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『エコカー補助金制度』は利益の先食いか?

2010082301 現在、日本にはエコ政策なるものが2つ実施されている。言わずと知れたことだが、『エコカ−補助金制度(&エコカー減税)』と『家電のエコポイント制度』である。
 エコカー補助金の方は期限切れ前の駆け込み需要のため、既に予算限度額の5837億円に迫る勢いであることから、期限を待たずして制度打ち切りになるらしい。(エコカー減税の方は2012年3月まで継続される)
 一方、家電のエコポイント制度は今年(2010年)一杯で終了予定だが、昨今の不況を鑑みて期限を延長するかどうかの検討に入っているようだ。

 家電のエコポイント制度はひょっとすると延長する可能性があるが、早々に「延長します」などと発表してしまうと、駆け込み需要が減少する可能性があるので、ギリギリ一杯まで待ってから発表するのではないかと思われる。
 「そんなのはズルい」と言う人がいるかもしれないが、政府(各省庁)もただの慈善事業を行っているわけではないので、これは仕方がないだろう。もし、直ぐさま「延長します」などと言う政府なら、それこそ「無能政府」だと呼ばれてしまうことになってしまう。
 なぜそうなってしまうのかと言うと、国民に如何にしてお金を使ってもらうかを考えて実行することが政府の重要な役目であるからだ。目的はもちろん、税収を増加させるためと、消費景気を促すためだ。
 増税路線一辺倒の民主党の場合、そんなことは微塵も考えていないかもしれないが、国民の消費意欲を喚起させる政策を取れないのであれば、それは景気を良くすることもできないということでもあるので、=「無能政府」になってしまうわけだ。

 かくいう私も今年の春に液晶テレビを購入し、エコポイント制度を利用させてもらった。10万円程度の液晶テレビに23000円のエコポイントが付いたので、実質8万円程度で購入できたものの、その後、数ヶ月間で液晶テレビの価格が2万円程度下がったため、結果的にエコポイント制度が無効になってしまった。ちなみに、エコポイントは23000円分の図書カードを申請し、既に20000円分消費した。
 
 確かエコカー補助金制度については、この前に紹介した大前研一氏の著書『民の見えざる手』にも書かれてあったが、まず最初に行ったのがドイツだった。ドイツが大きな成功を収めたのでアメリカと日本が真似をしたそうだが、確かに日本でも車の買い替え需要が発生し、少なからず景気にも影響を与えたはずだ。
 しかし、エコカー補助金制度を「単なる利益の先食いだ」と述べるエコノミストも結構いるようだ。なるほど、確かに単純に考えると、その通りと言えなくもない。数年先に買い替える車を数年間前倒しにして購入しただけだと考えれば、そう思えたとしても不思議ではない。しかし、この意見には単純な見落としがある。その見落としについて少し説明してみようと思う。
 
 例えば、10年に1度、新車に買い換える人がいたとしよう。その人物は通常通りであれば、20年間に2回、車を買い換えることになる。車本体の価格が1台100万円であるとすれば、この人物が車本体に消費する金額は20年間で200万円ということになる。しかし、エコカー補助金制度が実施されたことによって、10年ではなく8年で車を買い換えることになったとすればどうなるだろうか?
 この場合、18年間で200万円消費することになる。もしエコカー減税なるものが10年に1回実施されれば、16年間で200万円ということも有り得る。エコカー補助金制度を利用する人が人生最後の車買い替えであれば、この限りではないが、今後も買い換える予定のある人であれば、「利益の先食い」にはならない。数十年単位の消費量で考えれば、エコカー補助金制度は非常に有効な景気政策だと言えるのである。

 景気というものは、何も自動車業界だけが動かしているわけではない。国民全体が全市場でどれだけの消費を行うかによって景気の良し悪しが決まるわけだから、来年の車の販売台数が減少することをもって「景気が悪くなる」と言うのでは、あまりに浅はかな景気の先読みだと言える。
 「自動車会社の売上が落ちるため景気に及ぼす影響は無視できない」という短絡的な意見もよく耳にするが、そもそも自動車会社の販売市場は日本だけではない。日本のエコカー補助金制度が終了したとしても、全世界の車の販売台数が揃って急減するわけではないので、余計なお世話だろう。こういった景気の悪い予測ばかり並べ立てる悲観論者の存在こそが、不景気を助長しているとも言える。
 
 家電と車以外に現在考えられるエコ政策と言えば、住宅関係ぐらいのものかもしれないが、政府は今後も消費景気を促すためにも、いろいろな策を講ずる必要がある。
 エコ政策自体が本当に「エコ」になっているのかどうかは疑問ではあるが、たとえ嘘であったとしても、景気を良くするという至上命題のためには、必要悪としてのエコ政策は今後とも必要だろう。国民の多くが「お金を使わないことには景気は良くならない」という現実を理解して、解決策(お金を余分に使うこと)を自ら実践できるのであれば話は別だが…。

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コメント

貧者にはエコカー補助金やエコポイントの対象となる高額の商品を買う経済的な余裕が無い。
エコカー補助金などの財源には貧者が食料品などの生活必需品を購入して払った消費税が含まれる。
つまり、エコカー補助金やエコポイントは貧者から富者への所得移転とも見なすことができる。
高速道路無料化などの数々のバラマキの財源確保のために、民主党は消費税を10%に増税して富者のために貧者を苦しめる。

投稿: 左巻き菅 | 2010年8月24日 (火) 18時47分

エコ制度についてドイツの真似であることは然りです。イタリアで行なっているような「官製バーゲンセール」のほうが末端にまで恩恵がいきわたったと思うのですが、そんなこと日本のメディアは知ってて報道しないし、国民も勉強していません。「ギリシアソブリン危機」だって単なる投機筋の仕掛けなのに「国家破綻」と短絡的に考えるようではいけません。
エコ制度のうちよい順に、「住宅>家電>自動車」だと思います。住宅は大きな新規需要が見込まれますし究極の耐久消費財です。家電は逆にきめ細かく稼ぐ。一番悪いのは自動車で、需要の前倒しになるだけでなく、メーカーはこれまでの「円安バブル」で内部留保を溜め込んでいるのが現実ですから米国のような「補助」は不用です。「若者の車離れ」から、今後日本の自動車産業が衰退に向かうのは間違い有りません。競争力で中国に負けています。

投稿: 小さな愛犬家 | 2010年8月25日 (水) 06時08分

小さな愛犬家様

コメント、有り難うございます。

>「若者の車離れ」から、今後日本の自動車産業が衰退に向かうのは間違い有りません。競争力で中国に負けています。

 若者が車離れしているのは経済的な影響も考えられますが、少子化の影響で親と同居していて、なおかつ兄弟がいない場合などは、わざわざ自分の車を買う必要がないという理由も考えられます。言わば、若者のパラサイトシングル化も1つの原因でしょうね。
 日本の自動車会社がこのまま何の変化もせずに指を食わえたままであれば、衰退産業になる可能性がありますが、未だ技術力では中国に負けていないわけですから、その技術を生かして新たな商品を創り出すことができれば、まだまだ発展する可能性はあると思います。例えば、トヨタやホンダが住宅市場にでも参入すれば面白くなるかもしれません。お役人の規制が邪魔しなければ(=自由な市場が開かれていれば)という条件が付いてまわりますが。

投稿: 管理人 | 2010年8月25日 (水) 20時34分

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