努力した者が報われる社会のススメ
12月10日、国家公務員に冬のボーナスが支給された。今年度の平均支給額は69万2900円ということになっているが、この数字は管理職を除いた一般行政職員のみの平均値らしいので、実際は更に高額になると思われる。
国家公務員のボーナス支給額の決定は、民間準拠方式(民間のボーナス支給額を調査した上で決定される)を採用している。「職種別民間給与実態調査」及び「国家公務員給与等実態調査」を実施し、官民較差を算出した上で、できるだけ民間企業との差がないように決定されることになっている。
今年は世間一般の景況感も勘案してか、公務員のボーナスも一応は昨年よりは減額されたようだが、内訳をみてみると僅か3400円(0.5%)の減少にとどまっている。
公務員のボーナス支給額が“世間一般の景況感を勘案する”ことが前提であるのであれば、僅か0.5%の減少というのはどう考えてもおかしい。ハッキリ言ってケタが違っていると言える。現在の日本の景況感を鑑みれば、最低でも5%はカットしなければ国民は納得できないだろうと思う。もっとハッキリと言うと、本来であれば50%カットでも丁度よいぐらいだろう。なぜかって? なぜなら、民間企業のボーナス支給額の(先行き)平均がその程度になると思われるからだ。これほど分かり易い基準はないだろう。
お断りしておくと、私は金銭の多寡を問題にしているわけではなく、別に公務員に対して嫉妬しているわけではない。それだけの高給をもらうだけの仕事をしている人であれば、何の文句もない。実際にそれだけの仕事をしている公務員もいるだろうから、そういった人達まで批判するつもりはない。
問題は、ボーナス額の高低ではなく、ボーナス支給額を決定するべき“基準”というものがあまりにも杜撰であり、あまりにも不合理であることだ。そしてその結果として、あまりにも不条理な社会(=不公平な社会)の姿が浮き彫りになってしまっていることこそが問題なのである。
民間企業では、業績如何によってボーナス支給額は大きく異なる。そして最悪の場合はボーナス0という場合も有り得る。そういったリスクを背負って真面目に働いている一般サラリーマンのボーナス支給額に比して、全くと言っていいほどリスクを背負っていない公務員のボーナス支給額が、場合によってはその一般サラリーマンの2倍にも達しているというのは、あまりにも不公平であり、到底まともな社会の姿とは思えない。はたして本当に“基準”などというものが考慮されているのか疑わしいと言わざるを得ない。
(注意:ここで述べた「リスク」とは職務上のリスクのことではなく、給料の支給リスクのこと)
こんな不公平社会が罷り通っているのであれば、一般サラリーマンの働く意欲が萎えてしまってもなんら不思議ではない。況して、ボーナスとはほぼ無縁の契約社員などは、「やっていられるか」というのが本音だろうと思う。
こういった社会の歪みによって、本来、正社員として雇用されるべき人間が、非正規社員として労働に携わらなければならないという不公平な結果を招いている。もちろんそれだけが原因ではないが、大きな一因であることは間違いあるまい。
努力した者が報われ、努力しなかった者は報われないという単純な理屈がこの国では通用しなくなっている。本来、収入というものは、個人の努力によって差がついてくるもののはずで、そうであってこそ、人々は努力しようという気持ちにもなれるものだ。言い換えれば、そういった公平な社会であってこそ、経済は成長し発展する。つまり、経済の成長・発展というものは、実は人間自身の成長・発展と密接に関わっているということだ。国民自らが、成長することを願わなくなってしまえば、その国の経済は衰退する。これほど単純な理屈はない。
しかしこの国の権力者達は、学生時代に成績が良かった者だけが“努力した者”だと思っているフシがあり、社会に出てからの努力をあまりにも軽視しているように見受けられる。ゆえに公務員のみが報われる社会となっているのかもしれない。
日本丸が、氷山のある方向ではなく、努力した者が正当に評価される社会の方向へ舵取りすることを願いたいものだ。
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コメント
私は派遣ですが、一応ボーナスは貰えます。
大体一月の基本給の二倍弱程度です。
先日聞いた話では去年と比べて基本給の0.2~0.3%減ったらしいです。(まだ受け取っていないので噂レベル)
公務員は月の基本給の何倍程度なんでしょうか。
そこら辺も考慮に入れた方が良いと思います。
投稿: 松崎 | 2008年12月12日 (金) 07時51分
こんにちは。
トラックバックありがとうございます。
公務員になると親は喜ぶものですね。将来安泰だと。
わかっていて民間を選択したのだから、給金に差があるのは別に疎まないつもりですが、
>できるだけ民間企業との差がないように決定されることになっている
そういう認識で出されているとなると、懐よりも心の温度さを感じますね。
給料減にボーナスゼロのオツカレでした。
投稿: オツカレ | 2008年12月12日 (金) 10時48分
松崎様
ご指摘、有り難うございます。私が以前に勤めていた会社にも派遣社員の方がおられましたが、確かにボーナスは(派遣会社の方から)支給されていたと記憶しています。
文中の「派遣社員」は、派遣会社を通さない臨時雇用社員=「契約社員」とした方が良さそうですので、変更させてもらいました。
公務員のボーナスが基本給の何倍かということですが、年収が平均700万円と考えると、
700−(70+70)=560
560÷12=46
69÷46=1.5
ということで、約1.5ヵ月分ということになります。(年間では3ヵ月分)
(追記)通常、ボーナスは基本給で計算します。上記の1.5ヶ月分というのは全収入における数値です。
投稿: 管理人 | 2008年12月12日 (金) 21時18分
オツカレ様
コメント、有り難うございます。
『公務員=将来安泰』という方程式がなぜいつまでも成り立つのか?ということと、成り立たせるためには、どのような反作用が伴っているのか?を考えることが現代の日本では問われています。
「公務員は安定している」と言われてきましたが、現代において「安定」という言葉がどういう意味合いで使用されているのか?を考えなければならない時代に突入しました。
民間企業の仕事が減少すれば収入は下がることになり、当然、納める税金も減少します。国の税収が減少するということは、基本的には国の仕事も減少せざるを得ないということです。
仕事が減少しても人員が増え、収入が上がるような企業は通常、有り得ませんが、公務員の世界では、その有り得ないことが罷り通っています。
公務員という職業が悪いのではなく、公務員制度の運用が時代にそぐわないまま放置されていることが問題になっているわけです。
投稿: 管理人 | 2008年12月12日 (金) 22時02分
ボーナスの倍率計算ありがとうございます。
こっちの方がやや多いくらいですね。
当然技術屋だと本人の能力も大分影響しますが。
ご存知とは思いますが、派遣も色々ありますからね。
やっているこっちも全容が分からないくらいです。
大別して特定派遣、一般~、紹介~、請負があって、請負は本来二百以上のチェック項目をクリアして初めて許可が下りるそうです。
紹介は“腰掛”だから良いとして、一般は働いていない間は給料無しです。
特定は契約期間外も生活費は支給されますが、専門的な技術や知識を持っている人でないと採算が取れなくなります。
その分契約金も高くなって、お陰でボーナスが入っているようなものです。
と言っても、同じ派遣(他社)でボーナスが無い人も一緒に働いていますから本当に良く分かりません。
投稿: 松崎 | 2008年12月14日 (日) 09時15分
松崎様
コメント、有り難うございます。
手に職(技術)が有るか無いかによって、「派遣」という言葉の受け取られ方は大きく違うということですね。
と考えると、今、テレビでしきりに騒がれているのは『一般』の派遣社員ということになるのでしょうか?
派遣社員のクビ切り問題については、記事として改めて投稿したいと思っています。
投稿: 管理人 | 2008年12月14日 (日) 21時39分
すばらしいブログありがとうございます。私のHPにで紹介させていただきますので、今後ともどうぞよろしくお願いします。
投稿: 渡辺日出男 | 2008年12月15日 (月) 01時30分
渡辺日出男様
コメント、有り難うございます。
HPにてのご紹介、有り難うございます。
今後も少々理屈っぽくなる(?)かもしれませんが、宜しくお願いいたします。
投稿: 管理人 | 2008年12月15日 (月) 21時11分