ブックオフ買収における真の改善策とは?
先月、大手出版社がこぞってブックオフの株式を取得するというニュースが流れた。講談社、小学館、集英社、大日本印刷など、本の流通に関わる大手企業が手を結んでの買収ということで、いろんな噂が飛び交った。その噂は大きく分けて次の2つに分かれる。
1、本の新しい流通形態を構築することによって、
出版不況を打破するという目的のための買収
2、出版不況の一因と目されているブックオフを中心
とした中古本売買の合法的な規制強化を行うため
の買収
マスコミは概ね、1の見解を採っているようで、新聞等では前向き(?)なニュースとして伝えられていた。しかしネットでは毎度のようにマスコミとは反対の2の意見が多く見られるようだ。
私もよくブックオフを利用している常連客なので、この事件は他人事とは思えない。以前にもブックオフの商売方法の是非については当ブログで述べたことがある。『ブックオフは文化の破壊者か?』というタイトルで、小林よしのり氏のブックオフ批判に対する1つの反論として述べさせてもらった。
かつては私も小林よしのり氏のファンだった頃があるので、あまり小林氏に対する批判はしたくなかったのだが、あまりにも行き過ぎた極論は看過するわけにはいかないという意味で反論させてもらった。と言っても、当ブログの世間に対しての影響力など微々たるものなので、声無き反論に近かったかもしれないが…。
しかし当ブログを訪れた人の1割以上の人はリピーターとなってくれている(下記のリピート率グラフ表を参照)ようなので、仮に100万人の訪問者がいれば10万人の人が閲覧してくれる計算になる。そう考えると、訪問者さえ上手く増やすことができれば、少しは影響力が出てくるかもしれないし、実際に「ブックオフ」というキーワードで当ブログを訪れてくれる人も結構いるようなので、将来的には少しは期待できるかもしれないなという淡い期待を抱いている。

小林よしのり氏についての話はまた別の機会に譲るとして、本題に戻ろう。まずその前に『本』について少しだけ述べておきたい。
本という物の価値というのは、実に相対的であり、読んだ人によっては大きく価値が違ってくるものだ。本という物理的な物を製造するという物質的な価値にそれほどの違いはないが、読む人の判断によっては、千円の本が1万円の価値を有する場合もあるし、1円の価値も無い(=読むに値しない)という場合も有り得る。また、どんなに価値があると思われる本であっても、読んだ本人にその本に書かれてある内容が理解できないのであれば、価値が無くなる場合も有り得る。つまり、本の内容としてのレベルもさることながら、読む人の認識レベルによっても本の価値というものは大きく違ってくるわけだ。
そういう観点に立って書店を観てみると、現在の本の値段というものは、基本的に本の製造原価に対しての大体の値段設定がなされているだけであり、内容で値段が付けられているわけではない。その本を書くのに10年かかろうが、1ヶ月でできようが、著作者が製作に費やした経費も一切計上されておらず、新書なら新書、単行本なら単行本という感じで全て一律の値段設定がなされているだけだ。いかに売れっこの著者であったとしても、少しデザイン的な装丁にお金をかけた分だけ高くなっている程度だ。これはどういうことかというと、一言で言えば、「玉石混淆」だということができると思う。現在の出版業界には正確に本の価値を計るモノサシが無い状態だということもできる。売れる本も売れない本も全て一律の値段設定になっているということは、ある人にとっては有り難いことなのかもしれないが、よく考えると不思議なことでもある。それは、需要のあるものは高くなり、需要のないものは安くなるという市場法則を完全に無視した値段設定がなされてきたということでもある。違った視点で見れば、これは当たりハズレのあるクジみたいなものだということもできるだろう。
そういった市場法則を無視した業界に颯爽と出現したのがブックオフを中心とした中古本市場だ。そこでは当たりハズレがあるとはいえ、一応、全ての本が値段分けされている。出版年度、人気本、売れっこ著者、本の状態などで本の値段が分類されている。これは消費者から観れば、新刊のように決められた値段でしか買えないという不自由さが無いという意味でも魅力的に見える。本人が価値の有ると判断している本が安価で売られていれば、買って得をした気分にもなる。また、本来、値段相応の価値が無いと思われていた本にも手が伸びるというプラス効果もある。
今回の買収劇の目的が、前向きなものか後向きなものかというのは現状では判断のしようがない。ただ1つだけ確かなことは、“出版業界の現状を改善する”という目的があることだけは間違いない。これ以上の悪化を防ぐための現状維持策と考えられなくもないが、既存の大手出版企業がタッグを組んでまで行ったわけだから、今後、なにかしらの変化が起こることになるはずだ。その変化がどのようなものかによって、この買収劇が如何なるものであったのかが明らかになってくるだろう。近いうちにブックオフの店舗から100円本が200円、300円になったり、全ての本にビニールが巻かれるようなことがあれば、消費者の反感を買うことになるだろうが、逆にブックオフで新刊も販売されるようになれば、消費者から支持されるかもしれない。
とにかく、今までの出版業界は“本の価値”というものを無視してきた。本の内容だけでなく、目に見える本の状態までも無視した値段設定を行ってきた。折れ曲がった本であろうが、蛍光灯焼けした本であろうが、全て同じ値段でしか販売できないという消費者の購買心理を無視した販売を行ってきた。現在の出版業界の低迷は、そういった社会主義的な販売体制が維持できなくなってきたということの証左だと言うこともできるだろう。つまり、著作者や消費者のことをあまり考えずに、製造販売業者(=出版業者)を中心に値段設定がなされてきたことが問題なのである。
現在の出版業界の低迷を招いた原因はブックオフなどの古本販売業者が出現したことだけにあるのではなく、著作権や消費者、そして市場法則といったものを無視し続けてきた出版業界側の責任でもある。言わば自業自得だ。古本売買によっても著作者に印税のようなものが少しでも入るのであれば、漫画家などからブックオフ批判などは出てくるはずもない。そもそも、ブックオフの商売が目障りだと言うのであれば、図書館も全て閉鎖しなければ筋が通らない。古本売買ではお金が動くが、図書館ではお金は動かないわけだから、経済的な視点で観れば、ブックオフを批判するよりも図書館を批判した方が経済効果は大きいはずだ。(別に図書館の閉鎖を勧めているわけではありません。念のため)
既存書店・・・販売者中心、消費者無視、経済効果高
古本業者・・・消費者中心、著作者無視、経済効果有
図書館・・・・消費者中心、著作者無視、経済効果無
こういった矛盾を抱えたまま、出版業界が現在の状況を改善することは極めて難しいと思う。ブックオフと協力したとしても、販売の自由度が増さない限り、成功することは難しいだろう。況して、ブックオフの販売を規制する方向に傾けば、事態はさらに悪化することになるだろう。それは出版業界だけでなく、日本経済全体にも悪影響を及ぼすことになる。
出版業界が現在の低迷から脱する手段は、出版業界に市場法則を持ち込むことが大前提であり、市場を無視した方策を採ると取り返しがつかない事態を招く可能性がある。それは市場法則ならぬ自然の法則に逆らったことによる反作用としての結果が現れるというだけのことだ。自然の法則に逆らわず、著作者や消費者のことを念頭に置いた改善策を講じるしか救われる術はないという至極当然のことでもある。改善するべきは、『販売方法』ではなく『矛盾』なのである。
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