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「便乗値上げ」を全否定するべからず。

2014022301■QBハウスの値上げは便乗値上げか?

 このところ、消費税増税が迫ってきたこともあり、企業はあらゆる商品価格やサービス価格の改訂を余儀無くされている。中には消費税増税分を内税としてサービスする羽振りの良い企業もあるものの、ここぞとばかりに便乗値上げに踏み切る企業も多いようだ。

 例えば、理髪店のQBハウスは、これまでのカット料金を1000円から1080円に値上げするらしい。これまで内税として消費税分の50円をサービスしていたのかもしれないが、そのサービスは取り止め、外税として請求する料金設定に切り替えたことになる。
 と言っても、そのことを批判するつもりは全くない。むしろ、妥当な判断だろうと思う。来年には消費税が10%になると言われている状況下で、税込み1000円に拘っていると増税の度に利益は目減りしていくことになるので、税抜価格を1000円固定にして、あとは税金分を上乗せするという当然の判断をしただけだろうと思う。

 私は既存の理容店を利用しているので、QBハウスの料金設定がどうなろうとも全く関係がないのだが、QBハウスを利用している人からすれば「3%の消費増税で、なんで8%も料金が上がるんだ!」と文句を言うかもしれない。
 しかし、もともと、1000円という破格値なのだから、これ以上、デフレを推し進めるような さもしい文句や苦情は控えた方がよいのではないかと思う。文句を言うのであれば、便乗値上げ(?)したQBハウスではなく、消費増税の決定を行った政府に対して言うのが筋というものだ。

 もともとベラボウに高い商品が便乗値上げで更に高くなるのは問題だが、もともと安過ぎると思われるようなものは、この際、便乗値上げに踏み切った方がよいと思う。日本の不況は消費不況だが、もともと安いモノの値段を更に下げたからといって、モノが格別売れるようになるわけではないし、景気が良くなるわけでもない。
 消費者の「価格は下がっていくのが当たり前」、生産者の「1度下げた価格は絶対に上げることができない」というような尻すぼみのデフレ根性を見直さない限り、薄利経済にどんどん拍車がかかり、マクロ的な経済状況はますます悪化していくことになるので、もうこの辺で、デフレ教の洗脳から脱した方がよいのかもしれない。

■牛丼離れする牛丼メーカーと消費者達

 あるいは、身近なところで言えば、牛丼価格というものがある。これまでデフレ経済を象徴するかのように価格が下がっていくことが当たり前とされてきた牛丼価格も、今後は上昇に転じるかもしれない。と言うよりも、最近は消費者の牛丼離れが加速しているらしく、その空気を感じ取ったメーカー側も牛丼を主力商品とは見ていない傾向があり、別の商品開発に力を入れているらしい。「なか卯」を始め、「吉野家」「すき家」も揃って、すき焼き風メニューに移行しつつある。

 ところで、なぜ牛丼は売れなくなってきたのだろうか?

 「飽きたから」という答えが圧倒的に多そうだが、理由は他にもいろいろと考えられる。しかし、ここで大事なことは、「安くすれば売れ続けるわけではない」ということである。
 実際のところはどうか分からないが、イメージ的には国全体として少し景気が良くなってきたという雰囲気があるので、最安の目玉商品である単品牛丼に拘る消費者が減少したということなのかもしれない。牛丼メーカーが安値競争に鎬を削ってきた単品牛丼は、言葉は悪いかもしれないが「客寄せパンダ」的な商品でもあったと思う。牛丼(並)単品だけの注文ではほとんど利益は出ないが、付随する商品をセットで販売することによって少なからず利益を得ていたのではないかと思う。

■注意するべきは「便乗値上げ」ではなく「利益は悪」とする思想

 牛丼は、カレーやラーメンと同じく、飽きの来ない商品ではある。しかし、カレー店やラーメン店と同じく、継続していくために最も大事なことは「値段」ではなく「」である。
 多くのメーカーは、デフレ下では「味」よりも「価格」ばかりに目(心)を奪われてきた。その風潮に呼応するかのように消費者達も「価格」ばかりに目(心)を奪われ、肝心の味を追求するという本来の食文化というものを忘却してきた。

 「味」とはつまり「文化」である。「貧すれば鈍する」という諺の通り、人々はお金に余裕がなくなれば、「味」よりも「お金」に固執してしまう。
 「お金の無いところに文化は生まれない」、デフレ社会は、その言葉の本質を理解するには、まさに格好の時代だとも言える。しかし、もし「お金」や「利益」を悪とする思想がデフレの中に含まれているのであれば、その思想は社会を貧しくし、文化を破壊する危険性を秘めていることになる。
 デフレ自体には善も悪もないが、デフレ社会の中で「富を否定する」空気が生まれ、それが正当化されると、デフレは悪になってしまう。

 便乗値上げを闇雲に否定する行為も、「富を否定する」側に立てば悪に転じる可能性がある。「便乗値上げ反対」という言葉の中に「利益は悪」とする思想が紛れ込んでいるのであれば、要注意だ。

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