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BOOK『アメリカは日本経済の復活を知っている』を読んで。

2013013001_2 現在、なぜか大型書店でもなかなか入手できなくなっている話題のベストセラー『アメリカは日本経済の復活を知っている』を遅ればせながら読んでみた。著者は言わずと知れたアベノミクスの指南役とも言われているイェール大学名誉教授の浜田宏一氏。

 経済の本といえば、専門用語や数式や統計グラフ等でビッシリと埋め尽された難解な本も数多いが、本書は平易な分かり易い文章で書かれているので、あっという間に読み終えることができた。浜田氏も述べておられるように、本書は経済学の専門書という趣きではなく、ノン・フィクションドラマに経済のお話を盛り込んだような感じの本なので、経済学に興味が無いという人でも十分に理解できる興味深い内容になっている。(次回作でより専門的な本を出版される予定らしい)

 少し話は逸れるが、マルクスやケインズの影響もあってか、経済学の本というのは、とにかく難解なものが多い。特に日本の場合、マルクスに感化された左翼学者が多いこともあってか、経済学だけでなく社会学にしても、簡単なことをどれだけ難しく書くかを競うような風潮がある。まるで、誰にも理解できそうにない高尚(?)な文章を書くことがインテリの条件だと言わんばかりの本も多い。
 難しそうに書けば偉そうに見えるという学者特有のスケベ根性があるのかもしれないが、古今東西、真実というものは単純にして明快なものであり、昔から、「頭の良い人は喩え話が上手い」と言われるように、難しいことを簡単に書くことのできる人こそが実は本当に頭の良い人でもある。

 ということで、本書も非常に分かり易く書かれており、浜田氏の頭の良さが窺える内容になっている。ここで言う「頭の良さ」とは、決してIQが高いとか学歴がどうかということではなく、素直に自分の頭で考えることができるという意味での「頭の良さ」であることは言うまでもない。本書にも書かれていたが、やたら法律や経済だけに詳しい専門バカのような人間のことを意味しない。

 浜田氏は「リフレ派の重鎮」ということで批判されることも多い人物ではあるが、ここではリフレ政策の善悪については敢えて述べない。今回、アベノミクスによる金融緩和の発表によって大きく円安に動いたということだけは間違いなく実証されたことなので、この部分については素直に評価されるべきだと思う。

 円安が良いことかどうかはともかく、なぜ金融緩和の発表によって円安になったのか?という理由も実に単純明快に解き明かされている。
 私も以前の記事で少し述べたことがあるが、結局、現代の先進国はデフレを少しでも緩和するために自国の通貨を安くする競争(通貨安競争)を水面下で行っており、その方法論が金融緩和なのだというのが、浜田氏の説(と言うより世界経済の常識)なのだろうと思う。
 そんな中で、日本(銀行)だけが通貨(円)を刷らずにいれば、日本の通貨だけが独歩高(円高)になるのは、至極当然の帰結だったというわけだ。このことは、最近発売され同じくベストセラーになっている渡邉哲也氏の『これからすごいことになる日本経済』にも書かれていた。

 今回の日本の金融緩和を否定している国も出てきつつあるが、これもよく考えれば当たり前の話で、他国(日本)が金融緩和をすることは自国にとって都合が悪いということなのだろう。日本だけが金融緩和を行わないことに、シメシメとほくそ笑んでいた国々が「余計な知恵を付けやがって…」と批判し始めたという構図である。
 かつてのアメリカのように自国の通貨が騰がることを喜ぶ消費国家は別として、大抵の先進国は自国の通貨が安くなった方が都合が良いわけだ。

 急激な円高を抑制するためには、民主党が行った為替の「円売り介入」のような対症療法的なものではなく、より根本的な解決法(大々的な金融緩和を実施すること)を世界に向けて発信する必要があった。そういう本気のシグナルを世界に向けて発信しなければ円高を是正することができなかったというのが本書の要諦だが、その理屈は単純ながらも確かに筋が通っている。

 本書は、現在進行形で我々の眼前で繰り広げられている経済現象(円安、株高)の理由を知る上で、実にタイムリーな書籍であり、現在の日本経済市場を動かしているバックグラウンドを知るためには必読の書物であると言える。リフレ派であろうと反リフレ派であろうと、日本経済の先行きを考える上では、読んでおいて損は無い本だと思う。できれば、経済人だけでなく、一般の人々にこそ一読をオススメしたい。

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コメント

そうかな?今回の円安は「今まで以上の緩和をするだろう」と言う期待だけで動いており、実際には日銀は緩和を数年続けていると思う。通貨供給に変化は起きていない。問題はその緩和に効果がないことで、FRBだって結局手詰まりになっている。今回の円安は単に通貨切り下げが起きるという可能性を見た資金のドル回避ではないかな。

投稿: sudokusmith | 2013年1月31日 (木) 00時31分

↑↑
 通貨安固定政策の中国発のデフレ圧力が先進各国にかかってるのだから、緩和するのは当たり前。
 問題は緩和が十分か否か、経済体温(インフレ率)を適正化する程度に行われているか否か、なのです。

 で、日銀のこれまでの緩和が不十分だったからこそ、日本は過去20年、デフレ傾向だった。
 同じ時期に先進国のインフレ率は2%付近で安定しています。
 米国もリーマン後、2年もしないうちに2%に復帰してる。 米国経済はその後、欧州ショックがあっても回復傾向持続です。 FRBは手詰まりになってない。

投稿: joju | 2013年2月 3日 (日) 17時30分

ブログ主さんの意見に大方賛成です。
しかし、金融緩和=通貨安競争、という見方は誤りと思います。

現在の先進各国の金融緩和はインフレ率2%への安定を行うものであり、これは(間接的に)為替レートを適正化させます。 通貨安を目指すものではなく、純粋に国内政策なのです。

 目標インフレ率2%ならば為替レートは適正化するだけです。
 日本は、これまで(日銀は明言してませんが)目標インフレ率がマイナスで、円高に振れ過ぎてた。
 だから、適正付近の目標インフレ率(2%)を表明しただけで円高是正になった。
 今起きてることは円高是正、適正レート化であって、適正レートを超えて円安に動かそうとしてるわけではないのです。

投稿: なおと | 2013年2月 3日 (日) 17時38分

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