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『地上の楽園』での「自堕落で腐敗した生活」

2013121401■“資本主義は悪いもの”という刷り込み報道

 この数日間、北朝鮮の実質ナンバー2の権力者だったとされる張成沢(チャン・ソンテク)氏が粛清されたというニュースが飛び交っていたが、ついに処刑が執行されたという恐ろしいニュースが全世界に伝えられた。
 身内であろうと情け容赦なく極刑に処すとは、つくづく恐ろしい国ではあるが、先日、出かける前に朝のテレビ番組を横目で観ていると、何気なく、以下のような言葉が耳に入ってきた。

 「張成沢氏は(中略)…資本主義的な生活をしていた…」

 これを聞いて、「えっ?」と我が耳を疑った。

 北朝鮮では、国内に資本主義を持ち込んだ人間は処刑にされるということはよく知られたことだが、このテレビ番組の発言には違和感を覚えずにはいられなかった。もちろん、解説者も意図的にこんな発言をしたのではないと思うが、世間一般の人々に対して誤解を与えかねないのではないかと少し心配になった。仮に皮肉で言っていたのだとしても、このような発言が公の電波に乗って大々的に行なわれると、その言葉を聞いた物心のつかない子供などは“資本主義は悪いもの”というような印象を無意識のうちに刷り込まれてしまうことになる。

■「自堕落で腐敗した生活」は資本主義の専売特許か?

 北朝鮮での張成沢氏に対する裁判文書には、「彼は2009年以降、あらゆる種類のポルノ写真を仲間に配り、退廃的な資本主義者のライフスタイルを私たちの社会に持ち込んだ。彼は自堕落で腐敗した生活を送り、行く先々で浪費した。」とあるらしいが、今時、「自堕落で腐敗した生活」が資本主義者の姿だなどと思っているのは思想統制された独裁国家の人間だけだろうと思う。ちょっと知識の有る人であれば、「自堕落で腐敗した生活」は資本主義者の成れの果てではなく、どちらかと言えば、特権階級を持つに至った共産主義者が最終的に陥る姿であることは知っている。

 実際のところは、張成沢氏が本当に「自堕落で腐敗した生活」を送っていたのかどうかは定かではないが、日本のアナウンサーであれば、以下のように言うべきだったのではないかと思う。

 「張成沢氏は(中略)…共産主義的な特権階級生活をしていた…」

 こう言っていれば、出かける前に変な違和感を感じることもなかっただろうし、本記事を書くこともなかっただろうと思う。
 この違和感の正体をもっと突き詰めて書くと、共産主義国というのは基本的に人間の上位概念である「神」という認識が存在しない国である。逆に資本主義国というのは、形骸化していようとも「神」という認識が存在する国である。
 なぜ人間は「自堕落で腐敗した生活」をすることがいけないのか? その思想の根底にあるのは「神」の目というものであり、人間として恥ずかしくない生き方というものが意識されているからである。と考えると、北朝鮮においては「自堕落で腐敗した生活」がなぜいけないのか?という質問に対する答えは有って無いに等しいことになる。しょせんは人間が決めたただの決まり事(法律のようなもの)に過ぎないのだから、その禁を破ることに罪悪感は伴わないことになる。
 つまり、精神的に「自堕落で腐敗した生活」を是正しようとするストッパーが機能しないのは資本主義国ではなく、共産主義国の方なのである。
 この辺のところはマックス・ウェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』を読めばよく解るかもしれない。

■「地上の地獄」が「地上の楽園」に見える思想

 それにしても、一国を統べる思想というものは、げに恐ろしきかなと改めて実感した。我々、日本に住んでいる人間から観ると、正直、処刑された人間の方が処刑した人間よりもまともではないのか?と思えてしまうが、かつて「地上の楽園」と言われた国ではそう思わない人が大勢いるらしい。
 先に「刷り込まれる」という言葉を使用したが、まさに生まれた時にその地を統べている誤った思想が心の奥深くに刷り込まれてしまえば、善悪というものの倒錯にも気付かないということも有り得るわけだ。善人が悪人に見え、悪人が善人に見えるという、善悪がひっくり返った状態を疑問にも思わないことほど恐ろしいことはない。

 「平等な社会」を目指すという思想を掲げた国が、自分達が「自堕落で腐敗した資本主義」と批判する国の人々よりも優しさや融通性に欠け、人の命や人権を軽く見ているという現実を、彼らはどう見ているのだろうか?

 「教育とは、世界を変えるために用いることができる最も強力な武器である」というのは先ごろ亡くなられたネルソン・マンデラ氏の言葉だが、確かに人間には教育が重要だ。しかし、その教育の土台にある思想の重要性はその比ではない。ここが間違うと、国そのものがカルト教と化してしまうということを、彼の国は身を持って証明してくれているかのようだ。
 「地上の地獄」が「地上の楽園」に見えるような人がいたとすれば、その人物は立派なカルト教信者である。

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