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『有給休暇取得率増加』は消費刺激を促すか?

2010101701 先日、厚生労働省の就労条件総合調査発表が行われた。その発表によると、昨年1年間の正社員の年次有給休暇取得率は47.1%であったらしく、前年比で0.3ポイント低下したらしい。
 政府の新成長戦略には、『余暇増大によって消費刺激を促す』という目標があるらしく、2020年までには有給休暇取得率を70%まで引き上げるつもりであるらしい。
 
 日本企業の年次有給休暇日数は大体20日間程度が平均だと思う。そう考えると、有給休暇取得率が47%というのは、年間で9日間は有給休暇を取得していることになる。はたしてこの日数は少ないと言えるのだろうか?
 
 私の場合、有給休暇取得日数は年間でせいぜい2日間程度であり、場合によっては全く取得しない年もある。おまけに完全週休2日制でもないので、土曜日も半分程は出勤している。そんな人間から観れば、年間で10日間近くも有給休暇が取得できるだけでも羨ましく感じてしまう。
 無論、「羨ましい」と思うのは仕事が有るという前提で有給が取得できる場合の話で、仕事が無くて仕方なく有給を取得しているような場合は、羨ましいとは思わない。
 現在は、仕事量が減少している企業も結構あるだろうから、会社を休んでも仕事に影響しない(時間が余っている)という理由で有給休暇を取得している人も多いのではないかと思う。そう考えると、昨年よりも有給休暇の取得日数が減少しているということは、逆に仕事量が少し増加しているとも言えるわけなので、必ずしも悲観視することではないのかもしれない。
 
 普通のサラリーマンが有給休暇を取得する時というのは、慶弔や病気、そしてたまに行く旅行ぐらいのもので、単に「休みたいから」という理由ではなかなか取得することができない。元々、日本企業の有給休暇日数などは有名無実な制度であり、全て取得するために用意されたものではないことは暗黙の了解事項である。
 会社が率先して「有給休暇を取得するように」とでも言わない限り、極力、有給休暇は消化しないように努めるのが日本の一般的なサラリーマンの特徴でもある。それが良いことなのか悪いことなのかはともかくとして、有給を全て取得することは“あまり褒められたことではない”という認識が一般的だと思う。
 「有給を取得するように」などという台詞は、公務員の世界だけで通用する台詞であると思われるし、実際に公務員の世界では、有給を全て取得することが奨励されている。まるで、予算を全て使い切ることが良いことだとする役所の掟をそのまま有給休暇日数にも当て嵌めたかのような話である。
 
 有給休暇を誰にも気兼ねなくいつでも取得できるということは、その人物がいつ休暇を取得しても誰も困らないということの裏返しでもある。日本では、必要のない有給休暇を取得することは、「仕事が忙しくない」と思われることに直結するため、勤務評価を気にするサラリーマンは、やる気をアピールするためにも、無駄な有給は極力取得しない。仕事が無くても仕事の有る振りをし、無駄な会議を延々と行うのが日本企業の悪い特徴でもある。
 なんにせよ、日本のサラリーマン社会では、有給を取得することはあまり良いことだとは思われておらず、どちらかと言えば、後ろめたいことだと思われているということである。

 政府が、現在の有給休暇取得率47%(9日間)を70%(14日間)にしたとして、本当に消費刺激策になるのかは甚だ疑問ではある。単に休日が増えたからといって消費が増えると考えるのは、あまりにも短絡的(楽観的)過ぎるのではないかと思う。
 消費者が消費を増やそうと考えるのは、仕事が永続的に有るという予測が立つ場合であって、休日が増えることではない。将来的に継続的に収入が見込める場合に限り、消費を促すことができる。
 そもそも休日が増えるといっても、仕事がないために休日が増える場合もあり、仕事も休日も同時に増えるようなことは、一般的な労働社会(サラリーマン社会)では、まず有り得ない。有り余るほどの仕事を抱えている人間が、休日も増やせるかどうかを考えれば、答えは明白である。

 『仕事の忙しい人間は休日が減り、仕事の暇な人間は休日が増える』というのが、常識的な社会の姿である。その常識が通用しないのは、労働市場法則外にある公務員社会だけである。公務員の場合は、『仕事の量に関係なく休日が増える』、『仕事の量に関係なく収入が増える』ということが有り得る。そして、何よりもまず、『仕事の量に関係なく職場が永続する』ため、消費量を人為的にコントロールすることができる。
 つまり、政府が言うところの『余暇増大によって消費刺激を促す』という目標は、公務員の世界でしか達成できないということである。民間の世界でそれを達成するためには、全く手段が異なる。その手段とは、『休日数を増やす』ことではなく『仕事量を増やす』ことだ。需要を増加させない限り、真の消費景気を促すことはできないということである。
 「1に雇用、2に雇用、3に雇用」と叫んでいた菅総理にも同じことが言える。雇用を増加させるためには、まず需要(仕事量)の増加こそが必要だ。しかし、菅総理は需要のことなど全く頭になく、「雇用」という目的を手段と履き違えてしまっている。
 手段と目的が完全に逆さまになっている現政権に消費刺激を促す(=景気を良くする)ことを期待しても無駄かもしれない。

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