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デフレと鬱(うつ)病の関係

2013082501■1998年から続く「15年鬱(うつ)病」

 2年前(2011年)に厚生労働省が、これまでの「四大疾病」(ガン、脳卒中、心臓疾患、糖尿病)に新たに1つの疾病を加えたことによって「五大疾病」という言葉が生まれた。その追加された疾病とは「精神疾患」という病気であるが、基本的には鬱(うつ)病を中心とした「心」の病のことである。

 よく「デフレ」は「鬱(うつ)病」、「インフレ」は「躁(そう)病」に例えられることがあるが、まさに言い得て妙だと思う。1998年から始まったとされる日本の「15年デフレ」は、人間に喩えると、15年間も鬱(うつ)病が治らない状態だとも言えるだろうか。
 鬱(うつ)病は自殺の原因としても大きなウエイトを占めているが、現在の経済的理由による自殺の根本的な原因はデフレであるからだとも言える。
 この1998年から始まった日本のデフレの原因は、その時期的理由から、主として次の2つが挙げられることがある。

 1、1997年の消費税増税
 2、1997年のアジア通貨危機

 基本的にアベノミクス肯定派は前者であり、御用学者は後者であるらしい。そのせいか、アベノミクス否定派には消費税増税に前向きな人が多い。
【参考文献『アベノミクスを殺す消費増税』(田村秀男著)】

 人間の精神(心)というものは個人差が有るとはいえ、実に不安定なもので、失恋、離婚、失業、家族の大病や死などで、誰もが鬱(うつ)病になる可能性がある。と言うよりも、人生において1度も鬱(うつ)状態に陥ったことのない人を探す方が大変かもしれない。
 失恋や家族の死による鬱(うつ)状態というものは、ある程度、時間が経過することで自然と治っていくものだが、失業や大病の場合、その状態から抜け出さない限り、いつまでも鬱(うつ)状態が続く可能性が有る。新卒者がいつまでも就職できずにいる状態が続くと自殺に繋がるという現象は、まさに鬱(うつ)病の発症メカニズムと軌を一にしている。

 現代の日本経済というものも、先行きが見えない状態が15年(20年)も続いているため、デフレ状態から抜け出すことができずにいるとも言えるだろう。

■インフレを嫌いデフレを好む封建領主達

 高度経済成長時代やバブル経済時代は、明らかに先行きが見えていた。たとえそれが集団的錯覚であったとしても、人々は日本の将来は良くなるというイメージを抱き、そのことを信じて疑わなかった。ゆえにモノの価値が上がっていくというインフレ状態を素直に受け入れることができた。

 バブル時代、繁華街でタクシーを捕まえるために、片手に1万円札を握りしめてタクシーを呼ぶという現代では考えられないような羽振りのよい人々がいたことは、もはや語り草となっているが、その姿はまさしくインフレを象徴する「躁(そう)状態」の典型であった。
 誤解を恐れずに言えば、デフレに慣れきった現代人が、初乗り500円で乗れるタクシーに、その20倍もの金額を提示する(または実際に支払う)ことに躊躇しない人間を観れば「躁(そう)病患者」に見えたことだろう。

 デフレというものが精神的な鬱(うつ)状態であるとするならば、その状態から抜け出すために必要なことは、「未来は良くなる」というイメージを国民に与えることに他ならない。金融緩和によって円安、株高になったことだけで未来が良くなるわけではないが、一部の人々には少しは明るい未来を予感させることはできた。

 一方、金融緩和を否定している人々は、現状のデフレ状態を良しとしている。自らが鬱(うつ)病を患っていないという理由によって、「鬱(うつ)病を患った人々の気持ちなど知るか」と言わんばかりに。その姿は自らの金融資産がインフレで目減りすることを恐れる封建領主のようでもある。
 現在、一生食うに困らない金融資産や、一生食うに困らない地位を有している人々にとっては、モノの値段が下がり続けてくれる方が良いというわけだ。デフレ容認主義者というのは、一見、現状維持主義者を装ってはいるが、実のところは現在の身分を固定したいという既得権益主義者でもある。官僚がインフレを嫌う理由もまさにそこにある。

■「デフレも気から」の経済学

 昔から「病は気から」「景気は気から」と言われるように、「デフレも気から」「インフレも気から」と言うこともできる。「気」の別名である「」が変化しない限り、経済は動かない。

 経済の商行為においても、「1円でも多く値切ってやれ」という貧しい思考を脱皮して、「1円でも多く儲けてもらおう」という発想に切り替えることができれば、自ずと景気は良くなっていく。先に述べたタクシーの件は行き過ぎだが、チップを支払うという精神は非常に重要だ。実際の労働力以下の対価しか支払う気はないというような貧相なデフレ思考を捨てなければ健全なインフレにはならない。

 現在の日本では、「非正規雇用はいけない」と抗議している人々は多いが、パートやアルバイトという非正規雇用で成り立っている業界に対して抗議している人々は見かけない。パートやアルバイトで成り立っている安価なファストフード店の前で、「非正規雇用は止めろ」と抗議している人はいない。
 では、なぜそういった人々がいないのかというと、ファストフード店の従業員が全て正規雇用者になれば、メニュー料金が大幅に上がってしまうことになるからだ。300円以下で食べれる牛丼が600円になって困るのは、「非正規雇用は止めろ」と言っている人々でもあるからだ。
 こういうのを「偽善」と言う。自分達は正規雇用を願うが、他人は非正規雇用でも構わないという封建領主的な思考がそこに有る。そして、その思考こそが日本に広く蔓延し深く根ざした「デフレ思考」なのである。これは難治性の精神病のようなものであり、並大抵のことでは完治させることはできない。15年間も「モノの値段は下がる」というお題目を毎日唱えてきたカルト教の信者が、その洗脳から脱皮するほどに難しい問題だとも言える。

 いらぬ曲解を避けるために、予めお断りしておくと、ここで述べていることは、「ファストフード店の従業員を全て正社員にせよ」ということではない。他人に対して「1円でも安い商品を提供しろ」という姿勢を取り続けるのであれば、「自らの給料も安くなっていくことを受け入れなければならない」ということであり、その姿勢が変わらない限りデフレから脱するのは難しいという話である。

 デフレ放置論者の難儀なところは、インフレを否定することによって自らが悪性のインフレを呼び込む手助けを無意識的に行っていることに気付いていないところだ。もしアベノミクスが成功して適度なインフレ状態にすることが可能であったとしても、その芽を自らが摘んでいることに気付いていない。それゆえに、アベノミクスの正否に関係なく、どちらに転んでも批判できるという非常にズル賢い立場を意図せずに手に入れることになる。

 化石燃料や消費税が上がることによって齎される間違ったインフレ現象を観て「物価が上がった」「デフレの方が良かった」と言うような人物には要注意だ。今後、そういったトンチンカンな評論家や御用学者が出現する可能性が有るので、騙されないように注意しよう。

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