« 『自分自身が可愛くて可愛くて仕方がない人々』の考察 | トップページ | ルネサンス(再生)を放棄した『相続税100%』という愚策 »

ブラック企業誕生の遠因(同一労働相違賃金)

2012031001 民主党は、3月の初め頃に「国家公務員の新規採用を4割削減する」と述べていたが、9日になると「7割(8割)削減する」ということになり大きく変更された。
 実現するかどうかはともかくとして、国民に消費税増税の理解を得るために、身を切る姿勢をアピールした恰好だ。
 4割削減で「若者いじめ」という声が上がっていたが、7割ともなると「若者殺し」とでも形容されるのかもしれない。
 
 最近は橋下大阪市長の影響も手伝って、公務員バッシングというものがこれまでになく異常な盛り上がりを見せている。先日も、大阪市バス運転手の年収問題やスポーツジム紛いの職場(経費の無駄遣い)を問題視する批判があったばかりだ。
 
 橋下氏は「大阪市は赤字経営なので、赤字ではない民間のバス会社の運転手の2倍近い高給は有り得ず、本来なら給料が出るだけマシだと思ってもらわなければならない」というようなことを述べていた。
 これに対して、市バス側は、「公共バスの運営に利益追求を持ち込むのは間違いだ」と返していた。
 
 確かに公共バスの運営に絶対的な利益を求めるのは無理がある。しかし、その理由により「民間の2倍の給料が許される」ということにはならない。多少の赤字経営は仕方が無いとしても、元々、民間企業よりもはるかにリスクが少ない市バスの運転手に、民間のバス会社以上の給料が支給されていることは不自然であり筋が通らない。
 
 「給料がいきなり下がると現在の生活が成り立たなくなる」という声も聞かれたが、それは現在の生活が、あまりにもバブリーだったということである。民間のバス運転手は黒字経営であっても、リスクを背負いながらその半分の収入で生活を切り盛りしているということを忘れてはならない。
 
 仕事における収入の高低を決定するリスクとリターンの関係は、大きく分けて以下の6つのケースがある。
 
 1、ハイリスク・ハイリターン
 2、ハイリスク・ローリタン
 3、ローリスク・ハイリターン
 4、ローリスク・ローリターン
 5、ゼロリスク・ハイリターン
 6、ゼロリスク・ローリターン

 一般的な公務員はクビになるリスクが無いため「5」に該当する。では、市バスの運転手の場合はどうかというと、交通事故を起こして職を失う(自発的に辞職するという意味)可能性は有るので「3」になるかもしれない。
 
 収入の多寡というものは、リスクの多寡に比例する。命賭けの仕事を行っている人の給料は高く、安全で簡単な仕事を行っている人の給料は低いというのが、まともな社会の姿である。生死を賭けたスタントマン仕事が薄給であれば、誰もそんな危険な仕事は行わないだろう。睡眠時間もロクに取れないハードな仕事を行っている人が薄給では、誰もそんな仕事は行わないだろう…と言っても、ブラック企業の場合は話は別である。
 
 そのブラック企業が生まれる1つの原因は、同一労働同一賃金が機能していないことにある。本来、100の仕事を行った人が100の収入を得て、200の仕事を行った人が200の収入を得るという当たり前の労働システムが機能していれば、ブラック企業というものはかなり減少する。ブラック企業ができる遠因は、100の仕事を行った人が200の収入を得たり、仕事をせずに100の収入を得たりしている人がいることにある。もちろん、それだけが原因ではないが、それが一因になっていることは間違いない。つまり、同一労働相違賃金では、割りを食う人が発生してしまうということである。
 
 先に述べた、市バスの運転手と民間バスの運転手が行っている仕事は、ほぼ同一であるはずだ。同一の仕事であっても、これまでは収入に2倍近い開きがあった。これこそまさに、同一労働相違賃金である。その割増し分の給料は大阪市の赤字として計上されているが、このままの状態で、その赤字を解消するとなると、その割りを食う人々が多数出てくることになる。それは、必ずしもバス会社に限らないが、ブラック企業が誕生する原因になっているということである。
 
 民間企業(特に中小企業)に勤めたことのない公務員や政治家の人々には、映画『ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない』でも観て、少しは不条理な厳しい現実を学ぶことをオススメしておきたいと思う。

にほんブログ村 経済ブログへ

|

« 『自分自身が可愛くて可愛くて仕方がない人々』の考察 | トップページ | ルネサンス(再生)を放棄した『相続税100%』という愚策 »

社会問題」カテゴリの記事

コメント

不況期の企業を持ち出して、人件費の圧縮を言うことに疑問があります。
「もし民間企業なら」という語りが許されるならば、それだったら増収増益のプランを描き、商品力によって、組織内の人達が経済的に潤うということを目指してもいいわけです。

ま、役所は役所であり、民間企業ではありませんから、民間企業の待遇は例えに使うこと自体おかしいのですが。

しかし、企業が生産費用より高い価格で商品を売るのは原則として当たり前ですが、それだと国民の総所得では国内で生産された商品を買い切ることができず、在庫が増えていきます。
だから、公的支出による市中への現金投入を、減少させればさせるほど、企業はブラックの色を濃くしていくのです。
アメリカは金融危機の前に、サブプライムローンやレバレッジなど、公的支出の代用となる貨幣投入策をやってましたが、しょせん国家ほど債務に耐えられるわけがなく、金融危機のあと、市場の債務を国に押し付けることになりました。
市場原理主義、自由主義、小さな政府など、結局は無理難題なんですよ。

投稿: クロコダイルPOP | 2012年3月11日 (日) 02時09分

クロコダイルPOP様

>だから、公的支出による市中への現金投入を、減少させればさせるほど、企業はブラックの色を濃くしていくのです。

 公的支出による市中への現金投入が必要というのは理解できるのですが、それを公務員の給料として投入しなければならないという理屈は理解できません。
 例えば、お役所が競争入札無しで民間企業に仕事を発注するというなら、民間企業(ひいては市場全体)が潤うことになりますが、公務員の給料として投入しても、その公務員が生活費以外を全て消費に回してくれなければ、市場は潤わないわけです。
 公的支出をまず公務員の給料として配り、間接的に市中にバラまこうとしても、あまり意味がなく、間接的であるが故に返って非効率な結果になってしまうということです。

投稿: 管理人 | 2012年3月11日 (日) 11時28分

>それを公務員の給料として投入しなければならないという理屈は理解できません。

企業は商品価格より低い人件費というのが原則としてありますから、企業に仕事を発注するということだと、その差額が埋まらないってことなんです。
生産に貢献せず、ただ消費するだけという存在、しかもそれは少人数に限るということで、公務員の給料として投入するのがベターっていう話で、ベストな方法だと言うつもりはまったくありません。
それから、貨幣の温存は、公務員であろうと、民間人であろうと、民間企業であろうと、資本主義の維持継続発展を阻害するので、消費性向の高い人(少数)に貨幣を渡す手段があれば、それがベストなんですけどね。

投稿: クロコダイルPOP | 2012年3月11日 (日) 23時54分

面白い記事ですね♪

投稿: ハーバードナンパスクール佐藤エイチ | 2012年3月17日 (土) 14時58分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/199859/54185179

この記事へのトラックバック一覧です: ブラック企業誕生の遠因(同一労働相違賃金):

« 『自分自身が可愛くて可愛くて仕方がない人々』の考察 | トップページ | ルネサンス(再生)を放棄した『相続税100%』という愚策 »