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「学歴社会」と「官僚社会」の歪な共通点

 かつての日本社会では、大学に入学するためには、ある程度の学力が必要だったと思うが、現代の日本社会では、学費さえ支払うことができれば誰でも大学に入学できる時代となっている。もちろん名の通った一流大学に入学するためには、それなりの学力が必要とされるが、あまり人気のない大学などは定員割れするところもあるそうで、完全な売り手市場になっている。
 かつては大学の入試試験に合格することは、ある程度の学力があることを証明するものであったと思うが、現代では、必ずしもそうはなっていない。そのことからも、現代では大学に入学すること自体にそれほどの価値が無くなってきたと言えるかもしれない。

 大学生活を送る期間は、人生のモラトリアム期間※と言われることがある。これは日本独自の甘えた文化かもしれないが、このモラトリアム期間を過ごすということに対しては私も悪いとは思わない。人生にそういう期間があっても良いと思うからだ。
 義務教育を終了してすぐに企業に入ると、4年間のモラトリアム期間を過ごすことなく社会に出ることになる。それは立派なことでもあるのだが、4年間の自由な期間を過ごすことができないという意味では、少し勿体ないと言えるかもしれない。

※肉体的には成人しているが、社会的義務や責任を課せられない猶予の期間。また、そこにとどまっている心理状態。

 一応、お断りしておくと、私は単に大学で遊ぶことが良いと言っているのではない。いろいろと人生について考える(=つまり学習する)助走期間があった方が良いと言っているだけなので、別に大学に行かない人を見下しているわけではない。大学に行く行かないに関係なく、そういう期間があった方が良いという意味である。
 私も学生時代、大学に行かずに働いている人の方が、大学で遊んでいる大部分の人間よりは偉いと思っていた。私自身、大学生の時は完全なモラトリアム人間だったので、働いている人が妙に大人に見えたものだ。
 私の場合、本を買うためにアルバイトをしていたが、生活費を稼ぐために働いていたわけではなく、あくまでも社会勉強の一環として働いていたに過ぎなかった。しかし、その社会勉強ができる期間というものが実は大事だったのではないかと今更ながらに思うことがある。
 
 私の経験は置いておくとして、話を進めよう。現代は、大学に行く価値が低下したと述べたが、現状ではどうなっているかというと、相変わらず、大学に行く人が大半を占めている。実質的には“大卒”という価値が低下しているにも関わらず、「大学へ行く必要はない」という人は極めて少数派になる。
 これからの時代、企業サイドから見れば、一般常識に少し毛が生えた程度の大卒者など、それほど価値があるとは思われていない(理系は別かもしれない)というのが正直なところだと思う。学歴などよりも、実際の仕事をする実力の方が大事な時代であることは世界中の人達が理解しているはずだ。しかし、どうも日本だけは例外のようで、日本の学歴信仰だけは未だに根強く残っている。
 
 よくよく考えると、この“学歴”とは何なのだろうか? 人生が80年として、大学を卒業するまでの22年間(日本の場合、入学するまでの18年間と言った方が正解かもしれないが)で、どれだけ勉強したか(または暗記したか)によって、その後の数十年の人生が決まってしまうというのは、何かおかしくはないだろうか?
 そもそも人間が勉強できる期間は、学生時代だけではない。別に30歳から勉強する人がいてもいいはずだし、大学を卒業すれば、その先、勉強しなくてもいいわけではない。20歳で勉強を止めた人間より、20歳から80歳まで勉強した人間の方が、はるかに学歴は長いことになるし、知識も豊富なはずだ。
 「10代の頃は頭が柔軟で、勉強したことが最も頭に入り易いので、勉強するのは学生時代が向いている」というのは、確かにその通りだろうと思う。しかし、いくら頭が柔軟であっても、嫌々勉強するのと、好きで勉強するのとでは、呑み込み方が大きく違ってくる。10代に嫌々勉強をしている人間より、30歳を超えても、好きで勉強している人間の方が、物覚えが良いということは十分にあるはずだし、そういった自由のある柔軟な社会の方が人間として生活しやすい社会であることは疑いのないところだろう。
 
 この学歴信仰の頂点にいるのは、無論、東大法学部を卒業した官僚達だが、昨今の社会情勢を見ていると、その頂点であるはずの優秀な官僚達が、まるで諸悪の根源のように疎まれている。勉強はできるが、社会経験に乏しく、(勝手に)立案された法案は、どれも実際の庶民感覚からはかけ離れたミスマッチなものばかりで、ほとんどが余計なお世話(有り難迷惑)になってしまっている。
 本来、国の舵取り役は、実際の生きた社会経験をしている人間が行うべきであって、エリート意識だけが強いだけの世間知らず人間が行うべきものではないと思う。しかし、日本の異常なまでの学歴社会がいつまでも継続されると、いつまで経っても、官僚主導国家という悪循環からは抜け出すことはできないだろう。
 官僚が悪いと言っても、官僚達も元々悪人というわけではない。悪いのは、人間としての官僚ではなく、官僚社会の方だ。学歴もこれと同じで、学歴自体が悪いのでなはなく、学歴社会こそが問題なのだ。官僚社会も学歴社会も“学生時代に勉強ができた人間だけが報われる”という本来の理想からかけ離れた歪な社会になっていることが問題なのである。

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コメント

はじめまして
楽しく読ませていただいてます。この手の議論にはいつも違うんじゃないかと思うんです。まず私は今予備校生の息子がいます。第一志望は医学部ですがか早稲田慶応の理工あるいは帝大をと考えています。学力がないというのは認識不足ではないでしょうか。私も国立大学出身ですがはるかに無塚しいことを勉強しています。
企業も学力のある人材をもとめているのは間違いなく、ただ単に学歴社会の弊害?と決め付けるのはいかがなものか。今現在教授している科学技術は、企業と大学研究機関が共同で開発してきたものです。間違っているのは勉強もせずに大学でという肩書きを求めて入学し、入学後も勉強しない日本の風土そのものではないでしょうか。
私には学歴社会をあくとする人たちが実際曾遊風に学歴を買っているのではないでしょうか。
私は子供の人生の可能性は努力することから開けるからと息子には話してきましたし、かれも自主的に努力しています。学暦なんていう軽い言葉の意味なんて考えたこともありませんね。

投稿: どりとる | 2008年8月 1日 (金) 12時30分

どりとる様

コメント、有り難うございます。
少し極論を一般論化し過ぎて書いたため、誤解を招いてしまったようです。
熱心に勉強して(学力を身に付けて)大学に行くことを否定しているわけではありませんし、今後も否定するつもりはありません。「学力がない」というのは、全体的(マクロ的)に見た世間一般的な認識を基にしたものであって、学生全員に適用しているわけではありません。

>間違っているのは勉強もせずに大学でという肩書きを求めて入学し、入学後も勉強しない日本の風土そのものではないでしょうか。

まさしく、その通りです。私もそのことを述べたつもりです。大学にさえ入学できれば、後はなんとかなるというような誤った認識を持って『大卒』という肩書きを手に入れても、これからは通用しない時代だということを述べたつもりです。
企業が欲しがるのは、『学歴』ではなく『学力』(=実力)だとも書いたつもりです。
要するに今後、理想とすべきは『学力社会』であって『学歴社会』ではないということを伝えたかったわけです。あなたもおっしゃっているように、大事なことは、努力して得た学力であって、何の努力も目的もなく手に入れた学歴ではないということですね。私が否定した「学歴社会」とは、そういう意味のない学歴に限定したものです。言葉って、難しいものですね。

投稿: 管理人 | 2008年8月 1日 (金) 21時30分

コメントありがとうございます。
まさに学力社会は肯定されるべきですね。日本は言葉のあやというかすべてひと括りにして、論じる傾向にあるようです。たとえば問題児といえば引きこもりから非行少年まで問題児です。性格違った問題だと思いますが。それはさておき、学歴を買いたい人がいて、買わせたい人が新設大学、専門学校を作り、個性や一芸の掛け声の下にペーパーテスト無しで入学させるから、大学で授業が成り立たないなんていう事態になる。アメリカの大学は、みんな図書館であいた時間一生懸命に勉強していると聞きます。
ゆとり教育の見直し等、この国、官僚や政治家とくに識者といわれる人には平均感覚に欠ける人が多いから変な背策が行われるのではないでしょうか。企業の人事担当者も大学のことは知っているんじゃないでしょうか。しっかりした大學なら就職もたくさんあるだろうと思います。

投稿: どりとる | 2008年8月 2日 (土) 06時36分

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