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世間知らずのお役人を大量生産するシステム

2010102201 橋下 徹知事による「公務員の育休」批判が注目を集めている。なんでも、「お役所の職員が率先して育児休暇を取得することには反対」だと述べたらしい。
 実際に、大阪府箕面市の倉田市長は2週間、広島県の湯崎知事も1ヶ月間の育児休暇を取得する予定らしく、広島県の湯崎知事は、橋下発言に対して「大きなお世話だ」と述べているそうだ。
 
 しかし、橋下知事は理由もなく単なる感情論で「育休」を批判しているわけではなく、きちんとした理由も述べている。

 「育休が取れる社会には賛成だが、首長の育休には反対
 「首長が育休を取ったからといって、世間が育休を取れる環境になるわけではない。あまりにも世間を知らなさすぎる

 上記は橋下知事の台詞だが、これはもっともな正論だと思う。こういった正論に対して「大きなお世話だ」と言える図太い神経をこそ疑うべきだと思う。
 
 橋下知事の言う通り、今時、男性が育児休暇などを取得できるような会社はごく稀である。もちろん、育児休暇を取得できないことが良いことだというわけではない。理想としては夫婦揃って育児休暇を取得できる社会の方が望ましいことは言うまでもない。しかし、育児休暇を取得せず(または結婚もぜず、子供も産まず)に必死で働いている一般のサラリーマンの現状を無視して、そのサラリーマン達の税金で飯を食っている(言葉を変えれば、サラリーマンに雇われている)公務員が率先して育児休暇を取得するというのは、本来であれば筋が通らない。
 
 湯崎氏は「育児休暇の取得を自ら実践することで男性が育休を取得しやすい環境づくりに取り組む」などと述べているそうだが、筋違いも甚だしいと言える。
 これは橋下知事も述べている通り、順序が逆さまである。公務員が育児休暇の取得を実践したところで、ほとんど全ての民間企業のサラリーマンは、そんな真似はできないからだ。高度経済成長期であればともかく、現代のような競争の厳しい労働環境下で暢気に育児休暇などを取得していれば、その人物は会社にいらなくなるか、その会社が潰れるようなことも充分に有り得る。一般的な民間企業のサラリーマンが有給休暇すらまともに取得できない時代に、有給休暇どころか育児休暇まで率先して取得するというのだから、まるで現実味のない話である。

 湯崎氏は元々は通産省の官僚であるらしいが、アッカネットワークスの創業者でもあるらしいので、生粋のお役人ではないため、民間企業人としての立場から意見を述べていたのかもしれない。しかし、もしそうだったとしても、もう少し言葉を選ぶべきだろうと思う。「大きなお世話だ」などという感情丸出しのお役人台詞は「知事」という立場的には控えるべきであったのではないかと思う。
 一方、箕面市の倉田市長の方は、東大を卒業後、郵政省、総務省、そして箕面市役所に勤務したというだけあって、生粋のお役人であるらしい。
 
 さて、本題に入ろう。今回のテーマはズバリ、『なぜ、お役人には世間知らずが多いのか?』である。
 今回の橋下知事も述べているが、この「世間知らず」という言葉はもう少し具体的に言うなら、「民間知らず」とも言い換えられる。学校を卒業後、そのままお役所に入省するような人物は、当然のことながら民間企業を知らないし、知らなくて当たり前だ。実はこの当たり前のことが大きな問題なのである。
 
 現在、国家公務員になるためには、難解な国家公務員試験や面接試験に合格する必要があるが、私はこれだけでは不十分だと思う。いや、むしろ、難解な試験などは必要なく、もっと実社会を学習するという実地訓練のようなものに変更した方が良いのではないかと思う。
 例えば、民間企業に最低でも5年から10年は勤務するというようなキャリアパス的なものに変更した方が良いと思う。なぜそう思えるのかというと、実際に民間企業に勤めない限り、経済やビジネス社会の実態、需要と供給の原理などが肌で理解できないからである。頭だけで経済原理などを理解しても、ほとんど何の役にも立たないことは、現在の官僚や政治家達がその身をもって証明してくれている。
 官僚や政治家達がトンチンカンな政策ばかり実施しているように見えるのは、彼らが無能だからではなく、世間を知らないからだとも言える。いかに頭の回転が速くとも、問題の本質自体を理解できていなければ、間違った政策ばかりが出てくるのは至極当然の帰結だ。お役人が「世間知らず」となる根本的は原因は、一言で言うなら「原価意識の欠如」である。『虎穴に入らずんば虎児を得ず』という諺を用いて言い換えれば、『民間企業に入らずんば原価意識を得ず』ということである。
 
 自らが民間企業(できれば中小企業)に勤めて、サラリーマン社会の不条理というものを肌で感じとった人間こそが公務員になるべきであり、また、そういった人物でしか実の有る政策は実施できないと思う。市場原理の洗礼を受けた人間にしか、実の有る経済政策などはできないということである。お金の苦労の「く」の字も知らない政治家や、左翼運動に取り付かれたようなヒーロー気取りの政治家からは、真っ当な政策など出てくるはずがないというのは、当たり前の話である。
 
 この“当たり前”の問題を追及していくと、現在の公務員になるための資格条件が、あまりにも時代に合致していないことが見えてくる。公務員試験自体が時代とミスマッチであるために世間知らずのお役人が大量生産されていき、入省時の理想や志とは裏腹に日本経済を泥沼化していくことに貢献していくようになる。
 これは当のお役人にとっても悪夢かもしれないが、一般人にとっては地獄を意味する。“悪夢”と“地獄”の違いは、現実的に被害を被るかどうかという違いである。公務員は日本経済がダメージを受けても傷付かないが、一般人は実際に傷付くことになる。無論、これは比喩であり、経済的に(給料として)被害を被るという意味である。
 
 公務員となるべき人間は、難解なペーパーテストに合格することよりも、平凡な労働環境の中に身を置くことの方が重要であり、そういった社会が実現できれば、公務員の意識改革にも繋がり、良い事づくめのようにも思える。しかし、現代の日本は、そういった融通の利いた変革ができなくなってしまっている。なぜか? その理由も同じく、世間知らずのお役人を大量生産するシステムが維持されたままだからである。

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コメント

最初の就職先で販売店に配属されて、副店長代行を何年かやっていた僕からすれば、民間企業における休暇というのは、業種や役職や企業内の制度等、様々な要因によって決まるものではないかと気付きます。
その会社では、土日祭日、年末年始、GWやお盆に休んだことが、ほとんどありません。
日曜休んだのは、日曜が定休の支店に助っ人として配属された期間くらいですね。
でも、良いですよ、平日の休みは。
どこ行ってもすいてるし、映画館なんてガラガラだし。

さて、民間が多様であることは、弁護士先生も解っているはずです。
あの人の休暇のとり方は悪であり、それをしない私は善であると言って自己アピールしてるように見えるんで、余計なお世話だと言われて当然でしょう。
制度としてある休暇をどうとっても、そんなのは自由でしょ。
これが正しいのだから、画一的に皆そうしろというのは押し付けなので、環境つくりがどうのこうの言うのも余計なお世話です。

投稿: クロコダイルPOP | 2010年10月28日 (木) 23時47分

クロコダイルPOP様

>制度としてある休暇をどうとっても、そんなのは自由でしょ。

 今回の橋下知事の意見は、休暇制度の認識自体が公務員と民間では違うということを述べているわけです。与えられた制度を全て利用することが前提の公務員と、社会的な背景によって制度自体を満足に利用できなくなっている民間を同じ土俵の上で考えても無意味だと言いたかったのでしょう。

>環境つくりがどうのこうの言うのも余計なお世話です。

 「男性が育休を取得しやすい環境づくりに取り組む」などという意見を公然と述べること自体も、大きなお世話(いらぬお節介)です。
 消費を促すためには、休日を増やすことよりも仕事(収入)を増やすことの方が重要です。もし、休日が増えることによって消費を促すことができるのであれば、採るべき手段は“休暇制度の利用”ではなく“休日の増加”です。いっそのこと祝日を増やせば、民間でも休める可能性が大きくなりますので、少しは公平だと言えるかもしれません。

投稿: 管理人 | 2010年10月29日 (金) 21時10分

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