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健康診断の「バリウム検査」は必要か?

■リスクのある「バリウム検査」

 日本の労働者は毎年1回(主に春や秋)健康診断を受けなければならなくなっている。これは労働者の義務と言うよりも、事業主側の義務であるらしいが、法定検査ということで以下の診断項目の受診を行うことが義務づけられている。

 01.既往歴・喫煙歴・服薬歴・業務歴の調査
 02.自覚症状および他覚症状の有無の検査
 03.身長、体重、腹囲、視力、および聴力の検査
 04.胸部X線検査、喀痰検査
 05.血圧の測定
 06.尿検査
 07.貧血検査
 08.肝機能検査
 09.血中脂質検査
 10.血糖検査
 11.心電図検査

 基本的に上記11項目の受診さえすれば義務を果たしていることになるのだが、多くの企業では上記の項目に加えて、がん検診も行われている。特に胃がん検診というものを行っているケースが多い。
 この「胃がん検診」というものは別名「バリウム検査」と呼ばれ、アンケートを実施すれば、おそらく「最も苦手な検診項目」の筆頭になること間違いなしの不人気な検査であり、実際に検査を棄権する人も多いと聞く。ちなみに私も毎度、丁重にお断りしている。

 バリウムというのは銀白色の軟金属の一種であり、エックス線を透過しないという特徴を持っている。通常はレントゲンに写らない胃腸を発泡剤で人工的に膨張させ、胃の内壁にバリウム膜を作り、エックス線に写るようにするのがバリウムの役割だ。
 バリウム検査のイメージは「飲みにくい」「変な味がする」「気分が悪くなる」というようなもので、検査が終了した後には下剤でバリウムを体外に排出しなければならない。もし下剤を飲まなければ(あるいは体外に出なければ)、腸内で固体化し、重篤な症状に見舞われる危険性を抱えた厄介な代物でもある。(実際に死亡事故も発生している)
 そして、もう1つ重要なことは、バリウム検査は「被曝する」というリスクを抱えていることである。その被曝量はレントゲン撮影の100倍から300倍もあるということはあまり知られていない。

■レントゲンを300枚撮れますか?

 もしあなたが手足を捻挫したとして、骨折しているかどうかを調べるために医者から「レントゲンを300枚撮ります」と言われた場合、どんな返答をするだろうか?

 「はい、お願いします」と即答できる人はまずいないと思う。

 国民の多くは「過剰なレントゲン撮影は危険」という認識を持っている。しかし、ことバリウム検査となると、「せいぜいレントゲン撮影に毛が生えた程度のものだろう」…と認識していればまだましな方で、多くの人は「被曝する」ということさえ意識していないのではないかと思われる。実際に私の周りでも知らない人が多い。

 医者から「バリウム検査はレントゲン300枚分程度の被曝量です」などと言われると、極度に放射線を嫌う人々なら卒倒してしまうかもしれない。普通の人であっても「ちょっと考えさせてください」「様子をみてみます」、あるいは「お断りします」と応えるのが普通だろうと思う。

 バリウム検査では初期のガンの発見は難しいらしく、見落としも多くある。バリウム検査では異常なしだったが、胃カメラで見つかったという人も多い。
 健康な人がレントゲン300枚分のリスクを背負ってバリウム検査を受診することの意味をもう少し考えた方がよいのではないかと思う。

■「バリウム検査」は「任意検査」であるべき

 世の中には「適度な放射線は人体に良い影響を及ぼす」とするホルミシス※論(仮説)というものもあるので、もしこの仮説が真実であるのならば、レントゲン撮影の被曝量はもとより、バリウム検査の被曝量も全く意識する必要のないものとなる。(細かいデータ説明は敢えて控えます)
 しかしながら、現状ではホルミシス論が正しいとする確実なエビデンスが有るとは言えないので、「バリウム検査にリスクが有る」という事実だけは動かしようがない。

 ※大量に使用すれば有害性を持つものでも、少量であれば逆に有益な作用や刺激がもたらされる現象のこと

 実際、ホルミシス論を説明することでバリウム検査を行っている良心的(?)な病院も存在するのだが、多くの病院はバリウム検査にリスクが有るということすら患者に伝えておらず、その証拠(エビデンス)として、健診者はリスクを意識せずに毎年バリウム検査をホイホイと受診しているという有り様だ。

 たとえホルミシス論が正しいと仮定したとしても、いまのところ、国は「微量な放射線でも人体に悪影響を及ぼす」とする反ホルミシスを国是としているので、病院側も被曝量を公表することには抵抗(や遠慮)があるのかもしれない。医者が「バリウム検査でがんになるリスクが有る」などと説明しても冗談にしか聞こえないかもしれないが…。

 しかし、如何なる理由があろうとも、患者の命を預かる医者がリスクの説明を行わずに人体実験の如くバリウム検査を行うのは問題だと言える。
 現在は検査でがんを見落としたことを訴える人がいるそうだが、いつまでもリスクの説明をしないままでいると、終いにはバリウム検査を行ったことを訴える人が出てくるかもしれない。何十年か後に「バリウム訴訟」というような言葉が出てこないことを願うばかりだ。
 
 「バリウム検査」は幸いにも法定受診項目ではないわけだから、健診者には受診を選択する自由と権利がある。きちんとリスクを説明した上で、どうしても受診したいという人にだけ実施すればいいのではないかと思う。基本的にリスクの有る検査は「強制」ではなく「任意」であるべきだ。

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コメント

自分はバリウム検査でジストというガンが判明したよ
胃の外側が膨らむガンで胃カメラじゃ分からんところだった
そういうガンよりバリウム検査のリスクの方が大事だと思うなら辞めれば良いんじゃね?
選ぶのは自分だな

投稿: | 2017年3月 8日 (水) 22時34分

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