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『年越し派遣村』の功罪【正社員神話の崩壊】

2009013101_2  言わずと知れたことではあるが、世の良識ある識者達の多くはマスコミの『派遣村騒ぎ』を「良し」とはしていない。こういった見せかけだけの弱者保護を唱ったところで事態は一向に好転せず、むしろ悪化する(景気も悪くなる)だけだということを多くの識者が述べている。
 しかしながら、一見、百害あって一利なしに見える『派遣村騒ぎ』にも思わぬ効用(?)があったらしい。その効用とは、『軽度の心の病(精神病)を患った人々が、派遣村騒ぎを見て復職しようとしている』というものだ。
 これは《派遣の次は正社員、その中でも休職中の正社員が解雇の対象者になる》という心理的な危機感が齎した効果であるらしい。

 彼らが復職しようと考えるようになった理由は、“派遣村の人々の姿を見たから”ではなく“不況の本質に気が付いたから”と言うべきかもしれないが、より具体的に言えば、“会社に行く”という不安感よりも“会社をクビになる”という恐怖心が大きくなってしまったということだろう。ということは、彼らは以前からそういった合理的な判断ができる精神状態にあったとも言えるわけで、本当に保護が必要な精神病患者ではなかったと言うこともできるだろう。

 今回の『派遣村騒動』によって幸か不幸か、今まで固定されたまま動かなかった【思考天秤】の左右の重さが逆転してしまったとも言える。
 その天秤の左側には“会社に行かずとも給料が支給されるという思考”、右側には“会社をクビになるという思考”が乗っていた。これまでは左側の天秤が圧倒的に重かったために、休職する理由を見つけることに羞恥心もなく、働かずに給料が支給されることにも何ら罪悪感を感じていなかった。しかし、正社員という立場も絶対的なものではないという当たり前の現実に気が付いたがために、天秤の右側が重くなってしまった。
 このことは、正社員であることが安全だという常識がもはや名実ともに成立しなくなったことを物語っている。正社員という肩書きさえあれば、会社に対してあらゆる権利を行使し、会社に保護されることを当然のことだと考えてきた人々が、もはや自分達を暖かく保護してくれるもの(会社)は存在しないということに気が付き始めた。これからは、企業に対してはテイク オンリー(奪うのみ)の姿勢ではなく、最低でもギブ アンド テイクの姿勢を持たない限り、雇用関係が成り立たないということに気が付き始めた。これは日本経済にとっては、ある意味でプラスであると言えるだろう。

 もちろん、本当に保護が必要な人には保護が必要だが、個人の努力如何によっては保護する必要がなくなる人にまで過剰な保護を与え続けることは無駄以外のなにものでもない。彼らは、《そんな不合理な社会システムがいつまでも続けられるはずがない》という至極単純な事実を発見したに過ぎない。

 現代のようなストレス社会では、精神を病んでしまう時があることは仕方がないとしても、いつまでもその状態にいることを是とし会社に依存することが当たり前となってしまっては、その会社はただの福祉企業となってしまう。
 お金が天から降ってくるものであれば、そういったボランティア企業の存在も許されるのだろうが、利益を出すことが難しくなってきた現在の企業環境下においては、そのような福祉企業は成り立たない。
 利益を追求しなくてもよい公の福祉団体は存在し得ても、利益を追求しなければならない民間の福祉企業などは本来、存在し得ない。今まで日本にそのような面倒見のよい企業が多数存在しているように見えていたのは、経済膨張期における錯覚、つまり、バブル経済が齎した陶酔的熱狂(ユーフォリア)でしかなかったのである。今回の派遣村問題で露(あらわ)になったものとは『正社員神話』の崩壊に他ならない。

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