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『派遣社員制度』と『年功序列制度』の関係性

 派遣社員の派遣切り(人員削減)が問題となり、大きくクローズアップされている。そのせいか、派遣社員を擁護する立場を表明する政治家も出てきつつあるようだ。
 
 この問題は少し複雑であるためか、問題の本質を見失いがちだ。この問題は、物事を片面でなく両面から観ない限り、非常に偏った意見になってしまう。
 例えば、「派遣社員は永遠に1社で雇用するべきだ」というような不可思議な意見と、「派遣社員は正社員ではないのだから、いつカットされても仕方がない」というぶっきらぼうな意見に分かれてしまう。そのどちらも短絡的な偏った意見であることは否めない。

 21世紀になってから日本経済自体が成熟期(=低成長時代)を迎えたことに気がついた多くの企業は、仕事の一部をアウトソース(=外注)するという手段を用いるようになった。このことはもはや周知の事実であり、仕事を外注することを否定するような人はいない。今時、「仕事を外注せずに社内で行え!」とか、「仕事を外注せずに正社員を増やせ!」とか言っているような人は、極めて少数派であることは間違いないだろう。
 
 企業が正社員ではなく派遣社員を意図的に雇用しているのも、まさしく上記の「アウトソース」と同じ理由による。要するに、“企業経営におけるリスク回避”という目的のために、派遣社員制度が導入されているわけだ。
 派遣社員にすることで、人件費を削減する理由があることは言うまでもないが、もう1つ重要なことは、正社員と違って「融通が利く」という理由もある。その中には、残念ながら『仕事が無い時はいつでも解雇できる』という理由も含まれている。
 
 …と言っても、話はここで終わりではない。もう少し、この問題の原点に戻って考えてみよう。
 確かに派遣社員制度は、現在の多くの企業にとっては必要不可欠な制度となっている。派遣社員制度を利用せずに、全て正社員として雇用してしまうと、仕事が減少した時には正社員を解雇せざるを得ない状況に追い込まれてしまう。
 ゆえに「派遣社員制度は必要だ」と言う意見は一見正しく聞こえる。しかしそれには条件がある。
 それが正しいと言えるのは、派遣社員制度というものが本当に“企業経営のリスク回避”という目的で利用されている場合だけであって、決して“正社員の地位を守るため”という理由であってはならないということだ。
 その企業における派遣社員制度の利用目的によっては、派遣社員制度の導入は、善にも悪にもなるということを見落としてはいけない。

 しかし、多くの非正規雇用否定論者(派遣切り否定論者)は、ここを見逃している。
 単に「派遣切りは悪だ!」と感情的な意見を述べるに止まっている政治家や評論家のいかに多いことか。
 派遣切りにも様々な理由によるものが存在することを考えず、派遣社員制度というものが存在している時代的背景も社会的背景(これが1番重要)も考えない。こんなのはただの『飯事(ままごと)論議』と言える。問題の本質を考えようともせずに、「派遣切りは悪だ!」などと叫んだところで、一向に問題は改善しない。むしろ悪くなるだけだ。
 
 企業内の合理化を行った上での派遣社員制度の導入は間違いではない。しかし、企業内が不合理なままで、自らの不合理さの帳尻を合わすという目的だけで派遣社員制度を導入することは間違っている。そして企業経営の悪化における前者の派遣切りは仕方のない判断と言えるが、後者の派遣切りは、結局は手前勝手な派遣切りと批判されても仕方がない。
 具体的に言うと、年功序列制度という年長者の既得権益を維持するためだけに、派遣社員制度を導入することは間違っている。なぜなら、その歪な給与体系を見直せば、さらに多くの正社員を雇用することができるからだ。同じ理由によって、派遣切りも最小限に抑えることができるはずだからだ。
 
 この問題を1企業ではなく全国的な視点に置き換えて考えれば、派遣社員問題の本質はさらにクッキリと浮かび上がる。日本全国の既得権益者達の歪な年功序列制度というものを見直せば、多くの正規雇用者が確保できるということだ。
 私は(双方共に)自由のある派遣社員制度が悪いとは思わないが、政治家が「非正規雇用や派遣社員制度が悪い」と言うのであれば、同時に年功序列制度も否定するべきだろう。派遣切りを否定するのであれば、お役所やマスコミを中心とした歪な既得権益をこそ否定せよと言いたい。それができないのであれば、その人物は物事の本質を理解していない似非論者か、あるいはただの偽善者でしかないということだ。
 
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コメント

派遣制度と終身雇用制度(年功序列のオプション?)のバランスを考え直す時が来たのかもしれません。

社会全体で雇用を安定させる事を考えれば、それぞれの役目を保ったまま改善できると思います。

投稿: 松崎 | 2008年12月16日 (火) 21時25分

松崎様

コメント、有り難うございます。

 現代の日本社会に必要なのは、雇用体制の構造改革であり、それを実現するためには、官僚主導社会からの脱却が必要不可欠です。
 ただ、それが不可能に近い難題と化していることが日本の閉塞感の正体であるのかもしれません。

投稿: 管理人 | 2008年12月16日 (火) 22時52分

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