「ウナギロンダリング」よりも重要な「有害物質問題」
新手(?)の食品偽装として、中国産ウナギ問題が話題になっている。「ウナギロンダリング」という言葉は、なかなか上手いネーミングだと感心したものの、毎度のことながら、論点が少しズレているようなので、中国産ウナギ問題の本質を考えてみたいと思う。
まず、今回の魚秀による中国産ウナギは何が問題なのか? 考えられる問題点を列挙すると以下のようなものだろう。
1、魚秀が消費者を騙して大儲けしていた。
2、ウナギの産地を偽装していた。
3、ウナギには有害物質が含まれていた。
「魚秀はケシカラン!」と言っている一般消費者達は上記の1〜3のどの点が最も悪質だと思っているのだろうか? 「全部だ!」と言う人がいるかもしれないが、私は3が一番大きな問題だと思う。
1の消費者を騙して大儲けするというのは食品業界だけでなく、他の業界でも大なり小なり存在している。今回の場合、騙されたと言っても消費者がウナギ自体を食べずにお金だけ奪われたというような詐欺行為の被害者になったわけではない。日本産ではなかったが、ウナギを食べたことには違いはない。安い商品を高く売られたという意味では詐欺の被害者かもしれないが、それだけであるなら、ここまで大騒ぎするほどのことではない。
「中国産のウナギを食わされたのだから、大きな問題だ!」と言う人がいるかもしれないが、実はそうとも言えない事情がある(後述)。
重大な問題があるとすれば、ウナギに有害物質が含まれていたことだ。つまり、「毒を食わされたのだから、大きな問題だ!」と言うべきだ。
有害物質が含まれていることを知った上で商売を行っていたのだとすれば、それは詐欺というよりも犯罪行為だと言えるからだ。
ウナギは主に東アジア(特に台湾、中国、日本)を中心に生息しているが、日本では浜名湖産が有名だ。ただ、浜名湖産と言っても、実際は養殖も行われているので、初めから全てが日本産というわけではない。市場に出回っているウナギには主に次の3種類のものがある。
1、純日本産のウナギ
2、中国産だが、出荷前に浜名湖(他にもある)に入れられた日本産(?)ウナギ
3、純中国産(または台湾産)のウナギ
では、2のハーフウナギ(?)は、どれ位の期間、浜名湖に入れられていれば、日本産に化けてしまうのかというと、驚くなかれ、たった1週間らしい。(現在は原産地表示が厳しくなったので、少しはマシになったらしいが…)
しかし、僅か1週間で日本産になってしまうというのは問題ではないだろうか? ウナギの寿命が10年以上あることを考えると、1週間というのは、人間で言えば、単なる海外旅行みたいなものだ。日本のカップルが新婚旅行でハワイに行って泳げば、ハワイの人間になってしまうというようなものだ。
こんな摩訶不思議なことが何の疑問も持たれる(気付かれる)ことなく罷り通っている市場で、中国産を日本産だと偽っただけで、大犯罪人のような扱いで報道するというのも考えものかもしれない。繰り返しになるが、有害物質が含まれていることを黙認していたのであれば話は別だ。
というわけで、今回のウナギ偽装問題で追及すべき重大な問題点は、“産地偽装(ウナギロンダリング)問題”ではなく“有害物質問題”であるべきだ。マスコミには、その辺のところを踏まえた上で、公正な報道を行ってもらいたいものだ。
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