BOOK『あの日』を読んで。
■事実は報道よりもシンプルだったSTAP細胞事件
先月末に急遽発売され現在ベストセラーとなっている小保方晴子氏の手記『あの日』を購入した。
発売当初からいろんな書店に足を運んでみたのだが、どこの書店でも売り切れで、アマゾンでも売り切れ状態だったので、増刷待ちの状態が続いていたが、ようやく入手(結局、アマゾンで購入)することができ、読み終えた。
長らくベールに覆い隠され見えなくなっていたSTAP細胞事件の真相(経緯と顛末)が当事者である小保方氏本人の口から語られた意義は大きい。推測や憶測だけで書かれた書物とは、その重みが全く違う。全てを失った小保方氏の魂の叫びとも呼べる手記だった。
ここでは詳細は書かないが、実際、その内容は驚くべきものであり、これまで朧げながらにしか見えなかった疑問点が氷解し、多くの謎が解明されたと言っても過言ではない。本書に実名で登場した多くの関係者から反論と呼べる反論が出ていないところを見ても、本書に書かれていることがフィクションでないことを物語っている。
先月末の時点では、小保方氏の手記が出版されるというニュース記事が報じられたが、なぜか発売後は、急に静まり返ってしまい、ほとんど報じられなくなった。
推測するに、おそらく、発売前は「どうせ言い訳がましい手記だろう」と高を括っていたマスコミ関係者が、いざ発売されて読んでみると、あまりにも理路整然と赤裸裸に書かれた痛ましい手記に唖然としてしまった格好だろうと思う。事件当時に小保方氏に対し罵詈雑言を浴びせかけていた言論人の多くも臍を噛んでいるのか、黙りを決め込んでいるかに見える。
■公然とストーカー行為を行うマスコミの罪
マスコミ報道とは裏腹に、アマゾンのレビュー欄を見ても評判は上々のようで、現在のレビュー数は500に迫る勢いだ。
中でも興味深かったのは、著名人である小谷野 敦氏がレビュー欄でお詫びを書かれていることだった。
言論の自由を履き違えた無責任な言論人は、好き勝手なことを言うだけで、他人の心に取り返しのつかないほどの傷を負わせる発言を行っても何の謝罪もないが、そんな中にあって小谷野氏のこの姿勢はご立派だと思う。
笹井氏が自殺に追い込まれた最大の理由も本書にはそれとなく書かれてあったが、STAP細胞の有無に関係なく、マスコミの人権を無視した報道姿勢は看過できるものではなく強い憤りを感じた。
本書を読むと、マスコミの(一部の)記者というのは公然とストーカー行為を行っているようなものだと思わざるを得なかった。己の思い込みから、自らを正義の仕置人と勘違いし、間違った正義の名の下に人権を踏みにじる行為を平然と行っているわけだから、その悪鬼の如き所業は罪深いと言わざるを得ない。本書を読まれた多くの人がそう感じたことだろう。
■笹井氏が述べた科学者の本分
本書を読んで、小保方氏が優秀な科学者であり、努力型の天才肌の人物ということがイメージできた。同様に笹井氏も科学者として純粋で非常に有能な人物だったことが窺え、死を選ばなければならないほどに追いつめられたことが残念に思えた。
本書の中に書かれていた笹井氏の次の言葉が印象的だった。
「僕はね、科学者は神の使徒だと思ってるんだ。科学の神様はね、時々しか見せてくれないんだけど、チラッと扉の向こうを見せてくれる瞬間があってね、そこを捉えられる人間は神様に選ばれているんだよ。だから真の科学者は神の使徒なんだ。その美しい神の世界を人間にわかる言葉に翻訳するのが科学者の仕事なんだよ…(以下省略)」
まさに真の科学者でしか到達しえない境地であり、素晴らしい至言だと思う。同じく本書の中にあったが、「こんなどろどろした業界なかなかないぞ」という言葉のような世界にあって、これだけの認識力を持った有能な科学者を失った日本の科学界の損失は大きいと言わざるを得ない。
小保方氏が当ブログを読まれることは多分ないだろうけれど、最後に、私なりのアドバイスを書きとめておきたいと思う。
「多くの心ない人々があなたを批判し非難したことで、あなたの心は大きく傷付き、名状し難い悲しみと絶望感に襲われたことと思いますが、そんな腐ったかに見える社会でも、素直な目であなたを正しく見ている人間も大勢いることを忘れないでください。本書を発刊されたことが契機となり、更に多くの人が幻想から目を覚ますことでしょう。きっといつかまた、ピペットマンを持ち、科学者として認められる日が来ることを信じて頑張ってください。」(自由人)
【お詫びと訂正】
文中の「科学者は神の使途」は「科学者は神の使徒」の間違いでした。訂正してお詫びします。今朝、会社で気が付いていたのですが、知らせていただいた2人方(マルドメ、コスモス様、多次貞二様)有り難うございました。
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コメント
書いてある内容を100パーセント信じられる純真さに感動しました。
投稿: そうですか | 2016年2月14日 (日) 15時27分
強大な組織や社会の力がいとも簡単に1人の人間を奈落の底に追いやる危険な現実を理解したい。成功は共有するが期待を裏切れば完膚無きまで打ちのめす。この恐るべき仕打ち。本来、事業戦略の目玉企画としてSTAP研究を採用推進した理研が全ての責任をとるべきことだし、追及されるべきは理研の体質だろう。まんまと失態の全責任を採用したての未熟な研究者におっ被せた卑劣さ。成果を貪ろうとした共著者や上司の逃げっぷりも怖い現実である。重要な論文が投稿前に共著者や理研組織で何故徹底的に吟味できていなかったのか。「あの日」の著者の嘆きの対極に日本社会の嫌な性格を見た。
投稿: gggg | 2016年2月15日 (月) 02時06分
論文不正を理由に捏造騒ぎになったSTAP事件。その主人公は小保方氏。そこまでは誰もが認識することだと思う。しかし不思議なのは論文不正に至る過程が全く理解不能だ。大学では恐らく高額な学費を払って教授達の指導を経て博士論文を書き、取得したはずの博士号。金払って未熟者が教育指導を受け審査をしてもらって取得したはずのものだ。それを今更論文不正などと博士号剥奪とは、早稲田大学は詐欺じゃないの。
何も指導せず金だけ取ったのか。そして理研も重要プロジェクトのチェック機能がなぜ機能しなかったのか。理研の著名な笹井氏や若山氏そして共著者が指導したり議論すべき論文チェック機能の責任はどこに行ってしまったのか。この事件の結末に納得できないのは小保方氏のみでなく我々国民である。
投稿: gggg | 2016年2月15日 (月) 03時02分
”使と”の”と”のじが違うんじゃないかなあ。せっかく情溢れる文章なのにーー教養がポロリみえちゃいますよ。多分、聖書、キリスト教。宗教に関係した文章をよまれないかたなおのしょうか?出過ぎた事をーー、申し訳ない。気になってしまった物でーー。
投稿: マルドメ、コスモス | 2016年2月15日 (月) 10時59分
笹井氏の言葉のなかの「使途」は「使徒」が正しいのではありませんか?すみません、些細なことで・・・・
投稿: 多次貞二 | 2016年2月15日 (月) 12時29分
もう少し、ロジカルに読んだ方が良いのでは
投稿: そうね | 2016年2月16日 (火) 22時15分
私が読んだ印象は、やはり「小保方さんは思い込みの激しい子」と感じました。Doctor論文でなくても卒論や修論をまじめに書いた人なら、小保方さんの「未熟」とか「作法を知らなかった」という言い訳をまた聞かされたという本でした。
投稿: なるほど… | 2016年2月26日 (金) 11時01分
私が読んだ印象は、やはり「小保方さんは思い込みの激しい子」と感じました。Doctor論文でなくても卒論や修論をまじめに書いた人なら、小保方さんの「未熟」とか「作法を知らなかった」という言い訳をまた聞かされたという本でした。
投稿: なるほど… | 2016年2月26日 (金) 11時02分
> 本書に実名で登場した多くの関係者から反論と呼べる反論が出ていないところを見ても、本書に書かれていることがフィクションでないことを物語っている。
> 事件当時に小保方氏に対し罵詈雑言を浴びせかけていた言論人の多くも臍を噛んでいるのか、黙りを決め込んでいるかに見える。
オウム真理教が「政府から攻撃を受けてる」って言ってた時、
政府関係者や言論人がわざわざ反論しましたかね?
あきれて相手にしてないのが分からない?
> 著名人である小谷野 敦氏が
文系じゃん
>「多くの心ない人々があなたを批判し非難したことで、あなたの心は大きく傷付き、名状し難い悲しみと絶望感に襲われたことと思いますが、そんな腐ったかに見える社会でも、素直な目であなたを正しく見ている人間も大勢いることを忘れないでください。本書を発刊されたことが契機となり、更に多くの人が幻想から目を覚ますことでしょう。きっといつかまた、ピペットマンを持ち、科学者として認められる日が来ることを信じて頑張ってください。」(自由人)
だったら、その「大勢」で金を出し合って、小保っちにSTAP細胞を実現させる基金にすればいいじゃん。
もし実現したら、すげー儲かるし、なによりすげー社会貢献になるじゃん。
「腐ったかに見える社会」には貢献したくない? あ、そ
でさ、自由人さ、その機会が充分に与えられたにもかかわらず、「コツ」がどうのって言ってた小保っち本人が、STAP細胞を作れないってこと、いったいどう考えてるの?
> 更に多くの人が幻想から目を覚ますことでしょう
お前がさませよ
投稿: 麒麟 | 2016年3月19日 (土) 12時10分
香菜子と言います。わたしもはじめは小保方さんは頑固て思い込みが激しく、誇大妄想や被害妄想が強い性格で、もしかしたら一種の人格障害や精神疾患に近いのかしらと感じていました。でも、研究者・研究職として成功するには、傲慢高飛車で頑固な思い込みや誇大妄想、多少の自信過剰・自意識過剰な部分は必要だし、小保方さん一人でいろいろな捏造は出来ないように思いました。周りの人がすべての責任を小保方さんに押し付けているようにも感じられました。都合の良いときだけ小保方さんを祭り上げて、都合が悪くなったら切り捨てるようなかことをした理研関係者や早稲田大学関係者は卑怯で人間失格、人間として最低最悪香菜子
投稿: 香菜子 | 2016年8月15日 (月) 06時17分