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ブックオフとQBハウスのビジネスモデル考

2009101001 3ヶ月程前に、行きつけの郊外型書店が閉店したという記事(→『ジリ貧の発想』に陥った書店のコスト削減策)を書いたばかりだが、先月末にまた別の郊外型書店が急に閉店してしまった。これで、会社帰りに車で立ち寄れる郊外型書店はほぼ全滅となってしまった。ここまで急に書店環境が激変してしまうと1消費者としては困ってしまうが、当の書店側はもっと困っているのだろうと思う。現在の書店を取り巻く状況を以下に列挙してみると、
 
1、不況の影響で本や雑誌を買う人が少なくなっている。
2、国民の活字離れが激しくなっている。
3、便利なネット書店(アマゾンなど)に客が流れている。
4、安価な中古書店(ブックオフなど)に客が流れている。

 この他にももっと多くの細かい事情があるのかもしれないが、もはや現在の既存書店は「先行きが不透明」というような生易しい状態ではなく、「お先が真っ暗」というような状況に近いのかもしれない。私の身の周りで実際に起こった書店の相次ぐ閉店がそのことを物語っている。今後、既存の書店は余程の抜本的な変化でも起こさない限り、経営難に陥っていくだろうことは火を見るより明らかだ。
 
 現在の書店環境の激変(既存書店の淘汰)は一体なにを意味しているのだろうか? なぜこれほどまでに急激に環境が変化してしまったのか? その答えを「不況」「人口減少」「ネット書店の台頭」というキーワードに結び付けることは簡単だが、ここでは少し視点を変えて考えてみたいと思う。旧態依然とした書店の衰退現象は避けることができないとしても、短期間で連鎖的に経営破綻するというような悲惨な結果をなぜ少しでも緩和(ソフトランディング)することができなかったのかを、「市場原理」というものを踏まえて考えてみたい。

 既存書店に対して、ブックオフなどの中古本ショップが台頭してきたことは周知の通りだが、時を同じくして理髪店にも、QBハウスなどの安価な理髪店が現れてきた。この2つのショップは、市場原理否定者からは『既存市場を荒らした価格破壊者』というイメージを持たれている。その思い込みについての反論は以前にも何度か述べた(以下の関連記事参照)が、もう1度、この2社について考えてみよう。

(関連記事)
 ブックオフは文化の破壊者か?
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 実際に両社の経営者に聞いたわけではないが、ブックオフにしても、QBハウスにしても、初めから市場を破壊するために参入してきたわけではないだろう。これらの2社は、需要と供給の間に開いた大きなギャップを発見して、その隙間を埋める形で市場に参入してきたのだろうと思う。
 解り易く言えば、100円の価値しかないものが、500円で売られていれば、差引き400円の間にはビジネスチャンスが有るということだ。500円で販売されているものを300円にして利益が出るのであれば、そこには新たなビジネスが生まれる余地が有るわけだ。書店にしても、理髪店にしても、価格が固定されていた市場であるがゆえにビジネスチャンスが存在した。そのチャンスを目敏く発見し市場に参入したのが、ブックオフやQBハウスだったと言うことができると思う。
 
 そう考えると、“市場に大きな隙間が空いていた”ことが根本的な問題だったということになる。その市場原理から大きく乖離した隙間はなぜ発生したのか? ここに問題の本質が隠されている。その問題点とは、“市場を無視した価格が維持されていた”ことにある。つまり、時代にそぐわない閉鎖的な市場をいつまでも放ったらかしにしていたことが問題だったということである。
 既存の書店や理髪店が市場に発生した隙間を埋めるように自ら業態を変化させていれば、初めからブックオフやQBハウスが市場に参入することもなかったかもしれない。仮に参入したとて、いきなり料金が半額以下になって、既存店が競争力を失い経営破綻に陥るということもなかったはずだ。ある意味で規制に保護されていた既存の書店や理髪店が、市場原理(または消費者)を無視し、長い間、何の努力もしてこなかったことのツケが一気に噴出した結果が、現在の姿であるとも言えるわけだ。
 現在の既存書店の連鎖的な経営破綻や、既存理髪店が窮地に陥っている現状を生んでしまった真の原因は、市場を解放(規制緩和)したことにあるのではなく、実は“市場を統制(または市場原理を無視)していた”ことにある。そう考えた方が理に適っている。
 
 市場の隙間を埋めることによってビジネスが成り立つということは、合理化を可能にすれば利益が生まれビジネスが成り立つということであり、これは言わば、資本主義社会の基本だ。不合理な市場にはビジネスチャンスが転がっている。そのチャンスを他人より早く見つけたものが起業家になるという、ただそれだけのことである。
 時代とともに変化する需要と供給の原理を考えずに、無理矢理、高値で固定されていた市場であるなら、そこに新規ビジネスが生まれることは当たり前のことだ。そのことを「市場の破壊だ!」などと言うのであれば、その人物は資本主義者でもなければ合理主義者でもなく、ただの不合理主義者(=社会主義者)だということになる。
 
 書店がもっと早くから自ら中古本を売り出すサービスを開始していれば? アマゾンに先んじて本のネット販売を大手出版社が進めていれば? 理髪店が、もっと早くから料金の差別化を行い、市場原理に則った商売を開始していれば? そこには、今とは違った社会が生まれていたはずだ。書店や理髪店に代表される連鎖的な経営破綻というハードランディングを招いた諸悪の根源は、需要と供給の原理を無視し続けてきた社会にこそある。あまりにも閉鎖された市場であったことが災いしたとも言える。

 そしてこの構造的な問題は、実は書店や理髪店だけに収まらない。時代にそぐわないことが判っていながら、旧態依然としたシステムをいつまでも引きずり、問題の発生を先送りしていることは他にも山ほどあると思われる。と言うより、日本社会全体がそうなっていると言った方が正解かもしれない。
 産業や省益優先で、個人の生活や利便性を軽視し続けた結果、既存の規制ビジネスはハードランディングした。それは、日本が社会主義国家であったことの証明現象であるとも言える。
 しかしそれは大部分の国民にとって悲観すべきことではないかもしれない。この現象が日本型社会主義の完全消滅の序章を意味しているのであれば、既存の規制ビジネスの崩壊後に待っているものとは、輝かしい自由な社会であるのかもしれないからだ。既存書店や既存理髪店には申し訳ないが、我々はむしろ、この急激な変化を『新たな時代の黎明期』と捉え、歓迎するべきなのかもしれない。

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コメント

その通りかと思います。
実は、大前研一さんが「サラリーマンサバイバル」で同じ事を言っていたりします。1994年に発売した本だったりします。

投稿: ama | 2009年10月12日 (月) 02時50分

本を読む人は大抵電車での通勤や通学の時間を使っています。
人通りが多い事もありますし駅前の書店が残るのは当然でしょう。
駅から遠い書店は集客に安定した流れが無いのですからネットに頼ってもらう方が効率的です。
そして、古い本でもいいという人は古本屋や図書館へ行きます。
これらは経営難だからと言うよりも時代の変化による住み分けでしょう。
売り方や売る物よりも売る場所を考えなければならないほど背景が変わった、という事です。

三ヶ月前の記事でも無茶苦茶言ってますね。
一冊万引きされた分を取り戻すには十冊売れる必要があると聞いた事があります。
一度に十冊二十冊と盗んで行く換金目的の連中もいます。
これでは万引きする奴らの為に働いているようなものなのですから警戒するのは当然です。

自分が不快だから不便だからと勝手な事を言うのはよくないです。

投稿: iga | 2009年10月12日 (月) 07時29分

ama様

 コメント、有り難うございます。

 大前研一氏の本は私もよく読んでいますので、少し影響されているのかもしれませんが、消費者主体で考えれば、結局そういう結論にならざるを得ないということかもしれませんね。

投稿: 管理人 | 2009年10月12日 (月) 17時30分

iga様

 コメント、有り難うございます。

 私はなるべく客観的に考えて記事を書いているつもりでいますが、自分の経験から書いた記事の場合は少々主観的な意見になってしまっている場合もあるかもしれません。当然、その記事の内容の中には反論されるべきところもあるでしょうし、行き過ぎた表現部分もあるかもしれません。しかし、個人の日記(オープンなものですが)として、日頃感じたことを素直に書くというのがブログの良いところだと思っています。
 記事の内容が正しいか間違っているか、あるいは納得されるか反感を持たれるかは各閲覧者の判断に任せるしかありませんが、正当な反論については有り難く参考にさせていただきたいと思っています。

投稿: 管理人 | 2009年10月12日 (月) 17時31分

とても魅力的な記事でした!!
また遊びに来ます!!
ありがとうございます。。

投稿: ビジネスマナー | 2011年10月22日 (土) 23時48分

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