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BOOK『どうせ死ぬなら「がん」がいい』を読んで。

2012121501 少し前にベストセラーとして話題を呼んだ『大往生したけりゃ医療とかかわるな』の中村仁一氏と、『がん放置療法のすすめ』等で有名な近藤 誠氏の対談本『どうせ死ぬなら「がん」がいい』を読んでみた。

 前著同様、本書も読者に誤解を与えかねないような挑発的なタイトルになっており、中身の方も負けじと「がんの9割は放置がいちばん」と現代医療に真っ向から異を唱える内容になっている。しかし、こういう思い切った題名の本を出版できるということは、それだけ自身の説に絶対的な自信が有るということなのだろうと思う。
 近藤氏は、どんな反論があっても論破するだけの理論武装を行っているらしく、何年か前までなら論戦を挑んできた医療関係者もいたそうだが、現在では誰もが逃げ出すらしい。

 私も父親をガンで亡くした経験から、自らの医療無知を悟り、ガンという病気については自分なりに学習した経験があるので、この御二方の意見には9割方、同意している。同意できない残りの1割は、少々、虚無的な発言が目立つというところだろうか。
【関連記事】BOOK『大往生したけりゃ医療とかかわるな』を読んで。

 つい最近も、歌舞伎俳優の中村勘三郎氏が食道がん手術後の治療で肺の疾患を患い死亡したという痛ましいニュースがあったばかりだが、本書はこの出来事を考える上でも実にタイムリーな書籍だと言える。

 テレビのニュース等では、中村勘三郎氏は“食道がんで亡くなった”というようなニュアンスで報じられていたので、本当に死因は食道がんだったと思っている人が多いかもしれない。
 しかし、彼の場合、食道がんの手術は成功していたので直接的な死因は食道がんではない。手術後の抗がん剤治療によって免疫力が大幅に低下したことにより肺炎を発症したことが直接的な死因だろうと思う。実際、抗がん剤治療によって抵抗力が激減して肺炎で亡くなるケースが多いことはよく知られている。
 
 あくまでも仮定の話だが、失礼を承知で中村勘三郎氏が食道がんの治療をせずに放置していた場合をシミュレーションしてみよう。その場合、どうなっていたかというと、ほぼ間違いなく現在も(元気で)生きていたはずである。残念ながら結果的には、手術や治療を行ったことによって寿命を縮めることになってしまったことは疑いようのない事実である。

 では、手術後の抗がん剤治療はしなくてもよかったのか?ということだが、本書はその疑問に答える内容になっている。と言うよりも、手術自体が必要無かったのではないか?、がん検診もする必要が無かったのではないか?というのが彼らの主張でもある。

 「そんなのは結果論だ!」「がんが転移していた可能性もあるだろう!」と言う人がいるかもしれないが、実はそうとも言えないことが本書には書かれている。
 ただ、何事にも例外はあるように、がんという病気にも様々な例外があるので全てが彼らの言う通りにはいかないことも事実だ。本書内にも「9割」という言葉が使用されているのは、そういう意味を含んでいる。この辺は非常にややこしい構造になっているのだが、ある程度のガンの知識を得るとその構造が把握できるようになり、ガンに対する認識のコペルニクス的転回を体験することになる。

 この本の帯にはこう書かれている。

 「日本人よ、医者と医療を妄信するな

 これは実に含蓄のある言葉だ。現代医療というものは、ある意味で医者を神様と仰ぐ(悪い意味での)宗教と化しており、多くの人々は自分の頭で病気のことを考えずに、全ての判断を医者に委ねてしまう。己の肉体だけでなく精神も、そして時には、命すらも医者に預けてしまう。
 私も何年か前まではそういった部類の人間だったのかもしれないが、不幸な経験から幸運にも現代医療について少しだけ学ぶ機会を経て、「無知であることは恐ろしい」ということを後悔とともに実感した。
 そしてもう1つ実感したことは、医療の世界にも「知は力なり」という言葉が存在するということだった。本書は、きっとあなたの人生に少なからずプラスになる知力を与えてくれるはずだ。


【追記】
 BLOGOSのコメント欄を見ると、「新書2、3冊で判断するな」という批判や、「信じる根拠がUFO等と同じでは…」という疑問が有るようなので、質問に答える形式で以下に追記しておこうと思う。

>「新書2、3冊で判断するな」

 ガンの関連本は数十冊は読んでいます。

>「信じる根拠がUFO等と同じでは…」

 敢えて文章を推測形にしただけであり、実体験(医療現場を見ている)を通して述べています。

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