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PB商品から垣間見える日本経済の問題点

2009110301 先月、ディスカウントショップのドン・キホーテが、超安価(690円)なジーンズを発売したことから、PB(プライベート・ブランド)商品というものが、にわかに注目を集めている。
 衣料品の安値販売店としてはユニクロが有名だが、さすがに690円のジーンズには値段では対抗できそうにない。このような価格破壊的な商品が登場すると、通常であれば、価格で競争するか、品質で勝負するしかない。ユニクロの場合、ジーンズが主力商品というわけでもないだろうから、すぐさま危機感を持つ必要性もないだろうが、今後、フリースやジャケットなどに波及するとなると、さすがに無視するわけにもいかなくなるだろう。

 衣料品の生産国は、中国からベトナム、そしてカンボジアに移って行っているらしく、その国の物価(または人件費)に比例して製造コストも安くなっていく。PBブランド躍進の背景には“生産国の移転”というものが存在している。ここで大事なことは、メーカーは企業努力して製造コストを下げたのではなく、コストが安くつく国に工場を移して安価な労働力を利用したということだ。(それも企業努力と呼べるのかもしれないが…)
 
 前置きは短めにして本題に入ろう。先の話から何が言えるのかというと、グローバル経済下では、製造国の移転がいとも容易く可能であるということだ。メーカーは、世界的に見て人件費のべらぼうに高い日本国内に製造拠点を持つ必然性はほとんど無いということである。
 海外の製造メーカーが日本に工場を移転してきたというような話は誰も聞いたことがないと思うが、これは当たり前で、物価も人件費も税金も高い国に工場を移転するような物好きな国は無いということだ。おまけに過剰な規制まで敷かれているのだから、海外の製造メーカーから見れば、「日本は鎖国を行なっているとしか思えない」というのが本音だろうと思う。
 日本人の感性や技術でしか製造できないというものなら話は別だが、マニュアルさえあれば誰にでも製造できるものは、今後、人件費の安い国に移っていくだろうことは考えるまでもないことだろう。
 
 そんな現状にあって、あろうことか日本では「製造業の派遣禁止」を唱う政治家や、それを礼賛している人間が大勢いる。
 製造業の派遣社員の給料は安い(?)と言われているものの、人件費として見れば、中国やベトナム、カンボジアとは比べ物にならないほど高額だ。正社員ベースで見れば中国やベトナムの人件費は日本の10〜20分の1、カンボジアでは20〜30分の1と言われている。派遣社員の人件費が仮に正社員の2分の1だったとしても、全く太刀打ちできないというのは誰が見ても明らかだろう。
 ハッキリと言ってしまえば、日本の大手製造メーカーにとっては日本国内で生産を行なうメリットはほとんどないかもしれない。日本のお家事情(=過剰に保護された正社員の給料は急に下げることができないという事情)で、そのままでは経営していくことができないので、なんとか派遣社員で賄っていたというのが、実際のところだろう。

 このグローバル経済下における日本の製造業問題の重要点は、正社員を全て派遣社員と同じ待遇にしたとしても問題は解決しないということだ。それほどまでに先進国としての日本の物価(人件費)は高くなってしまったということである。
 それを逆に、派遣社員を全て正社員にするという前提で政策が組み立てられているのだから、これはもう無茶苦茶もいいところだ。こんな馬鹿げた政策を本当に実施すれば、日本を出ることを迷っていた企業も「待ってました」と言わんばかりに、製造拠点を海外に移すことになるだろう。そして海外に拠点を移すことができない小資本メーカーは市場から淘汰されるのを待つだけという悲惨なことになりかねない。当然、日本の派遣労働者の働く場所も激減することになり、結果的に、日本の製造業自体が窮地に陥ることになる。
 
 確かに日本国内の正規社員と非正規社員の待遇差(と言うより階級差)は是正すべき大きな問題と言えるだろうが、それ以前に、海外生産国と日本の物価(人件費)の違いも考慮しなければならない。
 「格差」があることが問題だと言うのであれば、海外と日本の格差も無視するわけにはいかないだろう。「海外と日本の格差は問題なくて、日本国内の格差だけが問題だ」と言うのであれば、呆れた国粋主義者と言うしかない。そんなことを本気で言っているような人がいるなら、保守を装ったただの偽善者だと思って間違いない。日本さえ良ければ世界はどうなってもよいなどと言うのでは、ただの利己主義者の御都合論だと言われても仕方がないだろう。
 
 この問題の根本的な解決策は、結局のところ、世界の労働人件費がある程度、平準化されるまで待つしかないと言うことも可能かもしれない。労働における世界の人件費格差が大きく開いてしまったことが根本的な問題であるからだ。日本の中で「格差反対!」「格差は悪!」と叫んでいる人達が、日本の外から見れば、自らも格差を生み出している張本人だということに気付いた時、一体どういう反応をするのだろうか?
 
 このまま『製造業の派遣禁止』などが行われると、日本の労働者の未来は暗いと言わざるを得ないが、それでも日本の製造業にはまだまだ頑張ってもらわなければならない。では、どうすればいいのか?
 まず、政府は企業に対して日本に留まってもらえるような政策を採るべきだろう。それは、規制を無くし、税金を下げることが大前提となる。そしてその政策こそ、海外の製造メーカーを日本に誘致するべき手段と同一のものなのだ。しかし、この国の政治家は全く逆のことを行おうとしている。
 オリンピックを招致することに失敗したのであれば、そのエネルギーを海外企業を誘致することに使うべきだ。税金を納めてくれる企業を誘致するためには、税金を下げるしか方法はない。日本の製造業を日本に留めておく方法も海外の製造メーカーを日本に誘致する方法も同じだということを知るべきだ。

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コメント

いつもありがとうございます。

(例によって拝見して頭に浮かんだことの羅列です)

グローバルな物価や人件費の差。大きく影響しますね。

ただ、これは製品の数量などとは別の話。

例えて言えば
「今月の電気代いくらだった?」 これと
「今月の電気使用量は何Kw?」

この意味合いには違いがあるわけで、一度、各国の物価や為替とかを除いて、使用された資源や労働エネルギーで換算でもすれば、何か見えて来るでしょうか?

その製品やサービスを受けての「幸せ度」で表現する大会とか。(笑)

PB商品の質と値段だけを見れば、競争がまた激化しそうですが、生産地の労働実情までは、通常見えて来ませんね。

安い製品でお互いに幸せが循環しないのなら、地球上での発展性はないでしょう。

そのへんのグローバル化はまだまだということでしょうね。

その点はマスコミにも可能な限り頑張ってもらいたいですね。

投稿: sib | 2009年11月 4日 (水) 21時38分

sib様

毎度、コメント、有り難うございます。

>そのへんのグローバル化はまだまだということでしょうね。

 世界が単一の市場になることをグローバル化とするなら、現代はあまりにも各国間の違いが有り過ぎて様々な問題が表面化しているような状態かもしれませんね。
 果たして本当に理想的な単一市場などができあがるのかどうかは未だ不透明ですが、日本の場合は、グローバル化する上で最も厄介な国の1つかもしれません。

投稿: 管理人 | 2009年11月 4日 (水) 22時21分

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