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“加害者”と“被害者”を混同する人々

2012080901 昨年の8月、菅総理が広島で“原爆”と“原発”を混同した演説を行ったことで話題となったことは記憶に新しいが、今年になっても相変わらず、こういった曲解をしている人々が後を絶たないようだ。

 朝のテレビ番組でも、ある女性コメンテーターがこんなことを言っていた。

 「日本は世界で唯一の被爆国なので、放射能の危険性を訴え続けていかなければなりません

 一見(一聴)すると、至極当然のことを述べているように見える(聞こえる)。おそらく「この発言のどこが可笑しいの?」と思った人がほとんどだろうと思う。しかし、この発言には、“原爆”と“原発”を混同している以前に、実は別の思い込みによる混同が存在している。それは、「なぜ、被爆した国のみが放射能の危険性を訴えなければならないのか?」という点である。つまり、“加害者”と“被害者”の混同である。

 話を解りやすくするために、オウムのサリン事件を例に述べよう。
 オウムが地下鉄でサリンを散布したことによって、数千人という被害者が出たが、その被害者達がサリンの危険性を訴えるだけで充分と言えるだろうか?

 上述した女性の意見を少し変えて考えてみよう。

 「日本はサリン被害国なので、被害者はサリンの危険性を訴え続けていかなければなりません

 こう聞くと、何か不自然な感じがしないだろうか? サリンの危険性は、当時の事件を知る人であれば誰もが皆知っている。別に被害者だけがサリンの恐ろしさを知っているわけではないし、実体験した人しか危険性を訴えてはいけないというわけでもない。
 かなり誤解されそうなことを書いたかもしれないが、私がここで言いたいことは、サリンの本当の恐さを知っているのは、実は加害者であるオウムの方であり、被害者だけがサリンの危険性を訴えるというのは、よくよく考えると筋が通らないということである。

 例えば、通り魔にナイフで刺された人がいたとすれば、その被害者だけがナイフ(凶器)の危険性を訴え続けるというのは不自然だ。なぜなら被害者がナイフの危険性を訴えたところで、通り魔がいなくなるわけではないからだ。ナイフの危険性を訴えるべきは被害者ではなく、むしろ加害者である通り魔なのである。この納得し難い理屈が理解できるだろうか?

 このことは、昨今話題になっている「いじめ」についても言える。イジメによる暴力(精神的暴力)によって傷付いた生徒が出た場合、「イジメはいけないことだ」と訴えるべきは、本来であれはイジメを行った加害者であるべきなのである。なぜなら、その罪深さを1番知っているのは、イジメを行った当人であるはずだからだ。

 ここで例に挙げたものは、全て“加害者が反省(懺悔)する”という前提条件が必要となることは言うまでもない。罪を犯した加害者が正気を取り戻す(=悔い改める)ことによって、その罪の源泉となった物(凶器・狂気)の危険性を訴えるというのが本来のあるべき姿だということである。

 「イジメは恐いものだ」と思うのが“被害者心理”であり、
 「イジメは悪いことだ」と思うのは“加害者心理”である。

 そう考えると、「イジメはいけないことだ」と訴えるべきは、やはり加害者の方だということになる。被害者は罪を犯したわけではないので、イジメ行為に対して反省する理由が無いためだ。
 もちろん、加害者である元イジメっこが「イジメはいけないことだ」と訴えたところで、イジメが無くなるわけではないが、被害者が言うよりも加害者が言う方が理に適っている。

 原爆(化学兵器)もサリン(神経ガス)もナイフ(凶器)も同じであり、「いけないことだ」と言うべきは、実は加害者の方であり、被害者のみが言うべきだとする感情は、非常に屈折した思い込みなのである。分かり易い言葉で言えば、「自虐的な感情」ということになるだろうか。

 まだ納得がいかないという人のために、今度は「日本」(被害者)という言葉を「アメリカ」(加害者)に置き換えてみよう。

 「アメリカは世界で唯一、原爆を使用した国なので、放射能の危険性を訴え続けていかなければなりません

 これなら綺麗に筋が通っており疑問を抱く余地が無い。これこそが真っ当な自己責任論だと言える。

 “被害者”と“加害者”を混同している人々は、その思考形態上、どうしても“核兵器”と“原子力”を同一線上で結び付けようとする傾向にある。その思考形態のことを違った言葉で表現すると「思考停止」と呼ぶ。「感情」のみで物事を判断しようとする人々の総称である。
 悪気が無いとはいえ、こういった人々の言説には気を付けないと、知らない内に間違った方向にミスリードされることになるので、注意が必要だ。

【関連記事】『原子力発電』と『原子力爆弾』を混同する菅総理

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