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「消費者心理」と「お役人心理」の乖離

2009032201 不況の影響でパソコンの売れ行きは鈍化しているそうだが、イーモバイルの100円パソコンの売れ行きは好調らしい。
 100円なら売れて当然だと思われがちだが、まさか高性能なパソコンが100円で製造できるなどとは誰も思っていない。当然、イーモバイルの毎月の基本使用料から残りのパソコン本体料金が(パソコン製造メーカーに)支払われている。
 これは当然のことではあるが、よく考えてみると、こういった販売形態は何もイーモバイルが初めて開始したわけではない。そう、よく思い出してみると、数年前までは「1円携帯」という言葉がよく使用されていたはずだ。しかしその『1円携帯』というものは総務省のお達しにより、存在しなくなってしまった。
 『1円携帯』というものが出回っていた時は、携帯電話業界も活況を呈しており、携帯電話に付随する各種メーカーも景気が良かったと記憶しているが、このお達しが出て以来、携帯電話の販売台数は落ち込み、携帯電話業界にもまさかの不況が訪れることになった。

 なぜ、携帯電話を1円で販売してはいけないのに、パソコンは100円で販売してもよいのだろうか?という素朴な疑問は置いておくとして、携帯電話を1円で販売してはいけなくなった理由は、“携帯電話の通話料金が高過ぎる”というものだった。 携帯電話自体も先のパソコンと同様、まさか1円で製造できるわけがないので、各携帯メーカーは毎月の使用料金に携帯電話の残りの本体料金を上乗せしていた。
 よくよく考えると、確かにトータル的には通話料金が高い方が消費者は損をしていることになるので、総務省のお達しもまんざらでもないとも言える。全体として見れば一応、消費者は得をしていることになるだろう。
 しかし、総務省には“消費者心理”というものが全く理解できていなかった。いや、もし仮に消費者心理を理解できていたとしても、消費者保護を優先し、消費者心理は無視されていただろう。彼らには、“消費者心理を巧みに利用してお金儲けをする”などということは許すわけにはいかないという建前(お役人心理)があるため、少しでもズルく見える経済行為はすぐさま規制の対象となってしまう。

 景気とは、その言葉の通り“”のものであって、消費者の消費意欲(購買意欲)を喚起することは、景気を良くするためには欠かせない目的の1つでもある。
 携帯電話を1円で購入した人が、後から通話料金によって残りの携帯電話料金を徴収されていたのだとしても、誰も騙されたとは思わないだろう。1円で携帯電話を購入できて得をしたと思うことはあっても、後から高い通話料金を徴収されるなどとは通常、考えないはずだ。
 
 1円携帯も100円パソコンも消費者心理を巧みに利用した販売形態であって、別に消費者を騙しているわけではない。その1円携帯の販売形態が詐欺だなどと言って、消費者心理を無視した規制を行うとどうなっただろうか?
 消費者が「目からウロコが落ちました」と言って喜んだだろうか? 余程のヘビーユーザーであれば通話料金が安くなって喜んだかもしれないが、おそらくそんな人はほとんどいないと思う。大抵の人は、携帯電話を買い替えできなくなったという不満を抱いているだけで、通話料金が安くなったから良かったなどとは思っていないと思う。実際にそう言っている人は周りにも大勢いるし、私も同意見だ。通話料金は自分自身の工夫で安く抑えることができるが、携帯電話本体は自分自身の工夫ではどうすることもできない。ゆえに消費者はストレスを感じ、消費意欲を減退させてしまう。
 
 消費者の不満はともかくとして、景気自体に悪影響を及ぼしていることは看過するわけにはいかない。総務省のお役人達は景気が悪くなっても困らないかもしれないが、民間人はもろに景気の影響を受けることになるため、事態はより深刻だ。
 1円携帯が存在していた時代の方が、現在よりも活気があったと思うのは私の気のせいだろうか? 米国金融危機の有無や影響に関係なく、1円携帯が存在していた時代の方が、住み易い社会だったと思えるのは錯覚だろうか?
 
 繰り返しになるが、景気を良くするためには、消費者がお金を使うようになる対策を立てなければいけない。イーモバイルの販売形態は、まさしく“消費者にお金を使わせる”という目的を達成した販売テクニックであり、決して、詐欺でもなければ、ズル賢いわけでもない。消費者心理を巧みに利用して、消費者の財布の紐を緩ませることができるのであれば、それは結果的には景気を良くすることに繋がり、日本経済にとってもプラスになることは間違いない。
 『景気を良くする』という大きな目的を達成するためには、「ズルい」などという個人的な感情にこだわっている場合ではない。そのような小さな正義という建前のために、経済発展という本質を犠牲にするわけにはいかないのだ。
 消費者心理とお役人心理は決して交わることがない。消費者心理を犠牲にして、お役人心理を優先すれば、景気は悪くなるしかないという冷厳なる現実をこそ直視しなければ、真なる景気の回復は有り得ないということを知らなければならない。

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