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お金を刷ってもインフレにならない日本の事情

2011092401 民主党税制調査会は、東日本大震災の復興財源の確保のために、新たに相続税の増税案を検討しているらしい。
 所得税、法人税、たばこ税に続き、今度は相続税と、とにかくなんでもかんでも増税する姿勢は全く変わっておらず、“民主党=増税政党”という負のイメージは完全に定着してしまった感がある。
 
 かつて日本の相続税の最高税率は70%と高額だったが、現在では50%まで下がっていた。しかしこのままいくと、また70%の鞘に戻ってしまう可能性も否定できない。
 私は個人的には相続税などという(資産家が対象の)税金には縁がないので、別に相続税が上がったところで困らないのだが、間接的に日本経済に与える影響は無視できないので、素直に認めるわけにはいかない。
 
 現在のところ、震災復興に必要な資金は13兆円ということになっている。この13兆円を日本の総人口1億3000万人で割ると、単純に国民1人当たり10万円という計算になる。4人家族であれば、40万円を震災復興のために寄付しなければならないということになる。

 日本中の全世帯から一律に震災復興費を徴収するということになれば、相当数の人々が反対するはずであるが、その徴収形態を「増税」という形にすれば、あまり反発されない。なぜなら、税金であれば富裕層が中心に支払うことになり、一律に徴収されるということにはならないからだ。最も一律に徴収されるべき消費税が入っていないというところもミソである。
 所得税や法人税、相続税などから徴収するとなると、復興財源も累進課税的に徴収されることになるため、元々、あの手この手を使って税金を納めていない人々は震災復興費もほとんど納める必要がないというわけだ。まさしく、国民の嫉妬心を利用した狡猾な増税案だとも言える。
 
 震災復興財源を集める方法は、増税の他にもあり、主だったところでは、日銀が復興債を全額買い切りオペレーションで購入するという方法がある。これは有志国会議員が「増税によらない復興財源を求める声明」で発表していたことでも有名だ。

 安易な国債発行には私も反対の立場だが、今回の震災復興財源の調達に限って言えば、まだこの方法(買い切りオペ)を選択する方が増税よりもベターだと思う。
 
 「お金を刷ってバラまけば、インフレになる」という意見がよく聞かれるが、震災によって失われた損失は純然たる経済活動を通して消失したわけではないので、この意見はある意味で筋違いである。お金が日本国中を正常に巡っている状態で極端なバラマキを行えば、インフレになる可能性もあるだろうが、お金の巡りが悪くなっているところにお金を供給してもインフレになる心配はほとんどない。
 
 日本の個人金融資産は数年前には1400兆円とも言われていたが、現在では1100兆円程度まで引き下げられている。300兆円もの金融資産が減少しても物価には何の影響もないのは、そのお金が流動していないからだとも言える。このことから言えることは、「いくら巨額の資金があったとしても、そのお金が動かない限り、インフレにはならない」ということである。
 
 現在の震災復興費のバラマキというのは、一瞬にして失われたお金の穴埋めであって、流通している資金を増加させるというものではない。人間の身体に喩えて言うなら、失われた血液を補充するという、言わば「輸血」行為であって、血液の量を増加させるという手段ではないからだ。正常に血液が巡っている身体に余分な血液を入れると、肉体は異常をきたす(つまりインフレになる)が、血液が足りていない身体に血液を注入しても、正常な血液量に達するだけである。無論、正常な血液量をオーバーすればインフレになる可能性はある。
 逆説的に言えば、現在のお金が足りていない状態を放置すれば、さらなるデフレ{(正確に言えばデプレッション(=不況))}を進めるだけである。
 付け加えると、増税による資金調達は、さらにタチが悪い。なぜならば、お金が足りている部分の血液量をも減少させることに繋がるからだ。
 
 本来であれば、復興債などを発行せずに、民間主導の経済成長によって復興するというのがベストだが、それができないとなると、復興債の発行も止むを得ないと思う。増税による復興などというジリ貧の夢物語に酔うよりは、復興債を発行するという現実的な賭けに乗る方がベターであることに変わりはない。
 国債の発行は問題の先送りであるのかもしれないが、増税というものは、その問題を解決する手段さえも失ってしまう。比較論として考えれば、『増税 < 復興債』ということだけは間違いない。そしてそれ(復興債の発行)を許す前提として、将来的な経済成長政策が必要であることは言うまでもない。

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コメント

国債で調達したお金は、社会に放流されているわけですから、あるところにはある、というか無いわけが無いんですよ。
国の借金と言われている赤字額は、個人あるいは企業の現金資産となって、どこかに滞っているわけです。
そこから徴税をしないから、道理が合わなくなって経済がおかしくんるんですね。

>国民の嫉妬心を利用した狡猾な増税案だとも言える。

狡猾でもなんでもなくて、出て行ったお金が戻ってこないということは、心臓に血液が戻ってこないということなので、相続税によって回収するのが道理に適ってるだけなんです。

>なぜならば、お金が足りている部分の血液量をも減少させることに繋がるからだ。

確かに動いているお金から汲み上げるには問題があります。
しかし、動いていないお金から徴税するのは、なんら問題ありません。
日本という国は、経済において資本主義ですが、政治は民主主義ですから、偏った富を、政治がある程度均すのは必然だと気付きます。

投稿: クロコダイルPOP | 2011年9月25日 (日) 01時31分

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