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『市場原理』とは何か?

2011072601 前回、話の成り行きで「資本主義」について少し言及すると、案の定と言うべきか、アンチ資本主義者(?)と思しき方からの反論、批判がかなり見受けられた。中にはわざわざブログ記事まで書いて批判している人もいたようなので、少し補足しておきたいと思う。

 私は別に資本主義が万能の経済システムなどとは思っていないし、盲目的に礼賛しているわけでもない。人間の性質上、共産主義(社会主義)よりも資本主義の方がまともだと思っている程度である。人間の劣情(悪く言えば嫉妬心)に基づく共産主義よりも、人間の欲望(良く言えば向上心)に基づく資本主義を選択した方が、社会は断然良くなるという単純なことを述べたまでである。
 
 日本では「資本主義」というものが「市場原理主義」のことだと思われているフシがあるが、その市場原理というものが初めから誤解に基づいた認識から論じられているため、まともな資本主義批判などはほとんどお目にかかったことがない。
 大抵が思い込みによって組み立てられた感情論によって批判が為されているため、まともに反論すること自体に意味があるとは思えないので、敢えて反論せずに聞き流すようにしている。…と書くと、また反論・批判が殺到しそうなので、少しでも曲解を解いてもらうために、市場原理について少しだけ述べておこうと思う。市場原理については以前にも述べたことがあるので、少し重複することになるかもしれないが、思い付くままに書いてみたいと思う。

 まず、「市場原理」とは何だろうか? その言葉の真の意味をよく考えていただきたい。「市場」とはもちろん、マーケットのことだが、「原理」とは何か? どんな辞書でも引けば出てくる単語だが、一言で言うなら「根本的な原則」のことであり、もう少し分かり易く言うなら、「不変の法則」のことである。

 時代や国が変わっても変わることがないマーケットの法則を「市場原理」と呼ぶのであれば、サブプライム問題によって「市場原理が崩壊した」というのは、よく解らない理屈である。アメリカの金融バブルは人為的に発生した現象であり、当然のことながら、不変の法則とは全く無関係の代物だからだ。

 では、市場原理とは何なのか? それは、先のサブプライム問題を例にとって言うなら、アメリカの金融バブルを破綻させた法則のことである。サブプライム問題によって市場原理が破綻したのではなく、市場原理によって金融バブルが破綻した。それが答えである。

 サブプライム問題によって破綻したのは、資本主義でもなければ、市場原理でもなく、人間の果てしのない欲望原理主義(簡単に言えばバブル)が崩壊したというだけのことなのである。
 行き過ぎたバブルを破綻させることが善であると仮定するなら、市場原理とは、歪んだシステムをまともなシステムに強制する法則だとも言える。つまり、市場を本来のあるべき姿に戻す普遍的な法則のことを「市場原理」と呼ぶのである。

 ここまで言えば、少し勘の鋭い人であれば、「サブプライム問題によって市場原理が崩壊した」などというのが、いかに間違った認識であるかが解っていただけると思う。この言葉を言い換えれば、次のようになる。

 「サブプライム問題によって普遍的な法則が崩壊した

 これでは、完全に論理が逆さまになっている。普遍的な法則は、人間の欲望如何によって変化するようなものではなく、常に一定の法則のもとに存在している。その法則が有るからこそ、行き過ぎたバブルは崩壊するようにできているのである。

 大抵の人々(私も含む)はバブルの渦中に有る時、それがバブルであることを正確には認識できないが、市場には常にその状態がバブルであるかどうかを判断する法則が機能している。それが市場原理というものの正体である。

 ゆえに市場原理が崩壊するなどということは本来、有り得ない。「市場万能主義が崩壊した」と言うならまだ理解できるが、「市場原理が崩壊した」と言うのは、「地球から空気が無くなった」と言っているに等しい。あるいは、借金によって国が崩壊した時に「貸借対照表が崩壊した」と言っているようなものだ。

 「市場」というものは人間が動かしている以上、完全なものでは有り得ない。「市場は完全でなければならない」と思っているのは、資本主義を否定している社会主義者の専売特許であり、そういった屈折した思い込みが有るがゆえに、「市場原理は悪」などというトンチンカンな言葉が出てくるのである。
 
 「市場原理が崩壊した」などと言っている人達が崩壊したと思い込んでいるのは、「市場原理」の名を借りた「人間の欲望」のことであり、そういった基本的な認識を持たずに、いくら資本主義や市場原理主義を批判したところで、全てが不毛なのである。
 
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