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『世代間格差』の盲点【「家族」という世代間格差是正装置】

2011052901 「世代間格差」という今更、説明を要しないほどに有名になった言葉がある。主に年金受給における老年世代と若年世代の格差を意味する言葉だが、現在のところ、周りを見渡しても、それほど「世代間格差」について問題だと述べている一般人はいないように思われる。
 日本は「格差は絶対悪」というような空気が支配している国だが、なぜかこの「世代間格差」についてはそれほど重要視されておらず、一部の有識者が述べている程度である。
 
 これだけ少子高齢化が問題視されている国で、なぜこの世代間格差問題はクローズアップされないのか? これについては様々な意見がある。老年世代が圧倒的な選挙権を行使し、政治的に老年世代中心の老人優遇国家を築いているからだとする意見が一般的だが、中には既得権を維持するために情報統制が行われているというような陰謀論めいた意見もある。しかし、私は少し違う意見を持っている。それは、“現在のところ、大部分の国民は世代間格差を問題視する必要がない”という理由である。

 「えっ?」と疑問に思われた人もいると思うので、それがどういう意味かを以下に述べてみたいと思う。
 
 いわゆる若年世代(30歳以下)の人々は、歪んだ年功序列制度の弊害や、不況の影響もあり、給料はほとんど上がらないという経済的に恵まれない立場にあると言える。しかし、親と同居している人も多く、結婚して別居している人であっても、親からいくらかの生活資金を供給されているという人は大勢いる。私の知る範囲でも、そういった人が何人もいると聞いている。
 昔のように子供が親の面倒をみる(=生活資金を提供する)のではなく、逆に親が子供(と言っても大人だが)の生活資金の一部を負担しているという家庭は思っている以上に多く、特に若くして結婚した人などは、親からの仕送り(?)に依存している場合が多い。
 
 これはどういうことかというと、『家族』という単位で“世代間格差の解消が自動的に行われている”ということである。
 
 もちろん、既に両親がいないという人もいるだろうし、微々たる国民年金では子供の援助まですることはできないという人もいる。あるいは、単純に親子の仲が悪いので親子関係が断絶しているという人もいるだろう。しかし、多くの場合、悪名高い年功序列制度の恩恵や、過剰な退職金や過保護な企業年金などによって余剰資金を抱えているのが一般的な老年者の姿である。そういった老年者が生活費として余剰資金の一部を子供に与えるというのはごく当たり前の姿である。
 
 大前研一氏なども言っているように、現代の老人は1人当たり平均3500万円の貯金を残して、あの世へ旅立つらしい。一説では、祖父と孫では1億円以上の世代間格差が生じるとも言われているので、余剰資金を抱えた老年者が多いことは疑いの余地はない。
 彼らの多くはその余剰資金の一部を子供に分け与えている。そうであるがゆえに、今のところは「世代間格差」をそれほど問題視する必要がないと考えられるわけだ。
 
 「老年世代」と「若年世代」という個人単位で現在の歪んだ年金制度を見つめると、確かにそこには如何ともし難い世代間格差が広がっている。それは、まさしく貴族と奴隷の関係に近いとも言える圧倒的な格差である。しかし、「家族」という単位で見つめると、その格差は大きく縮まる。親が過剰に支給された年金の一部を子供に分け与えることによって、世代間格差は大きく縮まることになる。
 
 親が子供にどれだけの余剰資金を分配したかというようなデータは国も把握できないので、統計的にデータ化するのは難しい。そういった目に見えないところで、所得の分配が自動的に行われていることが世代間格差が問題視されない1つの大きな理由だと思う。言わば、世代間格差の盲点が、この問題が表面化することを防いでいるわけだ。
 
 ただ、これも現在の歪んだ年金制度が維持されているがゆえに可能なことであると思われるので、これからの老年世代がまともに年金をもらえなくなる時代を迎えてしまえば、一気に世代間格差問題は表面化し、年金制度自体が瓦解することになる可能性は高いと思う。

 結論として言えることは、現在の多くの若年世代も、歪んだ年金制度の恩恵を陰ながら受けているがために、敢えて批判する立場に立つ必要性を感じていないということである。本当の世代間格差問題とは、現在の「若年世代」と「老年世代」にあるのではなく、まだ生まれていない「未誕生世代」と現在の「若年&壮年世代」との間に発生する大問題だと言えるのかしれない。
 
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