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いじめによる自殺を無くす唯一の方法

2010110301 群馬の市立小学校で起きた女子生徒自殺事件で、またもや“いじめの有無”が問題となっている。担任教師は「いじめは有った」と認めているが、学校側は「いじめは無かった」と説明していたらしい。
 実際のところは、どちらが正しいのか定かではないが、おそらく、学校側が自己保身のために誤魔化していたのだろうと思われる。まさか、本当にいじめがなければ担任教師も「いじめが有った」などとは言わないだろう。そんな嘘をついても担任教師には何のメリットも無いわけだから、いじめは有ったと考えて間違いないだろう。

 教育委員会というのは、根本的に“いじめは無い方が望ましい”という前提で物事を考える事勿れ主義組織であるため、それに準じる教職員達も、同じような思考に染まっているようだ。
 《生徒達は何事も問題を起こさずに真面目に学校規則に従い、真面目に勉強する従順な子供達》というような社会主義的な理想論に染まった組織の中では、陰惨ないじめを見て見ぬ振りをし、また、そうすることが当然だというような誤った価値観がその場の空気を支配することになる。それは、建前のみが優先される正義の無い世界であり、実際にいじめに遭っている生徒からすれば「地獄」である。現代の学校組織は、真面目で優秀な人間や、特別な才能を持った人間、あるいは、少し人とは違った個性的な人間を自動的に排斥するようなシステムが出来上がってしまっている。

 ということで、今回は現代日本の「いじめ問題」にスポットライトを当ててみたいと思う。毎年3万人と言われる自殺者の中には、当然のことながら、いじめを苦に自殺する何の罪もない真面目な生徒も多く含まれている。この自殺の原因たる“いじめ”を無くす(減少させる)ためにはどうすればいいのだろうか? 実はこの問いに対する答えを用意するのは簡単である。しかし、政府や教育関係機関からその解答を聞き出すことは、おそらく不可能だろうと思われるので、この場を借りて1つの解答を述べてみたいと思う。(実現は不可能に近いが…)
 
 その前にまず、いじめが発生するメカニズムを考えることにしよう。この日本社会の中で最もいじめが多く発生する所はどこだろうか? 「学校」? 違う。では「職場」? 違う。正解は「刑務所」である。
 評論家の渡部昇一氏の書籍にも書かれていたことだが、いじめが最も顕著なのが、刑務所の中であり、その理由とはズバリ「逃げ場がない」ということである。いじめが発生する所というのは、大抵が「逃げ場がない空間」だ。その空間とは、刑務所のように必ずしも物理的な空間を意味しない。たとえ物理的な境界が無かったとしても、小中学生の認識レベルでは、精神的な境界が出来上がってしまうことがある。「逃げ場がない空間」とは、そういった目に見えない精神的な袋小路をも内包している。

 これを読んでいるあなたも経験がおありだと思うが、学校に通う小中学生(の頃)というのは、まだ世の中を知らず視野が狭いということもあって、自分が通っている学校が、社会の全てだと錯覚してしまう傾向がある。自分の通っている学校を辞めても別の学校に行くことができると考えることができたとしても、学校自体に行くことを辞めようとは普通は思わない。頭の良い生徒ほど《学校に通わないと自分の将来が無くなる》とまで考えている。それが、大抵の小中学生の認識だろうと思う。
 《自分の住む世界がそこにしかない》と思っている生徒が、その世界で除け者にされ、暴力や嫌がらせなどを受け続けると、その生徒にとって、その世界(学校)はまさに逃げ場のない「地獄」と化してしまう。いじめられる度に学校を辞めて他の学校に行くなどということは、現在の学校制度の中ではできない。私立学校であれば可能かもしれないが、親の会社の都合もあるだろうし、物理的な通学距離などの関係から、そうそう何度も学校を変えることはできない。結局、現代の義務教育制度では、小中学生はどこかの学校に通わなければ、一般的な進学や就職ができなくなってしまうという、ある種、逃げ場のない刑務所のような教育環境が整備されてしまっていると言えるわけである。それが学校でいじめが絶えない1つの大きな理由である。
 
 いじめられっ子や、個性の強過ぎる生徒にとって、現在の義務教育制度は、おそらく有り難みのない制度なのだろうと思う。特に公立の小中学校などは、『平等教育』を旨としているので、平均的な生徒を基準に考えるようなところがあり、あまりにも優れた生徒や劣った生徒は、浮いた存在となり、いじめの対象となってしまうようなところがある。『平等教育』を行っていることによって、皮肉にも人を差別する環境が出来上がってしまっているわけだ。これこそが個性を認めない日本の『平等教育』の悪しき弊害である。
 
 いじめを苦に自殺する生徒が自殺せずに済む方法とは何だろうか? 答えは至って簡単だ。そう、学校を辞めることだ。しかし、学校を辞めるということは、プライド以前に、《自分の人生を棒に振る》というような錯覚をその生徒に与えることになる。その逃げ場のない苦しみが、自殺を引き起こす原因となっているのであれば、学校を辞めたとしても、別の手段(家庭内教育や自力学習)で進学や就職ができるような社会であれば何の問題もないわけだ。学校に行っていじめられて自殺するぐらいなら、自宅で自力で勉強することなど、それほど難しいことではないだろう。大体、小中学生の授業程度なら、わざわざ学校に行かずとも自力で学習しても充分に追いつけると思う。要するに、学校に行かずとも、自分で勉強して進学できるような自由な(逃げ場のある)教育環境が用意されていれば、いじめを苦に自殺するような生徒は誰もいなくなるのである。
 
 こう言うと、「義務教育は集団生活をするところに意義がある」というような反論が返ってくるかもしれない。しかし、世の中にはどうしても集団に交わることができないタイプの人間というものも存在している。そういったタイプの人間を無理矢理に集団生活の場に馴染ませるというのも少し問題があるのかもしれない。
 公立の小中学校の場合は、勉強のできる人間もできない人間も、勉強をしたいと思っている人間も思っていない人間も、全て同じクラスの空間で同一の教育を受けることになるが、こういった全体主義的な教育にも、やはりどこか無理があるのだろうと思う。勉強したいと思っている人間と、勉強したくないと思っている人間を同じ空間で教育すると、どうしても大きな個人差が生まれてしまう。平等教育などと言っていても、やる気の有無によって個人の学力差が生まれるのは当たり前のことである。

 義務教育を否定するつもりはないが、教育というものは、本来もっと自由度の高いものであったはずである。そもそも、国民の三大義務の1つである『子供に教育を受けさせる義務』とは、必ずしも“学校に行かせる義務”という意味ではない。子供はどのような環境に置かれたとしても、“教育を受ける権利が有る”ということである。
 義務教育自体が自殺者を生んでいるというような皮肉な事実を受け入れたくないという人もいるかもしれないが、「義務教育は素晴らしい」という台詞を吐く前に、まず窮屈な教育環境が原因となり自殺した生徒の苦しみや無念をよく考えてみることをオススメする。
 本当に生徒の自殺を防止する方法は、実は単純なところに答えがある。大人の都合でそういった窮屈な教育制度を見直すことができずにいることが、何の罪もない子供の命を奪うという悲劇を作り出しているのである。

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コメント

はじめまして。(*^-^)

気になっていた事件なのでコメ書きました。

記事の中では「集団になじめない人が苦労する」とありますが、現代の学校いじめでは友達が急に加害者に加わることもしばしばありますよね。

学校や担任が事なかれ主義で、教育制度が窮屈だというのは一理あると思いますが、この窮屈さは今に始まったわけじゃないのにいじめが増えてるのはなぜだと思いますか?

私は、すでに崩壊した担任制度をどうにかすべきだと思っています。先生が子供に畏怖される存在ではなくなった以上、一人の担任に何でも任せることが有害無益です。ブログ主さんが書いているように、クラス=閉ざされた空間がいじめを生んでいるという理屈にも賛成なので、科目ごとにクラス移動させるか、徹底して10人位の少人数クラスを作るのが良いと思っています。

投稿: 通りすがって | 2010年11月 9日 (火) 21時53分

通りすがって様

 コメント、有り難うございます。

>先生が子供に畏怖される存在ではなくなった以上、一人の担任に何でも任せることが有害無益です。

 なるほど、大学のような教育体制にした方がましだということですか。大学の授業形態は一言で言えば「自由」なので、いじめ問題が発生する可能性が低いことは確かですね。

>クラス=閉ざされた空間がいじめを生んでいるという理屈にも賛成なので、

 特に「クラス」という空間に拘ったわけではないのですが、確かにそれも1つの理由かもしれません。
私が述べているのは「クラス」というよりも「学校」という縛りです。もっと言えば、日本社会の空気のようなものです。《なにがなんでも学校に行かなければ自分の将来が見えなくなる》というような不自由な圧迫感が全ての元凶になっているということが言いたかったわけです。

投稿: 管理人 | 2010年11月 9日 (火) 22時23分

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