できない。これでは、女性の職業自立を妨げることにも繋がり、失業率も増加してしまう可能性がある。バスガイドがいなくなれば、バスの運転手がバスガイドと二役務めることにもなってしまいかねない。(これもある意味、危険な行為かもしれない)
 昔からバスガイドというのは女性が憧れる華やかな職業の1つでもあるが、安全と引き換えに、その華やかなイメージを破壊してしまってもいいのだろうか?
 
 もう少し掘り下げて考えると、例えば、飛行機に搭乗しているスチュワーデスはどうだろうか? 飛行機が飛行している最中、座席に座ってシートベルトをしているだろうか? 飛行機の場合、車のように停止することはないので、四六時中シートベルトをしなければならなくなる。
 もしシートベルトを着用して四六時中、座席に座ったままのスチュワーデスがいたとすれば、お客はどう思うだろうか? そんなスチュワーデスがいれば、当然、お客に対するサービスもできないので、スチュワーデス自体が不要になってしまう。いくら安全のためとは言え、飛行機にスチュワーデスが居なくなってしまえば本末転倒ではないだろうか?
 
 スチュワーデスもバスガイドもプロの仕事であり、当然、お客よりもリスクを背負っている。飛行機の事故であれ、バスでの事故であれ、お客以上の危険を承知の上でスチュワーデスは飛行機に乗り、バスガイドはバスに乗っているはずだ。
 交通事故が起こった後で、「お客様と同じようにシートベルトをしていれば良かった」と文句を言うようなタイプの人なら初めからバスガイドには成らないだろう。
 要するに、これは職業人としてのプロ意識の問題だ。お客と同じ条件に立つことばかり考えているようなら、それは職業人の態度とは言えない。バスガイドは初めからお客よりも危険であることは暗黙の了解事項であるはずだ。そこに横から「シートベルトの着用を!」などと注意されると、バスガイドは立つ瀬が無くなってしまう。プロ根性を捨ててまで、バスガイドを続けろというのも酷な話だ。
 
 大事なことは、バスガイドがシートベルトをすることによって、お客の安全性は増すのか?ということだ。お客の安全性が増すのであれば、バスガイドのシートベルト着用も一理あると思われるが、実際のところは、バスガイドがシートベルトを着用しようがしまいが、お客の安全性には全く影響がない。お客の安全性に影響があると思われるのはバスの運転手の方だ。バスガイドがシートベルトを着用しなかったとしても、お客を危険に晒すわけではなくて、バスガイド自身が危険なだけだ。
 現在も、バスガイドさん達は“シートベルトを着用していない”という危険を承知して業務に携わっているのだから、本人達が「シートベルトを着用したい」と言わない限り、わざわざ他人がシートベルトの着用を強要すべきではないのではないだろうか?
 
 法令遵守が重要だと言っても、何事にも例外はある。その例外さえ認められないというのであれば、これほど窮屈な社会もない。バスガイドの存在は既に日本だけでなく世界中の文化でもある。日本だけが窮屈な思考でその文化を破壊する方向に傾かないことを願いたい。

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社会問題」カテゴリの記事

コメント

納得です!!どんどん言ってください!!

投稿: | 2008年6月 4日 (水) 23時48分

この件を通し、この世の中はすべてが法でがんじがらめになってしまうのではないかと、危惧してしまった。思いつきの上からの一言で、バスガイドの件のように一つの文化さえも変えてしまう日本は、安全性を確保というより人間をロボット化し、司令を守らなければならないという権力ありきになってきているのではないだろうか。
今一度、決定をした上の方々に申し上げたい。バスガイドは、プロである。
その視点から、発信して下さった事に感謝したい。

投稿: | 2008年6月 5日 (木) 00時15分

コメント、有り難うございます。今後ともどうぞ宜しくお願いいたします。

現代の日本が、国民無視とも言える法規制のオンパレード国家に向かっているように思われている人は、大勢いることと思います。しかし、マスコミは相変わらず役人サイドの御用聞きに徹していますので、個々人が中心となって「間違っているものは間違っている」と批判していかないと、世の中悪くなる(窮屈になる)一方と思われます。微力ながら当ブログも、本来のあるべき社会構築の一助になればと思っています。

投稿: 管理人 | 2008年6月 5日 (木) 20時59分

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