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『資本主義の精神』の理解のススメ

2010100201 先日、経済・社会学者として有名な小室直樹氏が亡くなったとの報道があり、急な知らせに経済界ではどよめきが起こった。しかし、ネットニュースで一報が報じられた時には既に死後20日以上が経過しており、その間、新聞・テレビでは全く報道されなかったことが疑問視されている。親族が敢えて情報を漏らさなかったと考えられなくもないが、小室氏ほどの著名人の葬儀が死後20日間も報道されなかったというのは、どうも引っ掛かる。

 小室直樹と言えば、博覧強記の碩学評論家として知る人ぞ知る有名人であり、何を隠そう、私も彼の1ファンであり、書棚の上段には小室本がズラッと並んでいる。彼の著書からは実にいろんなヒントを頂いた。よく、「天才と変人は紙一重」と言われることがあるが、まさしく小室氏はその言葉通りの人物であったことはよく知られている。
 小室氏はソビエト連邦の崩壊を10年前から学術的に予言していたことでも有名な人物だが、テレビ出演をキッカケとして「変人」とのレッテルを貼られてしまったために、その後は表舞台には出て来(れ)なくなり、野の立場から日本経済(特に官僚制)の問題点を鋭く指摘してきたことでも有名な人物だ。その舌鋒鋭く、歯に衣を着せないユーモアな語り口調は多くの読書人を魅了した。

 建前しか論じない日本のマスメディア界にあって、淡々と遠慮なく本音を述べてしまう小室直樹という存在は、ある意味で脅威であり危険な存在であったのかもしれない。マルクスの思想に冒された左翼系言論人が跳梁跋扈している日本の言論界にあって、小室直樹という存在は、表舞台には出て欲しくない代表格であったのかもしれない。おそらく小室氏は「変人」というレッテルを貼られていなかったとしても日本のマスメディアからは無視されていたのだろうと思う。本音を述べられては困る勢力にとっては、彼が変人であったことは、これ幸いであったのかもしれない。彼の訃報が大手新聞・テレビメディアでほとんど報道されなかったことは、奇しくも、日本のマスメディアが左翼に乗っ取られていることを証明しているかのようでもある。

 小室氏の研究テーマは多岐にわたるが、中でもマックス・ウェーバー研究が有名だ。彼のような天才でもウェーバー理論を理解するには10年を要したらしい。しかし彼がその理論を解り易く開陳してくれたおかげで、そのエッセンスは広く一般にも知られるようになった。私が思うに、小室氏の1番の功績は“資本主義の精神”というものを世間一般に理解できる形で明文化したことにあるのではないかと思う。
 一流の学者が10年間も研究しなければ理解できない理論でも、その研究成果としての数冊の書物を読むだけで、誰もがある程度のエッセンスを理解することができる。これは、実に凄いことである。10年間かかっても理解できないような難解な理論を数日間の読書である程度理解できるのであれば、それは非常な時間の節約であり、人生の密度を大きく変えることにも繋がる。読書の効用とは本来そういうものであるが、そのことを教えてくれた1人が小室直樹だったという読書人は意外に多いのではないかと思う。
 
 鷲田小彌太氏の新書『昭和の思想家67人』『日本を創った思想家たち』のどちらにも「小室直樹」という名前が入っていることからも、彼が日本の思想界および経済界に与えた影響は計り知れないものがある。それだけの功績のあった人物が日本の学会では正当に評価されないのだから、如何にこの国の学会が閉鎖的なものかが窺える。本当に評価されなければいけない学者が日の目を見ずに埋もれてしまうというのはなんとも嘆かわしい。
 おそらく彼の功績は、その他多くの歴史上の天才がそうであったように、彼の死後である今後、評価されていくのだろうと思う。
 
 現代の日本は“資本主義の精神”を理解できない左翼政党が日本経済の舵を握っており、元々、社会主義に汚染された日本に更なる社会主義の害悪を広めようとしている。そんな先行きの見えない国であるからこそ、今こそ国民は“資本主義の精神”を学ばなければならない。そのための恰好の教材を生涯をかけて残してくれたことこそが小室氏の偉業でもある。
 価値のある思想が裏に隠され、価値のほとんどない思想が表に出ているという現在の日本の悪しき状況を本来の姿に戻すことができれば、あるいは日本は長年の不況から脱するヒントを得ることができるかもしれない。

 小室氏の著書『経済学のエッセンス』にはこう書かれている。「実は経済学こそが、この不況を克服するための道しるべであるということに、エコノミストも国民も気付いていない。一億総エコノミストを実現することが、不況克服への近道だ」と。
 不況から脱出する手段とは、決してお役人に経済を任せることではなく、個人が経済を理解することが1番の近道と成り得るのだ。それが小室氏の言いたかったことなのだろうと思う。

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皆様、こんばんは。 ロベルト・ジーコ・ロッシです。 政治の本質 緊急特別版です。 今日は、皆様に悲しいお知らせを告げなければ、な... [続きを読む]

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