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「大企業いじめ」と「下請けいじめ」の相関関係とは?

2009120801 先日、テレビを観ていると「大企業いじめ」という言葉が出てきた。
 「大企業の下請けいじめというのはよく耳にするが、政治家の大企業いじめというのはあまり聞かない」という人は多いかもしれない。しかし現在の日本の不況を考える上で「大企業いじめ」というものはある意味「下請けいじめ」以上に重要な問題であると思われるので、今回はこの言葉の意味について少し考えてみたいと思う。

 「下請けいじめ」というのは、大企業(とは限らない)が下請け企業に対して、必要以上に料金を値切ったり、なかなか料金を支払わないというようなことをする行為を指している。これはこれで確かに大きな問題であり、支払うお金が有るにも関わらずこういった卑怯なことを行っている大企業があるのであれば、糾弾して然るべきだろう。
 では、「大企業いじめ」とは何だろうか? 「大企業いじめ」とは簡単に言えば、「優遇されている大企業から法人税をもっと搾り取れ」というものだ。よく左系の政治家やマスコミから発せられる言葉だが、この言葉には大きな矛盾が内包されている。こういった言葉を発する人々は、企業間問題の本質も労働市場における不条理も全く理解できていないことが窺える。その理由を以下に述べよう。 

 まず、「優遇されている大企業から法人税をもっと搾り取れ」というような言葉が出てくる背景には、大企業と中小(下請け)企業の間にある様々な格差問題というものがあるのだろう。《利潤を貪っている大企業から法人税を搾り取らなければならない》というようなマルキスト的な思考(思い込み)から、そういった言葉が発せられているのではないかと思う。
 しかし、大企業と中小企業間にある問題とは、“税金をどれだけ納めているか”という問題ではなくて、大企業がその有利な立場を利用して“マージンを多く取り過ぎている”という意味での問題だ。(これも「下請けいじめ」の範疇に属するのかもしれない)
 
 大企業が法人税を多く納めたところで、その納めた税金がそのまま中小企業や一般市民に回るというわけではない。大企業が法人税を多く納めると大企業の社員の給料は下がる(=格差是正?)と思っているのかもしれないが、それは同時に下請け企業の給料も下がることを意味する。大企業と中小企業は、その待遇に大きな差があるとはいえ、基本的には一蓮托生であるということも考える必要がある。無論、大企業と下請け関係にない(競争関係にある)中小企業の場合は話は別だ。

 では逆に、(利益の出ている)大企業の法人税を引き下げると、下請け企業の収入は上がるのか?ということだが、これは分からない。もし大企業の利益率がアップした分、下請け企業に支払うお金も無条件に増えるというのであれば、大企業の法人税を引き下げる合理的な理由となるかもしれないが、実際のところは分からない。実はその“分からない”ことが問題なのである。
 法人税をどれだけ取ろうが取るまいが、大企業の下請け企業に対する姿勢が変わらないのであれば、いくら法人税を増減したところで無意味だ。(法人税を取れば取るほど、下請けいじめも酷くなる可能性が高いので、法人税はなるべく取らない方が良いかもしれない)
 
 大企業と中小企業の間には同じ仕事を行っていても、それが公平な評価に繋がらないという階級制度のようなものが存在している。そのことは同一労働同一賃金が成立していない社会であることを意味しているが、働いた分を正当に評価するという発想が元から無いのであれば、“儲けた分は全て大企業側が頂戴する”という考えになってしまう可能性があるわけだ。
 もちろん、資本主義社会では元請けである大企業がある程度のマージンを取ることは必要なので、「全くマージンを取ってはいけない」と言うのであれば、それも間違いだ。要は、大企業側が適正なマージンではなく、大幅なマージンを取っている可能性があることが問題なのだ。つまり、法人税を支払う以前(税引き前利益の分配)の問題だということだ。
 …と考えると、やはり法人税は下げる方が良いということになる。法人税として支払うべきお金を下請け企業に回すわけだから、中小(下請け)企業を擁護するのであれば、「大企業の法人税を下げろ」と言う方が筋が通ることになる。
 「下請けいじめ」で被害を被るのは下請け企業のみだが、「大企業いじめ」では双方が被害を被る。そういう意味でも、「大企業いじめ」の方が「下請けいじめ」よりも性質(たち)が悪い。「大企業いじめ」とは、実は「下請けいじめ」をも内包した「日本経済いじめ」になってしまっているとも言えるわけだ。
 
 マスコミ業界の下請けいじめというのは有名で、元請けであるテレビ局などがべらぼうなマージンを取っていることはよく知られた話だ。政治家やマスコミ(?)は、こういった市場法則からかけ離れたノン・ワーキングリッチのような特権階級的な労働者がいることを問題視するべきであり、単に大企業であるという理由だけで、魔女狩りの如く大企業いじめなどを行うべきではないのだ。
 「大企業が富めば、中小企業も富み、一般市民の懐(ふところ)も潤う」というような逆転の発想に転じた方が、社会は遥かに良くなる。そのためには、市場法則からかけ離れた歪んだ労働環境を正常な状態に戻さなければならない。そういった公平な社会にすることに努めることこそが政治家やマスコミの本来の仕事だと思うのだが、どうもこの国の政治家とマスコミは、全く正反対のことを行っているように見える。“公平な社会”ではなく“平等な社会”を創ることしか頭にないのではないか?という疑いを禁じ得ない。努力した人間も努力しない人間も、働く人間も働かない人間も皆平等などというような馬鹿げた社会の構築を本気で目指しているのではないか?と疑問に思う時がある。
 そんな社会は決して目指すべき理想的な社会ではない。そんな社会を目指すと、その先に待っているのは“他人の足を引っ張ることを良し”とする地獄のような社会でしかない。そんな夢も希望もないような社会を構築することだけは御免蒙りたいものだ。

【補足】「ノン・ワーキングリッチ」と「ノーリスク・ノン・ワーキングリッチ」
 ここで注意しなければならないことを補足しておくと、「ノン・ワーキングリッチ」と呼ばれる人にも2種類の人がいるということに注意しよう。働いているように見えない人であることは共通していたとしても、リスクを取っているか取っていないかで見方は変わってくる。リスクを取った大きな投資や事業などで成功した結果としてノン・ワーキングリッチになっているような人まで批判の対象としてはいけない。批判するべき対象は「ノーリスク・ノン・ワーキングリッチ」という、働かず、リスクも取らずにのうのうとタダ飯を食らっているような人間だけでいい。この条件を踏み越えてしまうと、ただの(嫉妬深い)共産主義者になってしまうことをお忘れなく。
 
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コメント

月収10万円の所得層から見ると、不思議でならないのが、(世の中の)どこでお金の循環が悪くなっているのだろうか?という点です。

必ずどこかにあるはずだと思います。それが流れ出すようにならないものか?

最近はそんなことを考えますが、ピントがずれているでしょうか?

また、木材など、国内に資源があっても、換金出来ない(事業化できない)ものも多いですね。

投稿: sib | 2009年12月 9日 (水) 16時07分

sib様

 コメント、有り難うございます。

>必ずどこかにあるはずだと思います。それが流れ出すようにならないものか?

 世界的な投資(投機)マネーなどはジャブジャブに余っていると言われていますし、日本国内にも1000兆円を軽く超える余剰資金が余っています。
 海外の投機マネーは行き場を探して彷徨っているような状態かもしれませんが、日本国内のお金は貯め込むばかりで一向に動く気配がありません。
 余剰資金の10%の100兆円でもまともに動いてくれれば、日本の景況感は直ぐさま改善するでしょうけれど、“投資する”という発想が皆無に近い国民性が景気の回復を邪魔しているという有り様です。
 本来であれば、リスクを取って成功した者が認められるというのがまともな社会の姿だと思いますが、日本の場合はこの逆で、リスクを取って成功しても嫉妬されるだけという雰囲気が漂っています。
 勇気を認めずに嫉妬するようなさもしい社会では、誰もリスクなどを取ろうとは思わなくなっても仕方がない…とは言いたくありませんが、実際にはそうなっていると言わざるを得ません。

投稿: 管理人 | 2009年12月 9日 (水) 22時15分

ありがとうございます。
成功者に嫉妬するというのは、もうないと感じています。(世の中に還元するという行為があれば)

それより富を得たものは、今、投資で新しい技術や企業・人材を育成することに貢献すべきでしょう。

世の中に還元する行為があれば、足を引っ張る人はいないはず。

投稿: sib | 2009年12月13日 (日) 18時47分

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