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「賃金格差」と「収入格差」の混同

2008091401

 先日、厚生労働省がまとめた今年度の最低時間給賃金は、703円(全国平均値)だったということで、初めて700円台を超えたというニュースがあった。都道府県別に地域間格差はあるとはいえ、概ね650円から750円程度に収まっているらしい。この値からは最低賃金における格差なるものはそれほどあるとは思えない。しかし、役所の視点で観ると、これでも格差があるということらしく、加えて、生活保護の水準とほとんど変わらないということで、更なる最低賃金の上昇を期待しているらしい。

 しかし、ここで疑問に思うのは、最低時間給なるものが、役所の命令で簡単に上げられるものなのか?ということだ。役所の発想からは、なにやら“無理矢理に賃金を上げずに労働者から搾取している悪徳な企業経営者がいる”というような考えが浮かんでくる。まるで、“労働者は資本家から不当に搾取されている”というようなマルクス的な発想がその基になっていると言わんばかりに…。

 確かに、産業革命の時代には、そういった悪徳な資本家がいたのかもしれないし、景気の良かった頃の日本にも、そういった意地の悪い経営者がいたのかもしれない。しかし、現代の日本にあっては、もはやそのような発想はほとんど無意味に近いと思える。一部、そういった経営者も残っているのかもしれないが、大抵の中小企業経営者は、なにもイタズラして賃金を上げないわけではないだろう。おそらくギリギリのところで、時給を勘案している経営者も少なくないはずだ。ヘタに時給を上げると採算が合わずに、あえなく倒産という厳しい資金繰りに喘いでいる会社も少なくはないように思える。

 そもそも「給料とは何か?」という根本的なところから考え直す必要があるのではないだろうか?
 給料とは、仕事を通じた利益から支払われるものだ。つまり、利益が出なければ、給料は支払えない。こんなことは小学生でも解ることだが、はたしてこの国の役人達は、この単純な理屈をどれだけ理解しているのか疑わしく思える時がある。(国家が赤字経営なのだから、本来、公務員はボーナスはもとより、まともな給料も出ないという考えを持っていなければならない)

 仕事には、良い仕事もあり悪い仕事もある。誤解を招くといけないので、正しく言うと、利益の大きい仕事もあれば、利益のほとんど無い仕事もある。そして、厳しい競争社会になればなるだけ、後者の比率が大きくなる。それでも仕事が無いよりはましだということで、仕方なく薄利で仕事を受注せざるを得ないという現実がある。
 そういった仕事を受注すると、当然のことながら、労働者には効率的・合理的に仕事をこなすことが要求される。もし効率的な仕事ができないのあれば、最悪の場合は解雇、そうでない場合であっても、残業代は付かず減給はやむを得ないというのが、現代の日本の中小企業の姿だ。

 そういった現実を無視して、闇雲に「最低賃金を上げろ!」と言っても、無理な場合はある。いや、むしろ無理な場合がほとんどだろう。現在、700円でギリギリ採算が取れている労働者の賃金を無理矢理に800円にしても、その労働者が素直に喜べるわけではない。700円なら雇用されるが、800円では雇用できないというようなことになってしまえば、喜ぶどころか逆に悲しむことになる。そして、この理屈は、どこの会社に行っても適用されてしまうことになるので、その労働者は失業という闇の中を延々と徘徊しなければならなくなるかもしれない。これが果たして、良い政策だと言えるだろうか?

 例えば、少しだけお小遣いの欲しい学生や主婦が、仕事があまり出来ないという理由で、経営者から「時給500円なら雇用できます」と言われた場合を考えてみよう。
 その学生や主婦は「それでも構わない」と言うかもしれない。実際にそれだけの仕事しか出来ないという場合も有り得るので、充分に考えられるケースだ。このことからも、両者の合意さえあれば、別に時給が最低賃金を下回っても問題があるとは思えない。

 しかし、ここでその学生や主婦が「最低賃金は700円と決められているので、700円以上でないと嫌です」と言った場合はどうなるだろう? 経営者は、「ああ、そうですか、それなら他の会社を当たってください」ということになるだろう。経営者側にも労働者を選択する自由があるからだ。採算の取れない労働者を採算の合わない賃金で雇用する必要はないからだ。
 結果、この学生や主婦は、どこにも雇ってもらえず、1円も稼ぐことができなかったということになってしまいかねない。
 さて、この場合、悪いのは何だったのだろう? 
 意地の悪い経営者がいたためだろうか? もちろん違う。
 仕事の出来ない学生や主婦だったからか? これも少し違う。
 では何が問題だったのか?
 答えは、“需要と供給を無視した最低賃金の取り決め”ということになる。

 結局のところ、最低賃金を無理矢理に上げてしまえば、賃金格差の解消どころか、逆に収入格差は広がってしまいかねない。雇用されている人間達の賃金格差は縮まったとしても、雇用されない人間が大量に発生してしまえば、有職者と失業者の間に更なる収入格差が生じる可能性が高い。政府が、求めているのは、賃金格差ではなく収入格差の解消ではなかったのか?
 賃金格差を解消することで、収入格差が拡大してしまうのであれば、ナンセンス極まりない。
 分かり易く言えば、月給格差を解消することで、年収格差が拡大してしまっては、無意味であり、本末転倒と言わざるを得ない。小さな視点ではなく、もっと大きな視点で物事を見ないと、なんの解決にもならないということを現代の役人達は身をもって証明しているかのようだ。やれやれ…

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