『思考停止国家』脱却のススメ
ようやく、豚インフルエンザ騒ぎも沈静化しつつあるようだが、今回の一件で日本国民の思考停止ぶりが世界中に知れ渡ってしまったようだ。海外の知識人達は、豚インフルエンザにおける日本のパニックぶりを冷笑(嘲笑)しているらしい。ほとんど実害の無いウイルスに対して、よくもまあここまで馬鹿騒ぎができるものだと呆れ返っているという噂も耳にする。ある評論家が言うには、今回の一件で「日本はテロの標的国家になる危険性が出てきた」ということらしいのだが、なるほど、これはなかなかの慧眼だ。実際に今回の騒ぎを空港で目撃した海外の人々は「日本でまたテロ事件でも発生したのか!?」と疑ったそうなので、充分に考えられるケースだ。
世界中のお金目当てのテロリストから観れば、こんなに簡単にパニックに陥ってくれる国があるのであれば、まさしく恰好の標的(カモ)だと思われても仕方がないかもしれない。偽の情報であろうが、不明の情報であろうが、実害を考慮しようともせずに簡単に踊らされてしまうのだから擁護のしようがない。“本人(本物)かどうかを確認せずにパニックに陥ってしまう”という意味では、まさに『振り込め詐欺国家』状態だとも言える。
最近では、現代日本の思考停止状態を嘆いている本が続々と刊行されているが、ここでは次の3冊をご紹介したいと思う。
『「知の衰退」からいかに脱出するか?』大前研一著
『思考停止社会』郷原信郎著
『会社に人生を預けるな』勝間和代著
まず、大前氏の『「知の衰退」からいかに脱出するか?』は、日本の知の衰退ぶりを歯に衣を着せずに徹底的に掘り下げている。大前氏は本書の中で、少し前にベストセラーとなった『国家の品格』を「思考停止のすすめ」または「鎖国のすすめ」だと指摘している。
ちなみに私は『国家の品格』は未読(正確に言うと数分間立ち読みして見切りをつけた)だが、この本が200万部も売れたというのは少し疑問に思っていた(周りにも読んだ人がいない)ので、大前氏の指摘に妙に納得してしまった。
大前氏はこの本の中で先の『郵政選挙』についても鋭い指摘を行っている。当時、多くの国民は郵便局を“国営のまま”にするか“民営化”するかという二者択一に悩まされたが、本当は、“民営化する”か、それとも“廃止する”かという議論が起こるべきだったと述べている(大前氏の立場は無論“廃止”)。つまり、「国営という選択肢は初めから必要なかった」のだと。
郵便局「国営 vs 民営」論ではなく、郵便局「民営 vs 廃止」論とは実に思い切った話だが、確かに言われてみれば、目からウロコの考察ではある。
大前氏のように海外でも充分に生活していける人物は、国内の地位に固執して本音が言えずに汲々としている言論人とは実に対照的で、言いたいことをズバリ言ってくれるという痛快さがある。この本は最近の大前氏の本の中でも特にオススメできる万人向けの好著だと思う。『国家の品格』には申し訳ないが、こういう本が代わりに200万部売れた方が実際に日本のためになるだろうと思う。
次に最近、サンデープロジェクトにもよく出演されている郷原氏の『思考停止社会』だが、彼自身が元検事ということもあってか、専門的な言葉が散見され、少し事務的(?)な文章なので、よく考えて読まないとウッカリ流し読みしてしまいそうになるのだが、集中して読むと、なるほど納得の目からウロコの思考啓発本(?)となっている。私が普段、ブログで指摘しているようなことを、より専門的な視点から掘り下げて述べられており、切り口も実にシャープだ。この本はまさに題名の通り「思考停止社会」の複雑な構図を明快に暴いており、ある意味で「警世の書」と呼べるかもしれない。氏の今後のご活躍に期待したいと思う。
最後に、最近、女流経済評論家として頭角を現しつつある勝間和代氏の『会社に人生を預けるな』だが、この本は以前にヒットした『銀行にお金を預けるな』シリーズの続編に位置する。基本的には一般人向けのリスク・リテラシー啓発本になっている。
勝間氏は政府関係の仕事も抱えているスーパーウーマンというイメージが強く、そのせいか反政府的な発言はできるだけ控えめにしているのかな?と思っていたのだが、この本ではズバリ本音を述べているように思われ、日本の終身雇用制度にもメスを入れており、堂々と「お上に人生を預けるな」と述べている。
面白いのは、アメリカのヒーロー像というのは、スーパーマン、バットマン、スパイダーマンのように市民(個人)が主役だが、日本のヒーロー像というと、お上(遠山の金さん、水戸黄門、銭形平次、ウルトラマン、仮面ライダーなど)が主役になっていると指摘しているところだ。言われてみると確かにその通りではある。“お役人=正義の味方”という刷り込みが行われてきたのではないか?と疑われても仕方がないほどに偏っている。
そして「寡頭制」という聞き慣れない日本の支配体制にも触れられており、多読家の勝間氏ならではの解釈で分かり易く書き連ねられている。勝間氏は大前氏と同じコンサルティング会社のマッキンゼー出身だけに、今後も合理的な視点から日本社会の問題点を指摘していってくれるのではないかと期待している。『銀行に〜』、『会社に〜』、とくれば、次は、『お上に生命を預けるな』の3部作刊行を期待したいところだ。
以上、今回の新型インフルエンザ問題で、日本社会に別の意味での危機感を覚えた人は、是非、上記の3冊だけでも読んでいただきたいと思う。
思考せずして正しい現実を認識することも理想を語ることもできない。思考せずして成功も発展もなく、思考せずして不況からの脱却もないということを知る上で格好の教材となるはずだ。
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