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法人税の減税で税収は落ちるか?

2010122301 民主党が法人税の税率を5%引き下げると発表してから、次のような意見をよく耳にするようになった。
 
 「法人税引き下げの財源はどうするのか?
 
 この疑問に対する仙谷氏の返答は、「財務省は必ず(財源を)掘り出してくると確信している」という意味不明なものだったが、「財源をどうするのか?」というような意見が出てくる背景には、次のような単純な思い込みがあると思われる。
 
 《税金を下げれば税収は下がる
 
 一見すると、まともな意見ではある。ただし、「小学生が考えれば」という前置詞が付けばの話である。もし、税収を上げるためには税金を上げるしか方法が無いのであれば、日本は即刻、全ての税金を上げなければならないだろうし、同時に政治家の存在価値というものも見直さなければならなくなってしまう。なぜなら、税収を上げるために税金を上げる以外の方法を考えることが政治家の大事な仕事であるからだ。
 
 税金を下げることで「財源をどうするのか?」と聞いてくること自体がナンセンスと言わざるを得ない。大事なことは“財源の確保”ではなく“税収を上げる手段”である。そして、減税という措置もその手段に成り得るという認識を全く持ち合わせていないがゆえに、このようなトンチンカンな言葉が出てくるのだろうと思う。
 と言っても、私は別に民主党を擁護しているわけではない。もともと40%だった法人税を35%に下げたところでほとんど実効価値は無いだろうし、法人税以外の税金はこぞって上げるとも発表しているわけだから、全体として見れば『増税』であることに変化はないからだ。民主党の認識もおそらく《税金を上げれば税収は上がる》ということだろうから、先の「財源をどうするのか?」と言っている人々とほとんど違いは無いとも言える。
 
 では、「税金を下げれば税収は増える」のかというと、これも絶対的に正しい意見とは言えない。下げる税率にもよるだろうし、いろんな社会的な構造の歪みや人間の心理的な要因も大きく関係してくるので、一概に「税金を下げれば税収が上がる」と言うことはできない。その社会的な構造や心理的な要因を考慮しながら景気対策を講じるのが政治家の仕事でもある。現在の民主党政権が国民に気付かれずにそのような複雑な計算を行っているのかは甚だ疑わしいと言わざるを得ないが、法人税のみを5%下げた程度で景気が良くなると本気で思い込んでいるのだとすれば、あまりにも薄っぺらな認識と言わざるを得ないと思う。
 
 現在の法人税の年間税収は10兆円にも満たない。2010年度は5兆円程度に落ち込むとも言われているので、そのうちの5%の減税額は(5兆円の8分の1で)6250億円にしかならないということである。
 その6250億円が全て消費や投資に回ったとしても、麻生元総理の行った2兆円バラマキの3分の1程度の経済効果しか生まれない。
 私は企業の内部留保に反対する立場ではないが、多くの企業が5%分の浮いた税金を投資にも回さず、従業員や株主や下請け企業にも回さず内部留保にしてしまえば、全く経済効果は無いどころか、逆に、景気は更に落ち込み、税収も更にダウンという悪夢のような結果を招きかねない。そして、その「税収の減少」という結果だけが針小棒大に報道され、法人税率は元の鞘に戻り、その他の税金は更なる増税という悪夢のスパイラルが発生する可能性も否定できない。
 
 お金というものは、滞りなく動いてこそ健全な経済が保たれる。それは、人間の血液が正常に身体中に巡っている状態と同じようなものである。血液の流れが悪くなると人間の健康も損なわれるのと同様、お金も正常に市場を巡らないと経済は悪化する。言葉を変えれば、景気が悪くなる。日本経済の中にお金の流れを止めているボトルネックのようなものが存在すれば、日本経済は不況という病気から回復することはできない。
 経済を人体に喩えるとすれば、政治家とは医者でなければならない。もっと言えば、病気を見抜く名医でなければならない。具体的に換言すると「経済オンチのヤブ医者では、景気を良くすることはできない」ということである。
 日本は幸いにも世界一と言ってもいいほどに、お金が有り余っている国であるのだから、そのお金を如何に効率よく動かすかが政治家に問われるべき資質なのである。
 
 最後に、「法人税の減税で税収は落ちるか?」
 これに対する答えは「税収は上がる可能性の方が高いが条件にもよる」。そしてその条件には「政治家の経済認識力」というものも大きく関係していると述べておきたいと思う。

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「経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

諸外国に比べて高すぎる法人税率を下げて、企業の海外流出による雇用の減少及び税収の減少に歯止めをかけなければならない。
法人税率を毎年5%ポイント下げて、3年かけて15%引き下げることが望まれる。
ルーピー鳩山政権に比べて菅政権は、少しはよき方向に舵を切っているのは評価したい。
しかし、税制改正全体は、民主党らしく社会主義ないし共産主義に向かっており評価できない。

投稿: 盗っ人・メドベージェフ | 2010年12月23日 (木) 21時08分

盗っ人・メドベージェフ様

コメント、有り難うございます。

>法人税率を毎年5%ポイント下げて、3年かけて15%引き下げることが望まれる。

 4年かけて20%(現在の半分)でも良いかもしれません。もし、今回の5%のみで終われば、ほとんど経済効果はなさそうです。

投稿: 管理人 | 2010年12月26日 (日) 18時12分

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