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交通費無料ビジネスの台頭

2010120401 今年の11月からアマゾンが商品配送料を完全無料化したことは周知の通りで、これまでの「最低1500円以上の商品を購入しなければ送料無料にならない」というネット通販ビジネスに新たな新風を巻き起こしたことは記憶に新しい。このアマゾンの新ビジネスモデルは文字通り「送料無料ビジネス」と呼べるものだが、実は11月にはもう1つの新しいビジネスモデルが生まれている。それは、CCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)、通称TSUTAYAの「TSUTAYA郵便返却」サービスというものだ。
 
 私は個人的に、アマゾンの消費者受けする最大の理由は“商品を買いに行く手間が省ける”ことにあると思っている。私自身、実際に買い物に行く手間が省けて大いに助かっているのでそう思えるのだが、毎日、朝から晩まで忙しく働いている人間にとっては、買い物に出かけることが非常に面倒…と言うより、実際に買い物に行く時間がほとんど無いため、必然的にアマゾンに頼らなければならなくなってしまう。
 「送料無料」と聞くと、ショップからの配送料が無料となるので、お得だと思いがちだが、実は「送料無料」には、消費者が買い物に行くための交通費まで無料になるという隠れたメリットがある。そして買い物に行く時間(人件費)も無料となるため、時間の無い消費者にとっては、これほど有り難いサービスは無いとも言えるわけだ。
 もちろん、買い物するショップが歩いて行けるほど近所にあるというなら話は別だが、その場合であっても、時間(人件費)がかかることに違いはない。
 
 さて、話をTSUTAYAに戻そう。私もレンタルはよく利用するので、レンタルの難点というものは以前から気になっていた。その難点とは誰もが思うであろう“返却しに行くのが面倒”というものだ。例えば、金曜日の会社帰りに新作映画のDVDをレンタルしたとしても、通常は『1泊2日』か『2泊3日』しか選択できない。わざわざ休日にレンタル店まで出かけて返却するのは誰が考えても面倒なので、レンタルする気はあるのだがレンタルできないというジレンマが存在していた。これは当のレンタルショップにとっても、お客を失っているという意味で大きな損失を齎していたはずだ。
 
 会社帰りの金曜日にDVDをレンタルしたとして、「返却したい希望日はいつですか?」という消費者アンケートをとった場合、おそらく圧倒的多数を占めるのは「来週の月曜日(同じく会社帰り)」という結果になるはずだが、そういった消費者の要望に添ったサービスがなぜかこれまで存在しなかった。たまに3泊4日レンタルというものも見かけるが、新作ではなく準新作に限定されているので、あまり実用的とは言えなかった。
 少し前には、使い捨て(48時間だけ視聴することができる)の映画DVD(通称:48DVD)がコンビニで販売されていたことがあったが、これも返却する手間が省けるとはいえ、価格的な問題がネックとなり世間一般には浸透しなかった。

 ということで、レンタル利用者の要望に応えるべく、新たに登場したのが「TSUTAYA郵便返却」サービスだ。このサービスは、全国のTSUTAYAショップでレンタルしたDVDやCDを郵便ポストに返却可能としたものだが、今まで有りそうで無かったサービス(と言うより商売)だと言える。これまでにも、「ネットで借りて自宅に届きポストへ返却」というDMM・ゲオ・TSUTAYAの三つ巴のネットレンタルサービスというものは有ったが、実際のレンタルショップでレンタルしたDVDをポストへ返却というサービスは無かった。
 
 このサービスを利用するためには、100円の利用料金が加算される。ポスト返却用のパッケージにはDVDが6本まで入るらしいので、1度に複数本レンタルする人にとっては非常に有効なサービスだと言えるだろう。そのサービスを利用するために、敢えて複数本レンタルする人も増えるのではないかと思われる。
 全国1000店舗以上もあるツタヤならではのサービスとも言えるが、個人的には非常に期待も持てるサービス(商売)だと思う。
 
 レンタル料金的にはゲオに負けていたツタヤだが、このサービスが付加されれば、多少の料金差はカバーできる可能性がある。レンタル利用における交通費というものは意外に大きなウエイトを占める。例えば、100円でレンタルしたDVDであったとしても、車でショップまで往復すれば、その距離によっては、レンタル料金の数倍の交通費がかかってしまう。そういった理由もあって、ゲオの100円レンタルは消費者(私も含む)に《複数本レンタルしなければ損だ》という合理的思考を促す契機を与えることに繋がり、大きな成功を収めた。それが意図した結果であったのか、それとも意図しなかった幸運であったのかは知らないが、消費者心理を上手く利用できたことが、商売成功の秘訣だったと言える。今回のTSUTAYAの新サービスも消費者心理を上手くとらえており、成功する可能性が非常に高いビジネスモデルだと言えるだろう。
 
 アマゾンの『送料完全無料』とTSUTAYAの『店舗返却無用』の新サービスに共通して言えることは、どちらも『(消費者の)交通費と人件費が無料になる』ということである。消費者にとって有り難いサービスであれば、流行らないわけがない。
「ネットで借りて自宅に届きポストへ返却」という言葉は、
ツタヤで借りてポストで返却」という言葉にお株を奪われることになりそうだ。

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コメント

ツタヤに関してはこれでやっていけるのかな、と思いましたが、
なるほどこういうことでやっていたのですね。
参考になりました。

投稿: トリア | 2010年12月 9日 (木) 20時55分

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