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労災認定ニュースで考える「バリウム検査」

■「年間20ミリシーベルト」という閾(しきい)値

 前回、健康診断のバリウム検査の被曝量(レントゲンとの比較)についての記事を書いてみたが、具体的な被曝量については言及しなかった。しかし、先週、ちょうど参考になるニュース(原発作業員の労災認定ニュース)が報じられたので、備忘録も兼ねて少しまとめておきたいと思う。

 まず、先週、労災認定ニュースで伝えられた福島原発作業員の被曝量だが、報道されているところによれば、年間19.8ミリシーベルトということになっている。
 現在、日本で普通の生活を行うことで受ける自然被曝量(内部被曝量+外部被曝量)は1.5〜3ミリシーベルト(日本人の平均は2ミリシーベルト程度)と言われているので、単純計算で言うと一般人の10倍程度の被曝量だったということになる。「原発作業の被曝量19.8mSv」と「自然被曝量2mSv」を足した場合でも22ミリシーベルトなので同じことが言える。

 ICRP(国際放射線防護委員会)で定められている一般人の年間被曝許容線量は1ミリシーベルトであり、原発作業員の年間被曝許容線量は20ミリシーベルト(5年間の平均が20ミリシーベルトという意味)になっている。
 自然被曝だけで2ミリシーベルトもあるのに、1ミリシーベルトが限界値に設定されているところは疑問ではあるが、一応は「年間20ミリシーベルト」が安全を保障する閾値ということなのだろう。

■「職業被曝」と「公衆被曝(自然被曝)」と「医療被曝(人工被曝)」

 上記で述べた被曝量は、原発作業員の「職業被曝量」と一般人の「自然被曝量」についての話だが、ここには医療における被曝量は入っていない。自然被曝というのは、食物や大気から受ける放射線のことであり、医療における被曝は自然被曝ではなく「人工被曝」というものになる。

 毎年、健診で受ける胸部レントゲン撮影は0.07〜0.1ミリシーベルトであるが、胃がん検診(バリウム検査)は最小で5ミリシーベルト、最大で35ミリシーベルトにもなる。検査機や検査時間によって少し変わってくるが、中間をとれば20ミリシーベルトと言ったところだろうか。

 20ミリシーベルト÷0.07ミリシーベルト=約286という計算になるので、レントゲン撮影約300枚分ということになるわけだ。

 ここで注意しなければならないのは、この数字(20mSv)は年間の数値ではなく、ごく短時間(数分間)の数値であるということである。
 原発作業員の1年間で20ミリシーベルトというのは、簡単に言えば、毎日胸部レントゲン撮影を行っている程度の被曝量である。もっと言えば、労働時間内(8時間?)にレントゲン1枚分の被曝をするということだから、瞬間的な被曝量はバリウム検査よりもかなり低い。
 医学的には長時間かけてゆっくりと受ける放射線よりも、短時間で受ける放射線の方が危険だとされているので、バリウム検査の20ミリシーベルトは、原発作業員の年間20ミリシーベルトよりもはるかに危険な値ということになる。
 それが本当に人体に悪影響を及ぼす値であるかどうかはともかくとしても、比較数値としては正しいということだけは認識しておく必要がある。バリウム検査を5年間続けて受ければ、原発作業員の5年間のリミットである100ミリシーベルトの被曝量に達するということだけは知っておく必要がある。

■恐れるべきは「放射線無知(医療無知)」

 医療の世界では、がんを治療する放射線治療(単位はグレイ)というものもあるため、年間被曝許容線量というものが曖昧になっているのか、20ミリシーベルト程度では全く騒ぎにならない。実際、「100ミリシーベルト以下なら安全」という説もある。
 しかし、もし20ミリシーベルトで発ガンする可能性が有るということであれば、毎年1000万人が受診しているバリウム検査は、労災(労働災害)ならぬ医災(医療災害)※に認定される人が出てもおかしくないということになってしまう。
 今回の労災認定は、労災基準である年間5ミリシーベルトという条件を満たしていたことで認められたケース(放射線被曝が認められたというよりも、労働における災害として認められたというもの)であるらしいので、そのような基準がない医療においては、災害として認定されることは有り得ない話だが。

 ※医災(医療災害)保障というものは有りません。(念のため)

 仮に毎年バリウム検査を受診している原発作業員がいたとすれば、その人物は年間40ミリシーベルト以上は被曝している計算になる。それで発ガンした場合、発ガン理由として真っ先に疑われるのは「原発作業」ということになってしまうのだろうけれど、可能性としては「バリウム検査」が原因だったということも考えられる。無論、どちらも因果証明は不可能であり、あくまでも可能性の話だが。

 本当に恐いのは放射線そのものではなく、放射線無知かもしれない。ほんの僅かな自然被曝にも満たない放射線量に対して闇雲に危険を煽る人々も問題だが、科学的に判明している医療の被曝数値(リスク)に無頓着で有り過ぎるのも危険だと言える。

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