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「国民に3770万円の支払いを命じる」判決の是非

2011101901 郵便不正事件で無罪が確定した厚生労働省の村木厚子元局長に対して、国が3770万円の賠償金を支払うことが決定した。
 無実の人間の疑惑が晴れ、損害賠償金が支払われることは、本来であれば喜ばしいことではあるはずだが、何か釈然としない。無論、村木さんが賠償金を受け取ることが釈然としないわけではない。問題は、その賠償金を誰が支払うのか?ということである。

 あなたは以下の2つの判決文を聞いてどう思うだろうか?

 「に3770万円の支払いを命じる」

 「国民に3770万円の支払いを命じる」

 上記は同じ意味だが、全く違ったイメージを抱かなかっただろうか?
 
 「前代未聞」と騒がれた検察のデッチあげ事件の裁判は、村木さんの無罪が確定したことで一応の終結を迎えたが、現在も検察の身内同士での骨肉の裁判争いが繰り広げられている。検察(司法関係者)が犯した犯罪を同じ司法関係者が裁くというのは、喩えて言うなら、他人を傷付けたイジメっ子をイジメっ子の親が裁いているようなものである。そういう意味では、まさに前代未聞の裁判だと言えるのかもしれない。
 
 常識的に考えれば、村木さんに対して賠償金を支払わなければならないのは、罪を犯した当人(検察の人間)でなければおかしい。ところが、デッチあげ実行犯の前田受刑者はともかくとして、大坪特捜部長等2人は未だ罪を否定している。ということは、その賠償金は彼らが支払うわけではないということになる。しかし、未だ彼らの罪状が判明していない段階で3770万円という賠償額が決定されたということは、彼らの有罪、無罪に関係なく、賠償金は支払われるということだ。では誰が支払うのか? もちろん、我々国民である。
 
 それにしても、公務員が職務上で罪を犯した場合、被害者に対する損害賠償金を国民の税金から捻出するというロジックは、どこかおかしくないだろうか? 公務におけるミスならともかく、公務における犯罪になぜ国民の税金が使用されなければならないのだろうか? これはよくよく考えるとトンデモない話である。
 
 例えば、医者が医療ミスで患者を死なせてしまった場合、その賠償を病院が行うというなら納得もいくが、国民が賠償する必要性はないだろう。
 では、医者が故意に患者を死なせてしまった場合はどうだろう? その賠償を病院が行う必要があるのだろうか? もちろん、病院としても、そんな殺人医者を雇っていたという責任はある。しかしこの場合も国民が賠償する必要性は全くない。
 この喩えに用いた「病院」を「検察」に置き換えて考えれば、その異常さがよく解ると思う。
 
 無実の人間を陥れようとするような偽証行為を行うことが検察の「公務」というのなら話は別だが、そうでない限り、元大阪地検の前田受刑者が行ったことはミスではなく、犯罪である。公務ではなく犯罪を犯した人間は、もはや公務員とは呼べず、ただの犯罪者である。分りやすく言えば、警察官が婦女暴行罪を犯したようなものである。そんな犯罪者に税金を投入するということが、はたして、まともな社会の姿なのだろうか?
 
 そのような犯罪者が生まれる背景には、《公務員であれば自腹を切らずに済む》というような甘えた考えがどこかにあったはずである。もし、偽証行為などを行ってバレた場合、《全財産を没収されかねない》というような危機感があれば、あのような馬鹿な行為には及ばなかったはずである。加えて、検察というのはよく知られたように絶対権力機関である。そういった誰からも注意されることのなかった権力に甘えた職務構造が、軽はずみなデッチあげ行為に結び付いた可能性があることを誰が否定できるだろうか?

 検察が“公務員に優しく民間企業に厳しい”こともよく知られたことだが、その民間企業は、どんなミスを行っても国民の税金などはアテにできないという厳しいビジネス環境の中で生きている。

 今年の8月に異例の早期退職をした東京地検元特捜部長の大鶴基成氏が、かつてライブドア事件の時に「額に汗して働く人、リストラされ働けない人、違反すれば儲かると分かっていても法律を遵守している企業の人たちが憤慨するような事案を万難を排しても摘発したい」と発言したことは今となっては(悪い意味での)語りぐさとなっているが、同じ検察の人間が、甘えた環境の元でデッチあげ事件を行ったことに対しては何と言うのだろうか?

 「額に汗して働かず、リストラされる心配もなく、違反をしなくても儲かる人々が起こしたデッチあげ事件を万難を排しても摘発したい」とでも言うのだろうか?

 3770万円ということは、国民1人当たり30銭程度の支払いとなる。微々たる金額ではあるが、本来は納税者が支払う必要の無いお金である。その賠償金を支払う責任を有しているのは他ならぬ検察関係者であり、公務員としての筋を通すという意味でも彼らが責任を取るのは当然のことであると思われる。
 「我々の給料から天引きしてもらって賠償金を支払おう」と言うような正義感のある人間は検察の中には誰もいないのだろうか?
  
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コメント

今回の訴訟は国家賠償法に基づくものでした。
同法1条2項を確認してください。

政府の判断如何では、賠償責任の実質を違法行為を行った当該公務員に負担させることが可能です。

常に国民が負担を負う制度になっているわけではありません。

投稿: よく確認を | 2011年10月20日 (木) 11時59分

賠償責任は個人にある。税金で払うべきでない。
それよりも何故村木さんを罪人に仕立て上げたのかマスコミを含め原因究明がなされるべきだ。

投稿: 林信行 | 2011年10月20日 (木) 16時00分

すばらしい意見ですね。
個人では払えないかもしれないので、検察として賠償してほしいですね。
同様に、省庁の職員の不正や大きな過失による損害はその省庁の予算から払えばいいですね。
それでも結局は国民の負担になるか……。

投稿: kinzo | 2011年10月20日 (木) 16時55分

検事面前調書の偽造署名や指印の暈しはミスではなく故意、この法務官僚の個人責任を追及すべきです。
http://suihanmuzai.web.infoseek.co.jp/gizou001.jpg.html

戸籍改ざんもミスではなく、この原本の不正は法務省の副本開示で証明すべきです、ところが実行犯である最高裁が赦さない。
http://suihanmuzai.web.infoseek.co.jp/111016.jpg.html

投稿: 遂犯無罪 | 2011年10月21日 (金) 11時31分

国民に3770万円の支払いを命じる の件につきまして
公務員が業務で不適切で瑕疵のある結果を為しても、罰せられない、責任を取らない法律を改正して、省ごとに全責任を取るようにするようにすれば、顕現化する問題の解決が殆どスピーデイに解決するのではないでしょうか。
例えば、年金受給が更に後倒しになる案が出ていますが、何兆円もの箱モノを造ったつけを国民にしれっと回そうとしています。
破廉恥な教師(コネで不正採用、子供への暴行等々)そのような場合も、東電への管理監督責任も各省で賠償金を組織の予算や職員の懐から贖罪をする必要があれば、決して今のような腐敗した社会構造が継続されることは無いのではないでしょうか。今まさにパラダイムという概念に基づいて、政治家や官僚を注視するだけではなく、本来主役である当事者である、我々国民が、国会議員の人員削減、公務員給与20%削減を具現化してゆかなければならないとそう感じます。そうしないと、犯罪が根深く蔓延る社会構造や諦めで希望を持てない夢の無い社会になって、日本が凋落の一途を辿るように思います。今こそ何かしたいと、出来ることを全力でしたいと願って止みません。

投稿: | 2011年10月21日 (金) 12時12分

はじめまして
初訪問です。
これからものぞかせてもらいます。

投稿: 壱号 | 2011年10月21日 (金) 17時18分

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