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『1クラス35人制』で教育効果は上がるか?

2011091901 先週、文科省から新たな教育方針が発表された。その教育方針とは、昨年に小学1年生のみに導入された『1クラス35人制』を今年度から小学2年生にも適用するというもので、文科省いわく「少人数学級の実施状況を検証してきたが、学力向上や不登校などの課題に対応する教育効果を得られる」というのが判断理由であるらしい。
 
 しかしこの文面からは、検証における結果というものが本当に得られたのかどうか判らない。1クラス35人制にして不登校やイジメが減少したという確かなデータが有れば納得もできるが、本当にそういった結果が得られたのだろうか?
 
 以前にも『35人学級制』の導入については少し(反論を)述べたことがあるが、今回も率直な感想を述べさせてもらうと、これは非常に怪しいと思う。なぜなら、小学1年生の段階では不登校やイジメなどはまだあまり無いのではないかと思われるからだ。
 いくら現代っ子がマセているとはいえ、小学1年生では、まだ他人と自分を比較するというようなさもしい心(嫉妬心)はあまり持ち併せていないだろうし、学校に行くのが嫌だというような悩み事を抱えた生徒もほとんどいない(いたとしても登校拒否までは考えない)のではないかと思う。
 まだ純真な心を持った小学1年生に35人制を導入したとしても、不登校が減少したというような結果が得られるとは思えないし、そもそも、1年前まで幼稚園児だった生徒が小学1年生になった途端に35人制を導入されても、その違いなど分かるはずがない。
 
 例えば、小学1年から3年まで40人学級だとして、4年から35人学級になるというなら、その違いをデータ化することは可能(実際は高学年の方がイジメは多いのであまり意味がないが)だろうが、幼稚園と小学校を比較しても、まともな結果など得られるはずがないと思う。
 
 少人数制によって生徒が得られるメリットとは、教師が1人当たりの生徒に割く時間が増えるので教育効果が上がるというものだが、これとて、教師も同じ個性を持ったロボットではないのだから一概には言えないものがある。優秀な教師であれば40人学級であっても教育効果は上がるだろうし、ダメ教師であれば、いくら生徒数を減らしても教育効果の向上などは望めないだろう。
 
 結局、何が言いたいのかというと、少人数クラス制の是非論というものには、教師の能力や努力というものをどうするのかという教育する側の視点というものが完全に欠けているということである。40人制を35人制に変えるだけで単純に教育効果が上がると考えるよりも、教師自身が1人当たりの教育生産性を上げるという発想が全く無いように感じられる。
 
 こういった制度の導入は、単純に「税率を上げれば税収が上がる」という現在の政府の安易な姿勢とダブって見える。税金を上げる前にすべきことを行わずに増税を考える政府と、教師が本来行わなければならない努力をせずに、生徒数を減少させればいいという考えには相通じるものがあると思えるのは私だけではないだろう。
 
 私事で恐縮だが、私の中学生時代には男性と女性の2人の社会教師がいた。1人では全クラスを担当できないので、2人の教師で分担していたわけだが、男性の教師よりも女性の教師の方が教えるのが上手かったので、それぞれが受け持ったクラスのテスト成績には大きな差があった。しかし、その教育効果における差に対しての評価があったのか?というと、おそらく無かったのではないかと思う。と言うより、男性の教師の方が女性の教師よりも年上であったので、おそらく給料は男性の教師の方が高かったのではないかと思う。
 常識的に考えると、これは非常におかしなことである。教師の教える能力によって収入に差が生まれるのではなく、単に年上であるというだけで収入が決まってしまうというのは、年功序列制度の悪弊そのまんまだが、こんな教育環境で教師に対して努力しろという方がどうかしているとも言える。どんな非効率な教え方をしても、どれだけ効率的な教え方をしても、その教え方に対して何の評価も為されないのであれば、余程優秀な教師でない限り生産性向上などは望めるはずもない。
 
 これは、イジメ問題においても言えることで、イジメが有ることを発見し、イジメを無くすことに貢献した教師は評価されるという制度があれば、イジメ問題も少しは改善されるはずである。逆に、イジメが無いことが良しとされる事勿れ主義が根付いた教育環境では、イジメが有っても隠すことが評価されることになってしまい、教師がイジメを見て見ぬふりをするという悪循環に陥ることになる。
 
 聞いたところによると、現代の公立小中学校の退廃ぶりは凄まじいらしく、経済的に余裕のある親は、公立の小中学校には子供を通わせないという人も多いらしい。
 そういった退廃が生まれた原因には、少子化という表向きの理由だけでなく、教師の教育という行為に対する正当な評価が無いという理由も隠れているはずである。

 一頃、生徒に対する悪平等教育が問題視されたことがあるが、実は教師に対しても悪平等評価が為されているがゆえに、公立の小中学校の退廃に歯止めがかからなくなってしまっていると言えるのではないだろうか。
 そのような悪循環を抱えた教育環境にいくら少人数制を導入したとしても、ほとんど教育効果が上がらないのは至極当然の帰結であり、単なる税金の無駄遣いに堕するのは目に見えている。
 教育効果を上げるために必要なことは、1クラスの生徒数を減少させることではなく、教師の教育における生産性を向上させ、その能力を正当に評価するという当たり前のシステムを導入した方が良い結果が齎されるのではないかと思う。政治にしても教育にしても、なぜそういった当たり前の改善案が出てこないのだろうか?
 
【関連記事】「1クラス35人制」というレトリック
 
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