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お節介で過保護で有り難迷惑な『改正高年齢者雇用安定法』

2012090601 先日、『改正高年齢者雇用安定法』が参院本会議で可決・成立し、日本の企業は再雇用を希望する社員全員を65歳まで雇い続けることが義務付けられることになった。
 2013年から厚生年金の受給開始年齢が1歳ずつ段階的(3年ごと)に引き上げられることが決定されており、2025年には65歳からの支給となる。そのため、「65歳になるまでの間の生活費を保障しなければいけない」ということらしい。

 確かに60歳で定年となり、65歳まで年金が支給されないとなれば、仕事や貯蓄のない人にとっては死活問題と成り得るかもしれないが、問題は死活問題云々ではなく、そのような法律がはたして運用可能なのか?ということである。

 企業が未来永劫潰れることがなく、仕事も永遠に有り続けるという前提でしか、このような法律が問題なく機能することは有り得ない。5年先どころか1年先も全く予測できない時代に、簡単に雇用を5年間も延長して問題が起こらないはずがない。況して、その大部分が1人前の仕事をしていない(失礼)と思われる60歳以上の高齢者であれば尚更である。残念ながら、このような過保護な法律の適用は多くの企業にとっては迷惑以外のなにものでもないと思われる。

 本来、お役人は余程のこと(犯罪等)がない限り、民間企業の経営には口出ししないというのが、まともな資本主義国家(民主主義国家)の常識だが、ガラパゴス国家日本では、そういった当たり前の常識が通用しない。
 日本では、お役人が民間企業の経営・休日・給料にまで直接的に口出し(命令)することが当然という空気が支配しており、ほとんどの国民はそれが不自然なことであることに気付こうともしない。国家総動員体制の戦時中ならいざしらず、21世紀の現代にあって、お役人が民間企業の経営を統制するなどというのは時代錯誤もいいところである。

 このような無茶な法律が全企業に適用されると、結果的に経営が維持できなくなる企業を大量生産することに繋がり、雇用自体も縮小してしまいかねない。いや、雇用は100%縮小するだろう。雇用が足りないことを理由に法律を改正したは良いが、目的とは裏腹に雇用が増々足りなくなってしまうのでは、何のための法改正か分からない。

 日本人の平均寿命は、昔の高度経済成長期と比べると、少なくとも10歳程度は延びているのではないかと思う。そういった生物学的(?)な背景を考慮すれば、定年が60歳から65歳に引き上げられることはごく自然な成り行きであり、そのうち70歳になったとしても不思議ではない。しかしながら、経済のグローバル化と長引く不況の影響で、国内の需要(仕事)自体が減少しており、そういった経済状態を放置したまま高齢者の定年のみを5年延長すると、そのしわ寄せを喰らう形で若年者の仕事は更に減少することになる。早い話、5年間就職できない新卒者が激増してしまうということである。

 この雇用問題を解決する方法は、1に経済成長、2に経済成長、3に経済成長しか無いわけだが、経済を衰退させることにしか興味がないと思われる官主党が国政を壟断している状況では、まともな経済成長は望めそうにない。なんせ、1国の代表である総理大臣が「経済成長」よりも「雇用」が大事というような原因と結果を履き違えた珍説を真顔で述べていた国(政府)である。その経済音痴ぶりは推して知るべきである。
 
 そういった悲観的な政治情勢を考えると、現実的な妥協策としては、若年者の新卒年齢も5年程度引き上げてはどうかと思う。平均寿命自体が大幅に延びているのだから、それに合わせて、社会的な制度自体も根本的に変更すればいいのではないかと思う。
 現代の日本のように労働市場が歪められている影響も手伝い、新卒で就職が決まらずに困っている人が大勢いるわけだから、もう「新卒年齢」というような古臭い概念自体を考え直してもいい頃合いかもしれない。この際、小学校6年、中学校3年、高校3年、大学4年という枠組みも自由に変えてしまってはどうかと思う。例えば、小学校入学は10歳にしても構わない。そこから25歳程度までは学生ということにして、就職するために必要な学習をした後に30歳程度までに就職するということでも構わないのではないかと思う。平均寿命が延びているのだから、新卒年齢も22歳(大卒の場合)であり続ける必要性は無いのではないかと思う。そういった自由度の高い社会になれば、就職できずに自殺するような人間も大幅に減少することだろう。

 少し極論めいたことを書いてしまったかもしれないが、それぐらい融通の利く社会の方が良いのではないかということである。

 「そんなのは暴論だ!」と批判する人がいるかもしれないが、老年者の出口を変更するなら、若年者の入口も変更してもよいのではないか?という至極単純な疑問を述べたまでの話である。

 「学生期間が延びれば、学費はどうするのか?」という疑問もあるかもしれないが、20代の人間ならアルバイトしながら勉学に励むことも可能だろう。それに、定年が65歳になるなら、その5年間(61歳から65歳)に稼いだお金で親が子供の生活費の一部を工面(=世代間所得の移転)することもできるだろう。それすら「できない」と言うなら、それはただの甘えである。

 あくまでも以上は妥協論である。本来、年金などは無いと考えた上で生活設計を行うことが理想だと思うが、自分自身の人生設計まで国に丸投げしなければ気が済まないという依存心の強い国民性が、この国の将来に暗い影を落としていることだけは間違いない。
 その依存心に応えるかのように、国は「国民は愚かだから生活の面倒をみてやらなければいけない」というお節介を焼く。そして国民も「国が国民の生活の面倒をみるのは当然だ」という根拠の無い思い込みを抱くことになる。家庭に喩えるなら、「過保護な親」と「我が侭な子供」の構図に似ているが、実はこの構図こそが「国家社会主義」の特徴でもある。
 こういった官民共通の国家社会主義的な思想の蔓延は、国家を衰退させる負のエネルギーにしかならないことは既に歴史が証明している。この冷厳な歴史的事実を知れば、現在の日本が如何に間違った方向に舵を切っているかがよく分かる。

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「経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

典型的な、ゼロ・サム思考で、経済学的には、完璧な間違いです。

 ゼロ・サムとは、雇用量は一定、ゆえに高齢雇用者増=若者雇用減という、現実的にはありえない、空理空論(頭の中でだけで存在する、神学のようなもの)です。

 実証的には、若者雇用が増えるときは、高齢者雇用も増えているときで、若者雇用が減っているときは、高齢者雇用も減っている・・・

 つまり、両者は、反比例の関係ではなく、比例関係にあるということです。

 好況期は、若者も、高齢者も雇用が増えます。不況期は反対です。

 なぜ、こうなるかですが、GDP増(好況期)=GDI増(所得)=GDE増(支出)は、全体の所得が増えることなのです。

 全体の所得が増える(例えばGDP=1%増)ということは、雇用者所得(GDI)も1%増ということです。

 経済を考える上で、絶対に捨てなければいけないトンでも論の筆頭が、マージャンのようなゼロ・サム思考です。

 マージャンは、限られた点数の奪い合いのことです。経済では絶対にありえない前提です。日本に限っても、世界を見渡しても、GDP増=GDI(所得増)のことです。

 gdpの三面等価さえ知っていれば、ゼロ・サム思考をすることなどありえませんし、ゼロ・サム思考をしている時点で、「経済オンチ」を露呈する事になります。

投稿: 菅原晃 | 2012年9月 7日 (金) 22時11分

菅原晃様

 コメント、有り難うございます。

 高齢者が若年者の仕事を奪うような書き方をしたので誤解されたのかもしれませんが、私はゼロ・サム論者ではありません。パイの奪い合いをせずとも、経済成長すればパイは増えるが、現在の無策な政治状況では、パイの奪い合いをしなければならないという皮肉を述べているわけです。(「経済状態を放置したまま」という条件も書いているでしょう)
 経済成長を無視した状態では、ゼロ・サムか、あるいはそれ以下の社会になるということを問題視しているわけです。
 わざわざ難解な理論を述べるまでもなく、そんなこと(=経済はゼロ・サムではないこと)は当たり前の話です。

投稿: 管理人 | 2012年9月 7日 (金) 23時12分

>現在の無策な政治状況では、パイの奪い合いをしなければならないという皮肉を述べているわけです。

 現在、四半期を見ても、年を見ても(2009年以降)、GDPは拡大していますよ。

 どこに「パイの奪い合い」なるものが?

投稿: 菅原晃 | 2012年9月 7日 (金) 23時32分

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