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『節税対策』という見えない景気刺激策

2011031001 世間では毎年この時期(3月)は、師走に次いで慌ただしい雰囲気に包まれる。3月は多くの企業の決算期と重なるため、企業の節税対策もちょうどこの時期(?)にピークを迎える。

 国税庁の発表によれば、日本では7割以上の企業が赤字と報告されており、それが17年間も続いているということになっているが、実質は黒字でも節税対策で赤字にしている企業はかなりの数に上ると思われる。
 法人の場合、税引前の利益に対してのみ課税されるため、多くの企業は税金の支払いを軽減する手段を講じており、またその権限を与えられている。それが言わずと知れた「節税」というものである。
 
 この時期、多くの企業はなるべく税金を支払わないようにするために設備投資などを行って、せっせと税引前利益を下げる(または赤字にする)努力をしており、今頃は最後の詰めに入っている企業も多いと思う。「無駄に税金を支払うぐらいなら、別のことにお金を使用した方がましだ」というわけだ。
 私のような真面目に税金を納めているサラリーマンには節税も脱税も無縁の話だが、今回はこの節税について少し述べてみようと思う。

 企業が脱税行為を行うことは禁止されており法的にも処罰の対象となるが、節税対策を行うことは、もはや日本の常識であり、法的にも問題とされない。脱税は違法だが、節税は合法であるので、誰も節税行為を責めることはできない。…と言っても別に節税行為を取り立てて責めようとは思わない。多くの企業が節税行為を行うことによって日本の法人税収が大幅に落ちているだろうことは想像に難くないが、複眼的な視点で観ると、節税行為が経済に対して全てマイナスに働くというわけではないからだ。

 まず、脱税と節税の大きな違いは、利益が出たお金を“使う”か“使わない”かという違いがある。無論、使わない方が脱税である。脱税の場合は利益が出たことを隠す(誤魔化す)わけだから、基本的に表立ったお金は動かない。しかし、節税の場合は、何にお金を使用したのかということを証明する証拠(領収証など)が必要となるため、少なくとも実際に表立ったお金を使わなければならない。

 例えば、ある企業で1億円の税引前利益が出た場合、そこから単純に40%の法人税(4000万円)が課されると、税引後の純利益は6000万円ということになる。(ここでは話の都合上、各種の優遇税制は考えないものとする)
 しかし税金を課される前に半分の5000万円を使用してしまえば、税金は(5000万円×40%=)2000万円となり、純利益は3000万円ということになる。
 
 上場企業であれば、利益の多寡が株価にも影響する可能性が有るため、姑息な節税を行って利益を下げてしまうと逆に企業価値が下がるリスクがあるが、非上場企業であれば、税引後の純利益が半分になったとしても、既に従業員に対する給料や様々な経費等は支払った後のことなので、それほど問題にならない。来期の経営見通しが悪くないとの予測が立てば、お金を借りている取引銀行に対する信用問題さえクリアできれば利益が出なかった(=お金を使用してしまった)ということにしてしまっても特に問題はない。と言うより、節税しなければ損ということになってしまう。

 しかし、企業が投資するべきものがあれば、節税対策として物品等を購入するのは極めて合理的な手段であると言える。あるいは、下請け会社に対して実際に仕事を発注するという節税対策もある。この場合は、「無駄に税金を支払うぐらいなら、仕事を発注した方がましだ」というわけだが、下請け会社にとっては「節税さまさま」で、『節税特需』というのは喜ばしいことである。本来、法人税として国に召し上げられていたはずのお金の一部が下請け会社に回ってくるわけだから、法人税収として無駄なことに使用されるよりもよっぽど意味のある利益の再分配だと言えるかもしれない。

 下請け会社でなくとも、企業が設備投資という名目で大きな買い物をすれば、その分は市場にお金が供給されることになるので、消費不況に喘いでいる様々な業界が潤うことにも繋がる。皮肉なことに“税金を支払いたくない”というマイナス感情が消費意欲を促し、“市場にお金を供給する”というプラス行動に転じているわけだ。
 そういったプラス面を考慮すれば、実は企業の節税対策というものは、形を変えた景気刺激策でもあるということが分かる。
 法人税としてそのまま召し上げられるのが良いのか、それとも、法人税としてではなく、様々な業界に利益の再分配を行うのが良いのか?と問えば、おそらく後者の方が景気刺激策としては有効であるはずだ。

 法人税収が激減していることを絶対的に悲観視するエコノミストもいるが、実際は企業の節税対策によって、その減少分が水面下で再分配されているとすれば、また違った見方もできると思う。“法人税収の減少”=「絶対的な不況」とは単純には言い切れない側面があるということも併せて考える必要がある。7割もの企業が正真正銘の赤字企業であるなら、日本経済はもっと深刻な不況に陥っているはずである。

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