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BOOK『なぜ日本人は、こんなに働いているのにお金持ちになれないのか?』を読んで。

2015052901■「日本人は、世界一、お金のことを知らない」

 本書は一見すると分厚いハードカバー本なので、読むのに少し時間がかかりそうだな…と思ったものの、実際に読んでみると文字数は少なく、実感的には新書よりも早く読み終えることができた。
 内容的には非常にシンプルな本であり、著者が旅行した十数ヵ国の備忘録的な簡単な紹介(体感的な物価など)と、お金の歴史と仕組みを上手くミックスして書かれている。著者の言う「つながりキャピタリズム」という概念は、私の認識不足のせいか、あまりピンと来なかったが、お金というものを考えるという意味では、参考になるところが多かった。

 この本のタイトル、「なぜ日本人は、こんなに働いているのにお金持ちになれないのか?」と聞かれると、思わず考え込んでしまう人も多いかもしれない。著者はその答えを求めて、世界一周の旅に出かけるのだが、バックパッカーとして2年間、世界40ヵ国を旅して気付いたことは、「日本人は、世界一、お金のことを知らない」という事実であった…そんな興味深いプロローグで本書は始まる。

 では、日本人はなぜ、お金のことを知らないのか? それは、「お金=汚いもの」という無意識の誤解のもと、お金のことを話すこと自体がタブー視され、お金の教育を受けてこなかったからだと述べられている。

 日本の義務教育課程でお金の教育が行われていないのは当然としても、著者は高校・大学でも「お金とは何か?」という本質的な問題を学ぶ機会はなかったと書かれている。

 言われてみれば、実際にその通りであり、私自身もせいぜい大学で簿記を勉強した程度であり、「お金とは何か?」という基本を学校で教えられた記憶がない。社会に出てからは、誰から教えられるまでもなく必然的にお金のことを考えるようにはなったものの、社会経験から得た知識よりも、そのての書籍から得た知識の方が多いかもしれない。

■ネガティブなお金観を持った人々

 個人的に本書で最も興味深かったのは、お金持ちの中にも「ネガティブなお金観」と「ポジティブなお金観」というものがあるという部分だった。

「ネガティブお金観を持つお金持ちは、根本的にお金の持つパワーそのものにとらわれています。まるで、お金は他者を支配するための「力」であるかのように。お金があれば他者を自由にできるし、逆にお金がなければ他者に自由に使われてしまう。そんな、もはやお金のあるなしに人生を支配された価値観を根底に持っているので、お金集めに必死になるし、そのお金を他者への暴力的な支配の道具として行使します。」
【引用文献】渡邉賢太郎『なぜ日本人は、こんなに働いているのにお金持ちになれないのか?』いろは出版株式会社(2015).

 なるほど、確かにこういう思想を持った人は実際にいる。本書ではお金持ちに限定して書かれているが、お金持ちでない人の中にも、このようなネガティブなお金観を持っている人は大勢いるように思う。
 “お金は他者を支配するための「力」”などというさもしい考えを持っている人は、結局、その自分自身の囚われた考えの通りに、自らも他者に支配される立場に置かれることになってしまう。(注:必ずしも実際に支配されるというわけではなくて、“支配されている”という思い込み(妄想)を抱いてしまう)
 それゆえに、ますますお金に執着するという悪循環に陥ることになるのだが、なぜそうなるのかが自分では解らないという悩ましさを抱えている。

■「景気が悪い…」という言葉の意味するところ

 日本人の多くが、お金のことを詳しく教えられたわけでも、深く考えたこともない証拠として無意識的に発される言葉(口癖)に以下のようなものがある。

 「景気が悪い…

 この「景気が悪い」というのは、どういう経済状態なのかというと、一言で言えば、「お金が循環していない」ということだろう。
 では、「景気が悪い」と嘆いている人々は、なにか景気が良くなる努力をしているのか?と問えば、答えに窮する人がほとんどだろうと思う。
 
 「景気が悪い」を「景気が良い」にするために必要なことは、マクロ的には「お金を使う」ことになるはずだが、「景気が悪い…」と言うばかりで、自分からは率先的にお金を使おうとせずに、誰かが大々的にお金を使ってくれるのを待っている状態、それがこの言葉が持つ意味とも言える。

 つまり、「景気が悪い、誰かお金を使ってくれないかなあ…

 これが、「景気が悪い…」という言葉の本当の意味であり、その言葉には他力への依存心というのものが多分に含まれている。

 一般的に、景気が悪い時には、どんな状況でも効率的に仕事ができるように(または仕事に就ける能力を身に付ける)努力をすることが大事だと言われることがあるが、実はもう1つ、全く別の努力が存在する。それは、“気前よくお金を使う”という努力である。

 前者の自分の能力を磨くという努力は、景気が悪いという状況は変えられないという意味では、少々、受動的な努力とも言える。しかし、後者のお金を使うという努力は、景気そのものに直接影響を与えるという意味では、能動的な努力であるとも言える。

 国の景気が悪い時に必要なことは、お金を使う(循環させる)ことだという最も基本的なお金の常識を教育で教えられていないため、日本では、不況下では節約するとか、貯金をするとか、安値競争をするとか、全く正反対のことを勧める向きがある。これなどは、自分さえ良ければよいというミクロ経済論者の典型だとも言えるが、ミクロ経済学者にはリベラル寄りの人が多いことと無関係ではないと思う。

 「景気が悪い…」「景気が悪い…」と言うだけで、ほとんどの人は自分から進んでお金を使おうとしないので、結局、国が代わりにお金を刷ってバラまかなければいけなくなる。
 「規制を無くせば…」「魅力的な商品が出れば…」需要は満たされるというような意見もよく聞かれるが、別にそんなことをせずとも、誰もが気前よくお金を使うようになれば、景気はすぐさま良くなる。
 しかし、そうは言っても、将来的な不安があれば、人情的にはなかなかお金は使えない。でも、お金を使わなければ景気は良くならない。

■「お金=汚いもの」という刷り込み教育の悪弊

 例えば、安倍総理が「もっとお金を使ってください」とお願いしても、ほとんどの人は言うことを聞かないだろう。「もっとお金を使ってくれなければ消費税率を上げますよ」と脅しても無駄かもしれない。
 そんなことを言えば、「安倍総理は独裁者だ!」とか、「国民のお金を奪うペテン師だ!」という人も出てくるかもしれない。
 なぜ、そのような経済音痴丸出しの人々が現れることになるのかと言えば、理由は簡単、まともなお金の教育を行ってこなかったからだろう。

 「国民の前に出現した不況という怪物を退治するためには、皆が率先してお金という武器を使わなければいけない」そのような幼稚園児にも解るような簡単な譬え話すら教えられてこなかったからだろう。不況を退治する武器は有り余るほど蓄えているにも拘わらず、それが武器になることを知らない。
 お金は捉え方によっては善にも悪にもなる代物だが、「お金=汚いもの」という一面的な刷り込み教育だけが行われてきたことにより、この不況という怪物を退治できない国になってしまった。

 現代の総理大臣が言っても耳を傾けない国民でも、昔の(人間宣言する前の)天皇陛下が「日本を救うためにお金を使ってください」と言えばどうだろう? おそらく、当時の国民なら本当にどんどんお金を使うようになり、景気は良くなるだろう。(あくまでも過去の仮定話)

 良い悪いはともかくとして、「お国のため」というマクロ的な発想(=国家観)が希薄になり、自分さえよければそれでよいとする個人主義(日本ではリベラル思想とも言う)が蔓延したことによって、人々の連帯感が薄れ、誰もが必要以上にお金を使わなくなった(=守銭奴になった)と言えば言い過ぎだろうか。

 現代では、「お金」は時に「信用」とも訳されるが、お金が動かない社会とは、信用や信頼が希薄になった社会だと言い換えることも可能かもしれない。著者の言葉を借りて言うなら、「ネガティブお金観」を持った人々があまりにも増え過ぎたことが日本人が貧乏になった本当の理由なのかもしれない。

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コメント

自由人さんも、
「なぜ自由人(FREEMAN)は、大学を出ているのに確率が全くわかってないのか?」
ってな本を書かれたらどうでしょうか。

ところで、自由人さんは、こちらの方とは分かり合えるんじゃないでしょうか。
文章も、考え方もとても似ていますよ。

よそ行きの妄想
http://chnpk.hatenablog.com/

投稿: 機器麒麟 | 2015年5月30日 (土) 11時35分

何故、今の日本人は気前良くお金を使わないのでしょうか?
お金は汚いもの、と皆が思っているからでしょうか?
その辺りの考察をお聞かせください。

投稿: | 2015年5月30日 (土) 13時14分

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