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ユッケリスクから考える原発リスク

2011050401 5月に突入しても依然として原発問題に揺れている日本社会だが、このゴールデンウィーク中にも既に大きなニュースが2つ発生した。1つは海外メディアが伝えたアルカイーダのビンラディンの死亡(殺害)ニュース、そしてもう1つが、国内のユッケ集団食中毒ニュースである。
 スケールとしては大きく異なるニュースだが、多くの国民にとって関心があるのはユッケ問題の方だろうと思う。私自身はユッケ(と言うより生肉)は食べる気もしないので、今後、ユッケの扱いがどうなろうと特に問題はないのだが、政治も絡んで必要以上に大きな問題と成りかけているようなので少しだけこの問題に触れておきたいと思う。
 
 まず、今回の事件で明らかになったことは、『焼肉酒家えびす』社長の熱弁(?)の通り、“生食用の牛肉は流通していない”ということである。この記者会見は「開き直り会見」と揶揄されたが、もし記者会見上でこのことを述べていなかったとすれば、その事実が世間に正しく伝わらない可能性があると危惧したのだろうと思う。自分達の会社だけが悪いという風にスケープゴートにされるという恐れから口を滑らせてしまったような印象を受けた。
 
 私が思うに、今回の集団食中毒事故は、生食用の牛肉の流通がどうたらというような問題ではなく、単に生肉の管理に問題があったというだけの話だろうと思う。これまで何十年間も日本中の多くの焼き肉店で通常のメニューとして出されてきたユッケが特に問題なく流通してきたということは、ほぼ100%に近い安全性が保たれてきたことを意味している。今回の場合、流通経路のどこかで生肉の管理が行き届いていなかったために問題が発生してしまったというのが実際のところだろうと思う。
 現時点で最も疑われるのは、事故が発生した焼き肉店(卸売り業者も含む)での管理体制であろうから、その疑いが晴れない限り、いくら生肉流通における問題点を指摘したところで批判の誹りを免れることは相当難しいと言わざるを得ない。
 
 普段はなんでもかんでも規制の対象とすることに努めてきた厚生労働省も、諸々の事情からさすがに生肉の規制までは考えていなかったのだろうと思われるが、果たして今回の問題からどういう転回を見せるかは見物ではある。規制仕分けに勤しむ民主党からは既に規制の声が挙がっているそうなので、「生肉禁止令」なるものが発令される可能性も無いとは言えない。
 
 しかし、今回の問題で明らかになった重要なポイントは、『生の牛肉は危険』だということである。これまでこの事実自体を国民が正しく認識してこなかったことによって今回の事故は発生したとも言える。元々、牛肉には人体に危険な“腸管出血性大腸菌”が潜んでいる可能性が有るので、細菌に対する抵抗力の低い幼児や老人はなるべく生肉は食べない方がよいという認識さえ世間一般に浸透していれば、小さな子供が生肉を食べるというようなことも起こらなかった可能性が高い。いつからか、「ユッケは美味い」という情報だけが独り歩きし、「生肉は危険」というもう1つの情報が忘れ去られていたことが問題なわけだ。
 
 この構図はよく考えると原発の安全神話の崩壊と似ていると言えなくもない。元々危険なものであることが判明しているにも拘らず、長い間、何の問題も発生していなかったために、安全管理が御座なりになり、思いもよらぬ悲劇を招いてしまったという構図はほとんど同じだとも言える。要するに、原発の安全神話同様、“ユッケの安全神話が崩壊してしまった”というのがこの事件の本質なのである。
 
 原発の安全性問題を考える上で、このユッケ問題は恰好の教材を我々国民に与えてくれているように見える。リスクというものを正しく認識しない限り、万全の管理を行うことは難しいという当たり前の教訓を我々に投げかけているように思える。
 
 ユッケ自体にはリスクが付き物だが、リスク管理が万全であれば特に問題は発生しない。同じように原発にもリスクは付き物だが、リスク管理が万全であれば特に問題は発生しないし、実際に発生していなかったはずだ。
 どちらの事故も、“管理体制が甘かった”ということが問題の本質なのであって、闇雲にこの世の中から無くしてしまえばよいというのでは、あまりにも感情的で短絡的な発想と言わざるを得ないということである。
 
 原子力エネルギーを核兵器と共に世界中が完全放棄するというのなら良い話かもしれないが、日本だけが完全放棄したところで絶対的に安全な社会になるというわけではない。例えば中国の原発で大事故が発生すれば日本も少なからず大きなダメージを負うことになる。このことは核兵器の所持問題と同じで、たとえ日本が核兵器を持たずとも、諸外国で核兵器が使用されれば日本も安全というわけにはいかない。
 それに自然エネルギーに完全依存することによって生まれる新たなリスクというものも考える必要がある。日本だけが自然エネルギーに依存することによって様々なリスクが雲散霧消するわけではなく、返って大きなリスクが生まれる可能性があるということも併せて考えなければならない。
 
 大事なことはリスク認識能力リスク管理能力であって、事故が発生した時だけ騒ぐというような都合の良い批判能力ではない。事故が発生する以前から正しくリスクを認識し管理してこなかったことが根本的な問題なのであって、原発やユッケが諸悪の根源というわけではないのである。
 仮に「原発やユッケが諸悪の根源だ」と言うのであれば、そのことを事故前に認識しようとしてこなかった“無知”も同じく諸悪の根源なのである。
 
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コメント

何を偉そうに

投稿: どらえもん | 2011年5月 4日 (水) 17時08分

素人がマスコミ報道だけで論評すると的外れになるという典型ですね。まず、腸管出血性大腸菌による食中毒は、日本で多数発生しています。さらに診断されなかったり、行政が探知できない事例が公式統計の数百倍あると推定されています。過去に死者もかなり出ています。国民が知ろうとしないだけです。生肉が安全だという認識は、業者やマスコミがグルメブームに乗って創り上げた虚構で、専門家の間ではずっと問題視されていました。食肉はその生産工程上、病原細菌の汚染を0にすることは技術的にできません。さらに、カンピロバクターや肝炎ウイルス、寄生虫などの問題も多く、肉食の歴史の長い欧米諸国から、生肉を喜んで食べる日本人は野蛮人扱いされ、馬鹿にされているのが現状です。さらに、あなたのように管理で防止できると誤解している人が多く、ほんとうに困った問題です。世界で食肉中の病原細菌をコントロールできる技術は、加熱と放射線照射しかありません。厚生労働省も、これを契機に歴史の浅い、日本人の恥ずべき食習慣である食肉の生食を規制してくれると良いのですが。

投稿: 専門家からのお願い | 2011年5月 4日 (水) 18時21分

先ずは、今回の件は日本の食文化と家庭教育の問題です。

生肉にかかわらず、刺身も生です、

これらの食材は日本国が誕生する前から、人間が食べてきたものです。
国が肉だけを規制できる事ではありません。
生肉、生魚(刺身)を食べる様になったのは最近の事です。
間単にには、保存(冷凍)技術が進んだからです。

次に、親が子供に生食材を食べさせた事です。此方のほうが、現在の日本の家庭教育の問題ですが大きいです。

ユッケで死ぬ人より、
河豚の毒で死ぬ人がず~と多いです。


最後に、事件性も考えられると思います。
富山と神奈川県、出来すぎと思いませんか。

この後の、マスコミの取り上げ方が興味あり。

投稿: 素人ですが | 2011年5月 4日 (水) 19時02分

専門家からのお願い様

コメント、有り難うございます。

 腸管出血性大腸菌のご説明有り難うございます。生肉も生魚と同様、いろいろと問題が有るということですね。
 生野菜や刺身を食べるのも日本独特の食文化だということを何かの本で読んだ記憶がありますが、結局のところ、100%安全な食品などというものは有り得ないということだと思います。
 しかし、今回のユッケにしても何十年間を通して数える程度(?)しか事故が発生していないのであれば、それを敢えて規制するのもどうかと思います。危険が有るという理由だけで規制を行う必要が有るということになれば、あらゆる食品が規制の対象となってしまうと思います。当然、生野菜も刺身も規制の対象となるでしょうから、禁酒法時代のような様々な悪弊が生まれることに繋がると思います。
 フグなどもテトロドトキシンという危険な毒を持っていますが、専門の調理師が取り扱うことによってそのリスクをほぼ100%無くすことで料理として流通しています。しかしこれも絶対的に安全というわけではなく、ほんの僅かな危険性と隣り合わせでありながら、その危険性を承知して食べている人がいます。危険でありつつも、そのリスクを消費者が受け入れることによってフグ料理というものは成り立っているわけです。無理矢理、国民全員にフグ料理を食べろというのは問題ですが、逆に全く食べてはいけないということにするのも問題だと思います。
 ユッケの場合も同様、今回の事故でリスクを感じ取った人は今後誰が頼まずとも食べなくなるでしょうし、逆にそれでも食べたいという人もいるはずです。“生肉は危険”という基本的な知識をアナウンスすれば、規制を行わずとも、自然的に規制が敷かれたのと同じ効果を発揮することになると思います。

投稿: 管理人 | 2011年5月 5日 (木) 11時21分

素人ですが様

コメント、有り難うございます。

 皮肉にも現代では、生ものの鮮度を落とさずに急速冷凍が可能になったために「生でも大丈夫」ということになってしまったんでしょうね。「生ものは危険」という常識だけが都合よくカットされた結果、数々の食中毒が発生しているというのが現状だろうと思います。

投稿: 管理人 | 2011年5月 5日 (木) 11時29分

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