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円売り介入の是非(ハードランディングとソフトランディング)

2012021401 政府・日銀が、円売り介入を公表しない「覆面介入」(約1兆円)を行っていたことが発覚したことで、為替介入の是非が問われている。
 財務省の統計では、2011年度だけで約14兆5000億円の為替介入が行われたが、円高に歯止めをかけるどころか、1年間で5円程の円高になっていることは周知の通りである。
 では、為替介入を行わなかった場合、現在よりも円高になっていたのか?というと、これはハッキリとは判らない。為替介入をしなければ1ドル70円になっていたかもしれないし、あるいは全く効果が無かったという可能性も考えられなくもない。

 では、政府・日銀による為替介入は必要なことなのか?ということだが、私は、「場合によっては必要」だと思う。
 それが、どういう場合かというと、「あまりにも急激な円高が進んだ場合」である。ごく当たり前の意見に聞こえるかもしれないが、「ハードランディング的な円高」が発生した場合は、「ソフトランディング的な円高」になるように調整することは必要だという意味である。

 ここで誤解してはならないことは、政府の役割は“円高を止めること”ではなく、あくまでも“急激な円高にならないように調整する”ということである。

 市場が円高を望んでいるのなら、為替が円高の方向に進むことは止むを得ないし、人為的に為替介入を行ったところで、いつまでも止めることは不可能だ。
 円高という現象自体は、別に悪いことではない。問題は、その円高があまりにも急激に進むことによって発生する悪影響をどれだけ緩和することができるかということである。

 日本の輸出企業の割合は、どう贔屓目に見積もっても、せいぜい20%以下であるので、円高になったところで、日本経済に致命的な打撃を与えることはないと思う。
 そもそも輸出企業の多くは、製品を作る原材料を諸外国から輸入しているのだから、円高による輸出デメリットはある程度は相殺されることになる。ただ、あまりにも急激な円高になった場合、円高差損が相殺されるまでの期間が不透明になってしまうため、そのショックで突然死する企業が出てくる可能性がある。そういった危険性を避けるために、為替介入を行うことは、場合によっては必要であると思う。

 もう1度繰り返し言うと、政府の役割は、“円高を止めること”ではなく、あくまでも“急激な円高にならないように調整すること”である。

 では、安住財務相の意見を見てみよう。彼は記者会見で以下のように述べている。

 「投機的な動きがはっきりし、実体経済とかけ離れて投機筋が自己利益を得るため
  に市場を歪めることがあれば、国益を守るために必要ならいかなる措置も取ると
  申し上げている。それを行動に移しただけだ」

 この言葉からは安住氏が円高についてどういう認識を持っているのか正確には判らないが、投機的な動きが円高に繋がっているというのは本当のことなのだろうか?
 また、安住氏は、「75円63銭で介入を指示し、78円20銭でやめた」ことも明らかにしているが、こういう具体的な数字が出てくるということは、投機云々よりも単に円高を是正したかっただけとも受け取れる。75円台になったからといって、それが投機が原因であるかどうかは判らないはずだ。
 もし、円売り介入が、《円高は絶対的な悪》という認識のみで行われているのであれば、お門違いである。

 よく、「グローバル化やIT化は悪だ」という人がいるが、グローバル化にせよIT化にせよ、その現象だけで見るなら、特に問題はない。これらが問題となるのは、あまりにも急激な変化に耐えられなくなる企業や人間がいるということである。ソフトランディング的に進むグローバル化やIT化であれば、その変化に柔軟に対応していくことができるが、その変化があまりにも急激に進んだ場合、その変化に追い付かずに突然死する企業や職を失う人が必要以上に発生してしまう。そういったハードランディング的な変化を、人為的な政策によって少しでも緩和(ソフトランディング化)させることが可能であるなら、それは否定されるべきものではないと思う。円高もこれと同じである。

 しかし、「グローバル化やIT化や円高は絶対的な悪なので阻止する」と言うのであれば、それはただの鎖国論である。政府の役割は、時代の変化を受け入れた上で、その変化に国民が柔軟に対応していけるようにすることであり、時代に逆行することではない

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